共同プロジェクト始動!老舗製造業「中岡プレス」と一次産業PR「NIPPON TABERU TIMES」が挑む「口臭が残らないにんにく」と「新しい農業経営」

新しい「農業経営」のあり方を見つけたい。
ーーそんな共通の思いから、新たなチャレンジがはじまります。
若者が届ける一次産業情報サイトNIPPONTABERU TIMES(以下、TABETAI)は、2025年3月より、プレス加工・溶接組立の専門メーカー・中岡プレス工業(以下、中岡プレス)と企業連携し、スプラウトにんにくの生産事業を進めることとなりました。現在は、2025年12月本格稼働を目標に、スプラウトにんにくの生産工場の設立を進めています。
今回は、道村彩夏氏(中岡プレスCMO)と、田丸さくら(NIPPON TABERU TIMES代表/中岡プレス執行役員)の対談インタビュー形式で、異色のコラボレーションの背景を紐解きます。
創業100年を超える製造業の中岡プレスがなぜ一次産業に参入するのか。そして、一次産業のPRを専門とするTABETAIが、なぜ「生産」という新たな領域に踏み込んだのか。スプラウトにんにくの生産・販売を通して両社が目指す「農業経営」のあり方に迫ります。

目次
金属加工業と植物工場の共通点する「安定稼働・品質保証」
ーーまず、中岡プレスとTABETAIがスプラウトにんにく事業を開始した理由を教えてください。
中岡プレス・道村氏(以下、道村):
当社は100年以上、中厚板プレス加工品を中心に、機械加工や塗装、溶接した製品を作っています。「単に設備を作って終わり」ではありません。「品質を保証し、工場を定常稼働させる」ことのプロだと自負しています。
会社として次のステップを模索していた際に、一次産業への参入を検討しました。なかでも、「植物工場」と呼ばれる生産方法は、金属加工と共通する点があったんです。設備を作り、生産体制を確立して品質保証をするーー当社の技術がそのまま活かせると感じました。
一次産業の参入を検討していたとき、たまたま、当社の社長が田丸さんから、スプラウトにんにく栽培について話を聞く機会がありました。スプラウトにんにくには「口臭が残らない」という強みがあること、生育期間のコントロールによって臭いの強度を変えられることなどを知り、「当社の技術を駆使してチャレンジしたらおもしろいかもしれない」と考えました。
TABETAI・田丸(以下、田丸):
私も、いずれは自身が生産者になりたいという思いがありました。
代表を務めるTABETAIは、一次産業のPR会社として、これまで多くの生産者さんのPRや販売促進をサポートしてきました。なかには、TABETAIを通して地域や生産者さんの魅力に触れ、実際に移住をして新規就農したスタッフもいます。
これまではPRの側面からお手伝いしてきましたが、より深く一次産業界の力になるためには、TABETAI自身が「農業経営」を実践し、農業を持続させる必要があると考えるようになりました。それが、スプラウトにんにく事業に挑戦する大きな理由です。
そして、中岡プレスさんにスプラウトにんにくの栽培を相談した際、製造業ならではの視点は、自分にはない発想だと思い、連携に至りました。
道村:
農業は薄利多売といわれますが、金属加工業もまた「よい製品をより安く」が常に求められる世界です。
スプラウトにんにくの栽培を検討することに加えて、当社では「生産機能だけではなく、販路確保まで一貫して行う商社機能を確立したい」という新たな目標が生まれました。
そこで、新サービスとして国産食材販売専門店「ほしぐるめ」の構想をスタートさせました。具体的には、生産者さんがこだわりを持って作った食材を適正価格で仕入れ、飲食店や個人のお客様へ食材の魅力をていねいに説明し、妥当な価格でご購入いただくというものです。国産の食材に特化したのは、日本国内の国産農水畜産物のエンゲル係数(家計の総支出のうち、食物のための支出が占める割合)を上げたいという思いがあるからです。

農業経営が持つ多様な「グラデーション」を理解し、「稼ぐ農業」を実践
ーーこれまで作物の生産・販売をしていなかった2社が、農業経営に取り組み、持続させることが大切なのですね。
道村:
農業経営には、単に収益を上げる「稼ぎ」の側面だけでなく、日々の暮らしを支える「生計維持」、自然を感じる「土との触れ合い」といった、農業との関わり方のグラデーションがありますよね。
田丸:
もちろん、農業には土に触れる豊かさや、自然と触れ合う喜びを求める側面はあります。一方で、営業部門や生産部門など、適切な人員配置を行い、事業として「稼ぐ農業経営」を実践できているケースは、まだ多くはないと感じます。しかし、これからの農業が続いていくためには、「稼ぐ農業経営」のあり方も考えるべきだと思います。
これまで、多くの生産者さんからご相談を受ける中で、「農泊をやってみたいんだけど、どうしたらいい?」といった相談の最終的な壁は、「投資できる資金の有無」でした。だからこそ、生産現場の第一線に立つ会社として、今の、そしてこれからの時代に合う新しい農業経営のモデルを実践し、その姿を発信していきたいんです。
道村:
新しい農業経営モデルの模索こそ、若手が一次産業へ挑戦する理由だと思います。また、農業の大きな課題の一つは、「販路拡大」だと感じています。だからこそ、私たちの手で農作物を栽培し、お客様へお届けするまでの一連の流れを実践することが、国産食材専門販売店の一歩目だと捉えています。
田丸:
中岡プレスとTABETAIが企業連携する最大の強みは、「実践しながら発信できること」です。中岡プレスが持つ「生産を安定稼働させ、品質を保証する専門性」とTABETAIが培ってきた「一次産業のPR体制」。それぞれの専門性を活かすことで、新たな農業経営のあり方を模索し、社会に発信できると考えています。
道村:
現状として、スプラウトにんにくを栽培する工場はまだ整っていない状態です。しかし、金属加工業の専門メーカーだからこそ、初期投資を決める前に何を効果検証すべきか、初期投資のシミュレーションなど、進むべき道筋は見えています。
稼働前の効果検証を徹底することで、初期投資を適切な金額に抑えることができると考えています。
田丸:
今は、何事も「ストーリー」が大きな意味を持つ時代です。スプラウトにんにく栽培がまだ道半ばであっても、「2社が連携して農業を始めます」とリリースして、取り組みを発信することが必要だと思っています。
道村:
スプラウトにんにくは、新サービス「ほしぐるめ」の先駆けと捉えています。TABETAIさんには、商品の魅力を知ってもらうために必要なストーリーづくりや発信を、ぜひ担ってもらいたいです。
田丸:
これまでTABETAIは、一次産業に興味を持つ若者へストーリーを届けてきました。次のステップとして、今度はスプラウトにんにくを手に取る飲食店の方々や個人のお客様など、エンドユーザーへの発信を強化していきたいと考えています。
さらに今後、「ほしぐるめ」の稼働が本格化すれば、TABETAIが生産者さんのこだわりを取材して、飲食店や個人のお客様に伝えること、そしてエンドユーザーの要望を生産者さんへ届けることにも力を入れていきたいです。

