【デントウヤサイ大学 3限目】東京の伝統野菜・江戸東京野菜を食育で伝える喜び

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伝統野菜の魅力・現状・展望を探る特集、デントウヤサイ大学。一限目・二限目では生産者さんや飲食店の方からお話をうかがいましたが、三限目は江戸東京野菜コンシェルジュという江戸東京野菜を広める資格を持つ松嶋あおいさんにお話をうかがっていきます。

3限目:江戸東京野菜を食育で伝える喜び

写真提供:松嶋さん 川口エンドウ女子隊のお手伝いの際の写真

【講義内容】

デントウ野菜大学で最初に取り上げる伝統野菜は、江戸東京野菜。

江戸東京野菜とは、種苗の大半が自家採取または種苗商によって確保されていた江戸時代から、昭和40年代までの野菜のこと。

参勤交代の際江戸に伝わった野菜や、現代まで住宅地で人知れずひっそりと種をつないでいた野菜など、一つ一つの野菜の背景に物語があるのが魅力的だ。

まずは江戸東京野菜学の門をたたいてみよう!!   書き手:河村青依(食べタイ編集部/早稲田大学)

【時間割】
1限目:江戸東京野菜を育てる農家さんの気持ち 
2限目:江戸東京野菜を使う魅力
3限目:江戸東京野菜を食育で伝える喜び

三限目で学ぶのはこれ!

①伝統野菜の魅力:

ひとつひとつに物語があるロマン

②伝統野菜の現状:

正しい江戸東京野菜の認知が足りない

③伝統野菜を未来につなげるためには:

江戸東京野菜であることが、野菜を買う理由の一つになるための食育

①伝統野菜の魅力:

早稲田ミョウガや練馬ダイコン、野菜一つ一つに物語があるロマン

写真提供:松嶋さん


元々、料理好きだった松嶋さん。伝統野菜に興味を持つようになったのは成り行きだったという。というのも、小金井市の食育に関わっていたことで、たまたま江戸東京野菜を知る機会が増えて、いつしかその魅力にどっぷりはまっていったそうだ。

「江戸東京野菜って形がそろっていなかったり、育てづらかったり、くせものではあるんですけど。でもこうして江戸時代から現代にいたるまで、命をつないできてくれたっていう“いじらしさ”があるんです。江戸東京野菜は一つ一つに物語があって、それがすごく面白い。長い年月の人の営みが関わっていて、文化がある、ロマンある野菜だなって常々感じます」

そう語る松嶋さんの眼は輝いていて、江戸東京野菜の話となると止まる気配がなく、たくさんの種類の物語を教えてくれた。

ここで、松嶋さんが語ってくださった野菜の物語を一部紹介!

◎早稲田ミョウガ

写真提供:松嶋さん 早稲田ミョウガ

耕作地の減少により、東西線の早稲田駅近くの穴八幡宮に「早稲田冥加(わせだみょうが)」の石碑があるだけで、野菜自体はないと考えられていた早稲田ミョウガ。ところが早稲田の学生とコンシェルジュ協会会長の大竹道茂(おおたけ・みちしげ)さんが早稲田ミョウガ探索隊をつくり捜索を始めたところ、早稲田のとある住宅からひっそりと育っている早稲田みょうがを発見したそう。以後栽培を始め、いまでは9月ごろに手に入れることのできる江戸東京野菜の一つとなった。

◎練馬ダイコン

写真提供:松嶋さん 練馬ダイコン

江戸時代、「白首大根(しろくびだいこん)」は粋だと特に好まれた。徳川綱吉が脚気にかかり、占い師に見てもらったところ、『北西の馬の付く地名で、養生するように』と言われた。その通りに、馬の付く地名である下練馬に養生した綱吉。しかし、下練馬の百姓の生活があまりに苦しそうなのを見て、尾張の大根の種を仕入れ、作らせたところ地大根と交配して大きな大根が取れた。それが練馬大根として有名になったという物語がある。

江戸東京野菜の物語には歴史上の偉人が関わるものもあれば、現代まで存在が不明瞭だった野菜を探すロマンもある。そこが面白いポイントなのだ。

②    伝統野菜の現状

正しく江戸東京野菜を伝える努力が必要

写真提供:松嶋さん 川口エンドウ女子隊のお手伝いの際の写真

江戸東京野菜コンシェルジュの資格を活かし、日々江戸東京野菜の普及に努めている松嶋さん。しかし、正しく江戸東京野菜という表記を使っていない店もあったそうだ。

「江戸東京野菜使用とメニューに記載があっても、仕入れが難しいからと、まれに使わず、関係のない野菜を使っているお店や、江戸東京野菜のイベントなのに全く関係のない野菜を使う売店があって。見つけたら私は、『これ違いますよね?』って言ってしまうことも・・・(笑)。江戸東京野菜の価値を知っている者にとっては見過ごせないことだから。難しいことかもしれないけれど、買う側も正しい知識で江戸東京野菜の価値を知ることで、正しく江戸東京野菜の魅力に触れることができますよね」

江戸東京野菜への関心を高める。そのために、小学校で、江戸東京野菜の講義をしている。松嶋さんは講義をすることで子供が野菜に興味を持ち、親に話したりして、将来の食を選ぶ力、食生活に少しでもいい影響を与えられたら嬉しいと語っていた。

③    伝統野菜を未来につなげていくには

江戸東京野菜であることが野菜を買う時の理由の一つになる

写真提供:松嶋さん 学校で江戸東京野菜に関する講義をする様子

松嶋さんは江戸東京野菜について食育活動を展開している。これらの活動のきっかけは息子さんとの思い出にあった。

「息子がまだ小学生の頃、通学路の途中の畑に小さな野菜スタンドがあって。そこには、農家のおばあさんがその日に採れた新鮮な野菜を売っていて。そのスタンドの前が息子と私の待ち合わせ場所で、いつもおばあさんと野菜の話をしていたの。ある日オクラを買ってみたら、そのオクラが今まで食べたことないってくらいパリッとしていてすごく美味しくて。息子も『畑のおばちゃんの野菜美味しいね』って言っていたな。

その経験から、子供が自然と野菜の向こう側の生産者さんを感じられる環境ってすごくいいなってずっと思っていて。子育てがひと段落したあたりで、ちょうど小金井で野菜直売所が並ぶ道を「小金井江戸の農家みち」と名付けて周知活動しようという話が持ち上がり、この思いを実現するチャンスだと思ったの。それで、友人と一緒に農家みちの会を作ったんです」

また、松嶋さんは江戸東京野菜コンシェルジュとして、度々小学生の子供たちの前で教壇に立つ。

「息子のように、『○○さんの野菜は美味しいね』というところまでいかなくても、地場野菜一つ一つの向こう側には生産者さんがいて、そして、江戸東京野菜には素敵な物語がある。それをより多くの子供たちに知ってもらいたいです。江戸東京野菜は、他の伝統野菜、例えば京野菜のような認知度はないけれど、魅力とともに発信していきたいな。この少しずつの努力によって、“江戸東京野菜であること”が野菜を選ぶときの一つの理由になる、京野菜のようなブランド力を持つことが、これから先も残していくために、活動しています」

食卓に江戸東京野菜が並び、親子でその物語について語ってほしい。そして江戸東京野菜が、食卓にちょっぴり彩りを与えて、日々の食事が少し特別に変わってくれたら…。松嶋さんのそのような願いから、子供たちへの食育活動は行われているのだ。

四限目は、江戸東京野菜の生産から販売・六次産業まで全部やっちゃうオギプロファームの福島さんにお話を聞く。


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