平良木亨さん(秋田県横手市)に聞く①:秋田からクッキングアップル??

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11800756_852890028125369_32768720_o話=平良木 亨さん(秋田県横手市)

 

クッキングアップルは
“探している人”がいるりんごだった

りんごは、やっぱり青森が圧倒的に強いです。同じ東北でも、例えば岩手だったら「江刺りんご」と名前をつけて打ち出したりしてがんばっていますけれど、秋田はどうも……商売下手なのかなあ。俺も、新しい方とお付き合いさせていただく機会がある都度、

「秋田ってりんごつくっているんですね〜」

っていわれるのが結構ショックで(笑)。ずっとやってきた「ふじ」だけではないものに挑戦したいという思いがちらちら湧くようになりました。

 

12年前、うちで「紅の夢(くれないのゆめ)」というクッキングアップル(弘前大学で誕生した調理向きのりんご。果肉が赤く、しっかりした酸味を持つ)をつくり始めたんですが、うちのりんごを販売してくれている「デリカテッセン紅玉」の高橋基さん()との間で、これはおもしろいりんごだよねえという話になって。通販を始めてみたら、すごい反響があった。

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(写真提供:デリカテッセン紅玉)

 

特に注目しているお客さんは料理教室を開いている方で、教室で実際に調理したり、生徒さんにお裾分けしたりして使ってくださっていました。クッキングアップルは、探している人、必要としている人がいるりんごなんですよね。

 

そんなこともあって、この先10年20年を考えたとき、一般の人に向けた生食用のりんごだけではなく、「それを求めている人、使いたい人」のために質のいいクッキングアップルをつくって、知ってもらって、広げていく方へシフトしていくことに可能性を感じるようになりました。「ふじ」だけつくってやきもきしているくらいなら、思考を変えてみてもいいんじゃないか、と。

 

つくってみたいクッキングアップルは
まだまだたくさんある

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「紅の夢」はこの木です。これは10月下旬の収穫なので、まだ、うっすら色がのっているくらいの感じ。

 

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隣りが「紅玉」です。クッキングアップルといったら今までは紅玉でした。紅玉って、割と小玉が多いんです。大きくつくれなくもないけれど、果肉の締まりが悪くなってモサモサ感が出るし、日持ちもよくない。それに比べて「紅の夢」は、しっかり大きく実をつくれる品種です。

 

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この葉っぱに赤味のある木は「ジェネバ」といって、これも果肉の赤いクッキングアップルです。今年はもう全部採り終えてしまったんですけれどね。去年初めて実がなって、収穫期を慎重に見極めているうちに、はっ、と気づいたらパタパタっと実が落ちてしまった。だから今年は早め早めに進めたんですが、それでも、干ばつのせいで思ったより早かったですねえ。

あっ!ジェネバ1個残ってる(笑)。
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こんな風に、皮の色が結構濃いりんごです。初めてつくっているので、大きさはまだバラつきがあります。これは小さめ。

 

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(ジェネバの切り口。生食すると強烈に感じられる酸味が火を入れると和らぎ、深い甘みに)

 

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これが「ブラムリー」(イギリスで1808年に生まれて愛されてきた、果皮の青いクッキングアップル)の樹です。今年始めたばかりで、まだ実はなっていません。3年後ですね。去年の秋に苗木を買って、それを今年の春に植えたんですが、その苗木の上の方を切って、別の木を台木にして接ぐ作業をしました。そうやって、1本の苗木から2本育てていくことができる。ちょっと時間のかかるやり方なんですけれどね。限られた投資の中で、うちはこうやって増やしていこうと。

 

ブラムリーには長野の小布施町が力を入れていて、これから波が来るんじゃないかと思っている。だからうちは二番煎じかもしれない。でも遅くない、悪くない二番煎じだと思うんですよ。そして、横手で波を起こすのに一役買えるとしたら、紅の夢じゃないかと思っている。それに続いてブラムリーも育てて。

 

他にも「グラニースミス」とか、やってみたいりんごはまだたくさんあるんです。おもしろいですよ、個性がまったく違いますから。クッキングアップル全般として酸味が強いという共通点はあるんですが、香りがまず全然違うし、火を入れたときの質感も違う。ブラムリーであればトロッと煮溶けるし、紅の夢なら煮溶けずに形が残りやすい。それぞれに性質が違うし、風味が違う。

 

クッキングアップル自体が、まだ認知されていない、本当に狭い世界なんだけれど、好みでチョイスしてもらえるような状況にしていけたらおもしろいなあと。

(10月1日公開②「あの雪害があって、今がある」https://taberutimes.com/posts/4129
に続きます!)

聞き手=保田さえ子(NIPPON TABERU TIMES副編集長)

 

編集部注:
高橋基さんが営む「デリカテッセン紅玉」は、秋田県横手市にある惣菜店。地元の多くの農家とパートナーのような関係をつくり、その方々の生産物を惣菜に活かしたり、販売したりしている。「平良木くんは、『紅の夢』が生まれた青森でもまだほとんど生産されていなかったころから、コツコツつくり、仲間を増やしてきた人。最初にうちにサンプルを持ってきてくれたとき、果肉の美しさや、『紅玉』よりもっと鮮烈な酸味にすっかり惚れ込みました。今、彼といっしょに取り組んでいるクッキングアップルの普及は、生で食べるだけだったりんごを、暮らしを豊かにする“食材”に変えるという、いわば新たな価値を生み出す活動です。全国を見てもそこに特化した人はまだ少なく、仲間たちと先頭を走って新しい景色を眺めるおもしろさを感じています」(高橋さん)。


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農家 秋田県横手市