「いいもの」よりも「ちゃんとしたもの」を。シェフが考えるみんなのための食育。

in TABERU TIMESな日々/食育
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食のプロであるシェフは食育に対してどんな考えを持っているのだろう。

 子どものために、毎日いい食事を用意しなきゃいけない。そう考えるあなたの食育の概念、ちょっと固すぎるのかも?

 シェフが考える食育は、高級で特別な食事よりも、家庭で当たり前に作れる「ちゃんとした」食事を摂ることだと、レストラン「Le japon」オーナー/シェフの中田さんは語ります。 

書き手:岩田 なつこ(食べタイ編集部/明治大学)

<登場人物紹介>

中田耕一郎

代官山の創作フレンチレストラン、Le  japonのオーナー/シェフ。中田さんは一般社団法人ChefooDの活動の一環として、学校給食をプロデュースしている。

一般社団法人ChefooDo

食の力で「ココロ」をより豊かにという志を持ったシェフが集まり、食に対する素直な感性を育み「食育」への入り口をより開けたものへ変えようとしている。学校給食や地元食材のPR活動を行なっている。

食育の原点。レストランとは違う給食づくり。

中田さんとChefooDoによる学校給食活動は、栄養士とメニューを考え、実際にシェフ給食として提供する活動だ。地域の食材の特色を最大限活かし、完成した給食を子どもたちと一緒に食べるという。

 「本当は給食って原価1食260円。他にも時間や衛生面などいろいろ制約がある。前の日に仕込んだりできないから、その日に仕込んでその日に出す。しかも、給食の時間って決まってるでしょ?レストランだったら待ってくださいと言えるけど、給食だとできない。それが400人前」

 そんなに高度なスキルが給食作りに必要だったとは!シェフによるプロの味付けでも栄養価的には塩分が多すぎる、生野菜は衛生的観点から禁止など様々な制約があるという。でも、大変な分だけやりがいもある。

「子どもって本当に正直だから、励みになるよね。まして、30人くらいのクラスで一緒に給食を食べたりするんだけど、その時にシェフになりたいって子がいるとやっぱり‥‥嬉しいじゃない?」と、中田さんが微笑んだ。

実際に中野区の小学校で提供される、江戸東京野菜を活用した学校給食。

小さい頃食べたものの記憶で大人になっていく。

「舌が肥える」という言い回しがある。それってどういう意味?小さい頃から高級品を食べていたら、それが食育なの?

自身も父親である中田さんが食育に関して思うこととは。

「小さい頃食べたものの記憶で、大人になっていく。やっぱり子どもの頃食べたものって大事だし。ちゃんとしたものというか、別に高級なものじゃなくても出汁の旨味とか、野菜の旨味を小さい頃から知ってほしいですね。

昔はお金ない人でも結婚記念日にはおしゃれして、レストランで食べるとかあったけど、今はない。普段はハンバーガーだけど、誕生日はビッグマックにしようかみたいな(笑)。おいしいもの食べたいと思わない。君達若者もそうでしょ?お金貯めて高いフレンチ食べたいと思わないでしょ?

 働くにはちゃんとしたものを食べないと。昼間は頑張って働いて、夜は地元のおいしいもの食べて、ココロが豊かになって、そして明日も頑張ろうと思う。人としてそれが正常だし、そうじゃないといけないなと。そのお手伝いができたらと思っています。」

1日3食、人生の中で食事の回数は実はすごく限られている。だからこそ、ちゃんとしたもののおいしさを知ったら自然とそれを選べるようになるはずだ。「いいもの」を食べなきゃと気負いすぎる必要はない。

中田さんによる越後湯沢伝統野菜の黒舞茸と雪室野菜を使用したお弁当。

食育は、旬を取り戻すこと。

忙しない現代の家庭で、食を通じて「ココロ」を豊かにすることはできるのだろうか。そのためには、子どもに対してだけでなく、食事を作るお母さんが知識をもたなければいけないのかもしれない。中田さんに思いをぶつけてみると…。

「そうですね。子どもが親にそうしてほしいと言っても変わらないから、本当は親御さんを呼んで食育の教室をしたほうがいいんだよね。しかも、お母さんだけじゃなくて、お父さんだって今は食育について知らなきゃいけない。そういうことを訴えてほしいよね。僕らシェフから言うより、一般の人や子どもの立場からそういう意識が欲しい。

 特に僕が普段の食事で大事にしているのは、旬を大事にすること。例えば、さんまが獲れ出したら、今年最初のさんまを9月にみんなで食べて、秋だねって感じたり。その時には新米もあるから去年の米と今日の新米は違うよねとか、食べ物が今一番うまいっていうことを感じてもらいたい。さんまだったら、そこから会話ができるように。食べ方とか、さんまってなんで秋の刀の魚って書くの?秋が旬だけど秋以外はどこに居るの?と、子どもに聞いたりね。会話にもなるし、記憶にも残るでしょ?

 でも、今の家庭は忙しいから黙って食べるものしか作らない。ハンバーグとかスパゲティとか。要は好きなものだけ。僕らが小さい頃はふきの煮物とか、正直食べたくないもの食べさせれらたりしてね。それはお母さんに余裕があったから。今は余裕がないから、黙って食べてという感じ。それだと会話も弾まない。」

親から変わる、今日の食卓。

親が変わらないとその家庭の食事は変わらない。働いて、子育てをして、家事をして。日々精一杯なお母さん、お父さんたちが食事にまで気を配ることは難しいのかもしれない。そんな人たちは、どうやって行動すればいいのだろう。こんな疑問に、中田さんの言葉が肩の荷をおろしてくれた。

「単純においしいもの食べたいから仕事頑張るとかでいいと思うんだよね。うちの店に来るお客さんの中にも、おいしいもの食べても何も感じないとか。なんのために仕事頑張ってるのかなあとか思ってしまう。おいしいものって値段が高いとか、わざわざその地域に行かないと食べられないとか、お金が必要な部分もあるじゃない。そのために仕事頑張る。そういう単純な気持ちで大人なれば、真っ当な人間に育ってくれるというか。そういう意味でも、食育ってすごく大事だと思うんです。」

「食育」と聞くと、なんだか堅苦しい感じがするけれど、無理なく自分にできる範囲で「ちゃんとしたもの」を用意すればいい。それは旬の食材を食べることであったり、今日の献立について家族で話すことだったりする。そこから食を通じた笑顔が生まれて、自然と食育につながっていく。

今日、仕事終わったら誰と何を食べようかな、どうせならおいしいものが食べたいな。そう思うことってそんなに難しくないはずだ。

中田さんは「ちゃんとしたもの」を親子の食卓に届けるため、料理教室を開催しています。この記事を見て、もっと食育について中田さんに聞いてみたい方は、ぜひどうぞ!


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Le japon WEBサイト
http://www.le-japon.info/contents/chef/profile/

一般社団法人ChefooD WEBサイト
https://www.chefoodo.jp


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