【デントウ野菜大学】一限目:伝統野菜を育てる農家さんの気持ち

in デントウヤサイ大学/東京/農家漁師にインタビュー/連載
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デントウ野菜大学で最初に取り上げる伝統野菜は、江戸東京野菜。
江戸東京野菜とは、種苗の大半が自家採取または種苗商によって確保されていた江戸時代から、昭和40年代までの野菜のこと。
参勤交代の際江戸に伝わった野菜や、現代まで住宅地で人知れずひっそりと種をつないでいた野菜など、一つ一つの野菜の背景に物語があるのが魅力的だ。
まずは江戸東京野菜学の門をたたいてみよう!!

書き手:河村青依(タベタイ編集部/早稲田大学)

参考:江戸東京野菜ガイド 株式会社小城プロデュース

一限目で学ぶのはこれ! 
小金井で伝統野菜を育てている大堀さんに話を聞く!
伝統野菜は個性豊かで、育ちづらい在来種。
大堀さんの扱いづらい野菜を育てる理由には、消費者への想いと野菜への考え方が反映されていた!

①伝統野菜の魅力
伝統野菜はえぐみ、甘味、苦味、個性がそれぞれある野菜。

②伝統野菜の現状
育ちづらく、種もそこまで流通していない。

③伝統野菜を未来につなげるためには
育てるのは難しいけれど、まずは多数の農家さんに少しづつ普及させていくことが残すための第一歩。    

①伝統野菜の魅力

1,甘い野菜=美味しいの価値観に異議

伝統野菜の魅力とは何なのだろう。大堀さんならではの野菜への考え方が反映されていた。

大堀さん:「今の野菜って同じように甘い野菜が多い。たまに他の果物の味をした野菜が売られているのを見かけるけど、作物にはそれぞれ個性があるはずなのに、どうしてミックスさせる必要があるのか疑問に思ってしまうね。品種改良して、見た目は異なるけど同じような味の野菜ができるって皮肉なことじゃないかな。えぐみ、甘味、苦味、それぞれの野菜の個性を残していきたいって思って栽培しているよ」

②伝統野菜の現状 

2,育てていたら消えたッ!?

 江戸東京野菜の難しさ

左:伝統野菜の種 右:F1種の種

江戸東京野菜は市場でそこまで流通していないため、F1種の種とは違い薬剤コーティングされていない種が多い。そのため、病気にかかることも多い…。また、そもそも種が販売されておらず、自家採取しなければならない野菜も多いそうだ。

大堀さん:「F1野菜だと収穫時に一気に同じ形の野菜を収穫できるけど、江戸東京野菜はそう上手く行かない。
育ち方もまちまちで、出荷できないサイズの野菜も多くある。だから、リスクの大きい野菜だよ。

例えば、*馬込三寸人参は種まきして芽まで出たのに、いつの間にか消えてしまっていたし、*東京長かぶも、収穫時に引っこ抜いてみたら、本来かぶになるはずの部分がただの根っこになってしまったっていうことがあったな(笑)」

注釈:*馬込三寸人参 大田区馬込で、砂村三寸人参と川崎三寸人参の交雑によってできた改良種。                強い甘みで生でも美味しい。

   *東京長かぶ  長円筒の株。白くかたい長い根と葉野菜のような葉が特徴的。

 参考:「江戸東京野菜」佐藤勝彦 株式会社マガジンランド

③伝統野菜を未来につなげるためには

3,未来に伝統野菜を残していくためには
地道な努力が必要

伝統野菜を今後も絶やさず育てていくために必要なことは何だろう?
大堀さんのお話は、都市農家さんが、抱える課題ともつながっていた。

大堀さん:「最近、相続税の負担により、土地を手放す農家をよく見かける。でもその多くは、先祖代々の土地を全て売ってしまうのではなく少しだけ残しているな。

伝統野菜は育てづらくて、採算が合いづらい。

だから大規模に江戸東京野菜を育てる農家を育成するのは難しいことだよ。都市に多く居る小規模農家に伝統野菜を普及することで、育ちづらい伝統野菜のリスクを分担しつつ安定した需要を確保できるんじゃないかな。」

江戸東京野菜を今後も残していくためには、大きな農家、プロジェクトよりも、少しずつ多くの農家が育ていくというような草の根レベルの努力が欠かせないのだ。

大堀さんの家の前にある野菜スタンド。

銭箱が盗まれてしまうなど課題も多かったらしい…。

また大堀さんのように多種の野菜を育てることは手間もかかり採算も合わないことだ。
しかし、散歩がてらに新鮮野菜を買うことを楽しみにしてる小金井の人のことを想うとそれらをやめようとは考えなかったと、大堀さん。

想いや歴史、伝統…少し非合理に思えてしまうことを大切にする、それが伝統野菜を育て続ける理由なのかもしれない。

【予告】2限目は伝統野菜を扱うカフェを営む小林さんにお話を聞く!


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