【デントウヤサイ大学 4限目】生産から広報まで江戸東京野菜のなんでも屋の熱い気持ち

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デントウヤサイ大学では今まで、江戸東京野菜に関わる飲食店や農家さんの方に取材してきました。4限目では、江戸東京野菜を育て、広めるために、広告代理店と農業の仕事どちらもこなしている福島秀史(ふくしま・ひでふみ)さんにお話をうかがいます 。

写真提供:福島さん 直売所

【講義内容】

デントウ野菜大学で最初に取り上げる伝統野菜は、江戸東京野菜。

江戸東京野菜とは、種苗の大半が自家採取または種苗商によって確保されていた江戸時代から、昭和40年代までの野菜のこと。

参勤交代の際江戸に伝わった野菜や、現代まで住宅地で人知れずひっそりと種をつないでいた野菜など、一つ一つの野菜の背景に物語があるのが魅力的だ。

まずは江戸東京野菜学の門をたたいてみよう!!

【時間割】
1限目:江戸東京野菜を育てる農家さんの気持ち 
2限目:江戸東京野菜を使う魅力
3限目:江戸東京野菜を食育で伝える喜び
4限目:生産から広報まで、江戸東京野菜のなんでも屋の熱い気持ち

【4限目で学ぶのはこれ!】

①    伝統野菜の魅力:種をつなげ、ともに生きる魅力。自然栽培×江戸東京野菜

②    伝統野菜の現状:育てる人が少ない

③    伝統野菜を未来につなげていくには:作る人、つなげる人、伝える人の重要性


①伝統野菜の魅力:

種をつなげ、ともに生きる魅力。自然栽培×江戸東京野菜

写真提供:福島さん 直売所

福島さんの営むオギプロファーム直売所は、畑の中にあることが魅力。お客様が注文した野菜を畑で収穫し、その場で、渡すこともあるそうだ。育つ様子を伝えながら、食材を届けたい、福島さんの想いは野菜を育てる上でのこだわりに反映されていた。

「農業をする中で私が大切にしているのは、育てているという意識ではなく、自分もこの作物とともに生きているという意識ですね。育て始めるときに必ず、『初めまして。福島と申します。君は○○という作物だね。ひとつよろしく』と挨拶をします。また、ともに生きる相手は作物のみではなく、土壌の微生物、雑草も同じだと思っていて。

その意味でも私は、自然栽培にこだわりを持っています。自然栽培は農地に『なにも持ち込まない、何も持ち出さない』という考えのもとの農法で、化学肥料・動物肥料を使わない、雑草を敵にしない。作物のみの成長を考えると非効率に思える部分が多いけれど、案外美味しく野菜が育つんですよ。土の中にいる微生物の働きを肥料や農薬で阻害しない分、そのままの土地のエネルギーを吸収していているからかなって。他の育て方でも美味しいけれど自然農法の良さもあると思っていて。」

「また作物にも、種を次につなげたいという強い意志が作物にはあると思うんですね。例えば人参も、根っこを収穫するでしょ、だけど収穫せずにそのまま育て続けると人参の花が1メートルくらいの高さで咲く。種をつなげるサポートをしてともに生きていくことが、私の農業のあり方。種には先祖代々の土壌や気候を記憶する機能があって、故郷を覚えているんです。この土地に合う野菜という意味で、固定種、とくに伝統野菜を育て、種をつなぐことは意義深いです」

人参収穫後の人参の花 種を残そうと高く伸びる花が印象的

50種類ある江戸東京野菜のうち、20種類以上育てている福島さん。江戸東京野菜を育てている農家さんは1種類から2種類がほとんど。たった一人の農家さんが育てている江戸東京野菜なども珍しいことではない。福島さんはある江戸東京野菜との運命的な出会いを語ってくれた。


②伝統野菜の状況:

育てる人が少ない

写真提供:福島さん 高倉ダイコン
写真提供:福島さん たくあん

「私が育てている江戸東京野菜のひとつに*高倉ダイコン(たかくらだいこん)という作物があります。立川さんという高倉ダイコンを唯一育てている農家さんがいると聞いて、会いに行ったことがあって。そうしたら驚くことに、その高倉ダイコンを育てている農家は私の妻の祖母の実家だったんです。そういえば結婚したときに御祝で妻の親戚から美味しいたくわんをもらったことを思い出して。それもどうやら高倉ダイコンだったようで。それで縁を感じて育てることにしたな。育ててみたら驚くことに、自分の持っている土地が高倉ダイコンの生育で必要となる力を充分持っていた。だから巡り合うべくして出会えた種なのかなって感じますね。今、高倉ダイコンを育てる農家は私と立川さんの二人だけですが、生きている間は高倉ダイコンを一人でも多くの人に届けたいと思いますね」

 福島さんが高倉ダイコンの講演を行った際、それを見ていた方から、初めて高倉ダイコンを育てた原善助(はら・ぜんすけ)さんのお孫さんを紹介され、善助さんが高倉ダイコンを栽培する写真を戴いたそうだ。歴史ある江戸東京野菜には、その分の人の想いが詰まっているからこそ、福島さんと高倉ダイコンのような運命を感じる出会いもあるのかもしれない。
*高倉ダイコン:「みの早生」と考えられる大根を、「練馬尻白細」の一作置きに耕作することで自然交配した大根の後代の選抜品種。


③伝統野菜を未来につなげていくには


作る人、つなげる人、伝える人の重要性

元々広告代理店に勤めていた福島さん。農家さんの広告を担当することも多かったそうだ。

広告代理店の仕事のみでは当事者意識を持ったPRができないと考えた福島さんは、広告代理店を辞め、起業して農業も広告業も行うことに。起業した会社名は小城プロデュース。小さいお城、利益は少なくていいから農業を未来につなげる仕事がしたい。そんな思いが込められている。

江戸東京野菜のポスター

「江戸東京野菜に関する、伝統や文化、種の資料はあってもそれを伝える人が必要だなと感じていて。生産することと、PRし伝えることはどちらも欠かせないことだから、元々のキャリアも生かして頑張ろうと考えました。

江戸東京野菜の写真が載ったポスターを作ったのも江戸東京野菜の絵ではなく、きちんとした写真の図版が伝える上で必要だと考えたから。江戸東京野菜の農家さんを一軒ずつ回って集めたから、完成まで4年かかったけどね。育てにくい野菜だから、図版に載せられない、今年は失敗しちゃったってことも多くて。江戸東京野菜の、写真とともに正しい情報を伝えることができるポスターは本当に作ってよかったし、今では江戸東京野菜を扱う食品店にはこのポスターが貼ってあるので、うれしい限りですね」

写真提供:福島さん 八王子ショウガシロップ

他にも、江戸東京野菜の八王子ショウガジェラート、内藤かぼちゃジェラートなど、6次産業化も行っている。旬の時期にしか楽しめない江戸東京野菜を一年中楽しめ、魅力を知ってもらえるように、取り組んでいるそうだ。そのほか、小学校から大学まで講義も行い、週に一回新規就農支援に茨城や群馬にも行くなど大忙しな福島さん。作る人、伝える人を分断しない、このこだわりが江戸東京野菜を未来につなげる取り組みにつながっていたのだ。

公式HP ⇒ 小城プロデュース/広告代理店/東京都八王子


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