「スプラウトにんにく」が持つ意外性、健康志向、そして安定供給の強み
ーー植物工場では、多くの野菜を栽培することができますが、なかでもスプラウトにんにくを選んだ理由は何だったのでしょうか。
道村:
「にんにくなのに、口臭が残らない」。既存のにんにくのイメージを覆すスプラウトにんにくであれば、にんにく市場で戦えると考えたからです。
田丸:
加えて、スプラウトにんにくは、健康食品市場での伸びしろも大きいと見ています。通常のにんにくも栄養価が高いですが、スプラウトにんにくは、カルシウムは通常のにんにくの約8倍、鉄分は約9倍あるといわれており(※)、さらに高い栄養価を誇ります。健康志向や料理好きの方はきっと興味を持っていただけるはずです。
また、現代人は食事の時間すら惜しいほど、忙しいですよね。簡単に栄養素が摂れる食材が、現代に必要だと思います。
※参考:「YOKARE健康なライフスタイルを目指す」https://yokare.net/eat/201907173/

道村:
栽培の観点からも、スプラウトにんにくには多くのメリットがあります。栽培から約1〜2週間で収穫でき、こまめに栽培サイクルを回せること。さらに、屋内での水耕栽培で育てるため、環境変化の影響を受けにくいことも大きな利点だと感じています。
「意外性を持った強み」「健康志向のニーズに叶う」「環境変化に左右されない安定供給」の3点から、スプラウトにんにくを生産・販売することを決めました。
新しい「農業経営」を模索するための挑戦
ーー今後の目標を教えてください。
道村:
まずは、今年中にスプラウトにんにくの出荷体制を整えます。「ほしぐるめ」の先駆けとしてスプラウトにんにくを流通させ、新たな需要を創出していきたいです。最終的には、スプラウトにんにくをはじめとした、国産食材を通して農業の価値を上げ、日本国内の国産農水畜産物におけるエンゲル係数を上げていくことが目標です。
また、個人的には、スプラウトにんにく栽培が雇用を増やす場になればと願っています。あるにんにく農家さんを訪問したときに「むかしは、農家が多く、障害を持つ方が自然になじみながら仕事ができていたが、農家の減少により受け皿が減ったことで、障害を持つ方がより浮彫になっている」という話を聞いたことがありました。
もし当社の工場が安定稼働できれば、就労支援に通う方々など、求職者の雇用も新たな展開を考えていきたいです。スプラウトにんにくの生産現場は、にんにく特有の臭いが少なく、水耕栽培で汚れることが少ないので、労働環境としても非常に良いと思います。
田丸:
私にとってスプラウトにんにくの生産・販売は、農業経営にチャレンジする場です。一次産業は、食料自給率の向上や生産者の所得向上、生産者の高齢化など、課題は山積しています。さらに、気候変動や物価の高騰、物流問題など、これまで続けてきたやり方では、農業を続けることが難しい状況だと思います。
だからこそ、スプラウトにんにくの生産・販売を通して、今の時代にあった農業経営のモデルを見つけるために、挑戦し続け、そのプロセスを発信することが重要だと考えています。現時点では、農家さんから種となるにんにくを購入して、スプラウトにんにくを作っています。しかし、食料自給率を上げるためには、新たな需要を作り、ゆくゆくは自社で種にんにくを作ることも考えています。作物の販路を広げ、もっと農業事業に参入していけるような土台を作っていきたいです。
私たちのチャレンジを見て、「こんなに楽しそうで、ちゃんと稼げるなら、農業をやってみたい!」と思ってくれる人が増えたらいいですね。
道村:
品質保証・新規開拓は中岡プレス、取材・発信はTABETAIで、お互いの専門性を活かして、農業経営を進めていきましょう。スプラウトにんにくの販売や国産食材専門販売店「ほしぐるめ」に興味がある方は、ぜひ一度お話できれば幸いです。

【本件のお問い合わせ】
問い合わせ先:contact@taberutimes.net
(担当:田丸さくら)