コロナで見直されるJAと直売所の役割

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 私たち日本食べるタイムスは全国各地の生産者の皆さんに、たくさんお世話になってきました。しかし、私たちの知り合いの生産者さんの中にも新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けている方が、少なからずいらっしゃいます。「今、生産者の皆さんの身に何が起きているのだろう?」編集部員がコロナ禍の農林業のリアルに迫ります。

 今回のテーマは「JA」と「直売所」。コロナ禍でローカル経済の重要性が見直される中で、農家を支えるJAと直売所が果たす役割について改めて見直してみたいと思います。聞き手である山本は、「早稲田大学農業サークルこだま」の一員として、JA埼玉ひびきのと協力し、農産物直売所の活性化に取り組んできました。
 今回取材するのは、JA埼玉ひびきの(埼玉県本庄市と児玉郡3町を管轄)常務理事の五十嵐雅樹さんです。


       聞き手:山本遼(食べタイ編集部/早稲田大学大学院修士2年)

首都圏に発信する直売所・アグリパーク上里

山本:JA埼玉ひびきの管内(以下ひびきの管内)の農産物の魅力を教えていただけますか。

五十嵐さん:なんでもあるんだよね。あと、大消費地に近いのが一番の強みだね。翌日には量販店、直売所には当日のモノが並んでいる。

山本:様々な野菜・果物がとれるのがひびきの管内の良さですが、今の季節、特に押し出したい野菜はありますか?

五十嵐さん:夏なので梨やとうもろこしかな。ひびきの管内の上里町にあるアグリパーク上里では今度とうもろこしの収穫体験ができます。梨は8月になってからですね。

山本:五十嵐さんはこれまで2017年に新設された農産物直売所であるアグリパーク上里の移転・新設オープンに関わって来られたわけですが、アグリパーク上里の移転・新設の経緯について教えていただいてもよろしいでしょうか?

五十嵐さん:アグリパーク上里は、今、関越自動車道の上里スマートICのそばにあるんですが、昔は街中の上里支店の敷地内にありました。

移転・新設の趣旨としては地元の食材を地元だけではなく、首都圏の方にスマートICを通じて首都圏の方に発信していきたいことがありました。当然生産者の売り上げアップも考えました。もう1つはフードコートを2店舗入れまして、そこで地元の食材を食べていただいて、PRしたいと。1店舗は地域NO.1のうどん屋さん。もう1店舗はハンバーグを中心としたお店が入っています。今現在2店舗とも非常に堅調に推移していまして、コロナで若干影響も出ましたが今はさほど影響がありません。直売所につきましても右肩上がりで推移していまして今年度もコロナの影響もあるんですが前年比115%くらいの推移で来ています。

コロナで直売所の売り上げは伸びた???

山本:コロナ禍で直売所が前年比115%推移という伸び率で来ている要因は何ですか?

五十嵐さん:一番の要因は家庭内で料理を作る方が増えたこと。もう1つは色んなお店から依頼を受けてテイクアウトのお弁当を置くようになり、それが売れたことの2つです。

山本:埼玉ひびきの管内には地域ごとに5つの直売所がありますが、全ての直売所が同様に伸びていますか?

五十嵐さん:そうですね。すべてが前年をクリアしています。本庄市にあり、地元客がメインであるあおぞら館が125%で最も伸びています。

山本:五十嵐さんが感じる、コロナで見直される直売所の役割ってどんなところにあると思いますか?

五十嵐さん:直売所って個包装。1つ1つ裸で置いてあるということがない。人の手に触れていない安心感がある。

山本:普段、家庭用野菜を買わない人はどこで野菜を購入していたんですか?

五十嵐さん:スーパーですね。スーパー自体の売り上げも伸びている。

山本:スーパーも売り上げが増えているということですが、もともと上里・本庄の皆さんはレストランで食べていた需要が落ちて、その分が家庭用に変わったということですか。

五十嵐さん:そうだね。

山本:ひびきの管内のコロナ禍での農家さんの影響は何かありましたか?

五十嵐さん:全体には少ない。加工業務用の農家さんの影響が大きい。米に関しては家庭需要が高まり、直売所で逆によく売れたんだよね。

山本:あまり影響を受けなかった理由として直売所の流通ルートの確保ができたことがあるのではないかと思うがどうですか?

五十嵐さん:そうだね。直売所があることで生産者が流通ルートを確保できたのはあると思う。もちろん、市場流通自体も活発に動いてはいる。ただ、加工業務用がストップしたのでたまねぎなどは市場流通分に値下がりなどの影響があった。加工業務用のたまねぎの一部が市場流通に流れてきてしまったことが原因です。

日々農家のために走り回る五十嵐さん(左)。この日はゴーヤ農家に学生を案内。

農協農産物直売所の農家にとっての意義とは?

山本:農協農産物直売所の農家さんにとっての意義は何だと思いますか?

五十嵐さん:高齢者の方が農家には多いのだけど、「生きる楽しみ」がある。定年退職して土地と農機具はあるという人が簡単にお金ができるというのがある。「生きがい作り」を直売所が一役買っている。自分で食べて作ったおいしいものを提供できるというものがある。

山本:民間直売所が増える中で農協が直売所を運営する意味は何でしょうか?

五十嵐さん:農協がやることで受け皿を広くできる。地域で農業をやっている組合員さんなら全員出せる。民間の場合は、スペースが限られている場合、新たに出すのに会員の農家さん全員に許可を取る必要があったりする場合はあるが、農協の場合誰でも出すことが出来ます。

地域食材の情報発信の拠点を目指すアグリパークにはうどんとハンバーグのフードコートも。

アグリパーク上里を情報発信の拠点に

山本:五十嵐さんのアグリパーク上里へのかける思いを教えてください!

五十嵐さん:ひびきの管内の「情報発信の拠点」にしたい。「あそこに行けば全ての野菜が揃う」というような形で。

山本:本庄児玉地域で35年農協職員として働いてこられた中で、この地域をこうしたいという思いはありますか?

五十嵐さん:後継者が出来る農業、生産者が儲かる農業をしたい。そうすれば嫌でも後継者は増えてくる。それはどういうことかをいつも考えている。だから売る仕事に力を入れている。販売方法のチャネルをいっぱい持ちたい。直売所や契約栽培、市場出荷。個人が農家をやっててもいっぱいチャネルを持っていればコロナのように片方がストップしても他の逃げ道があったりする。いろんなチャネルを持った農業者を増やしていきたい。

山本:アグリパーク上里に来たくなるようなメッセージをお願いします!

五十嵐さん:地域のいいもの、面白いもの、人気の食べるお店が詰まっています。その辺を食べてみて、味わってほしいです。特にこの時期はこれからとうもろこし、梨を食べてもらいたいです。フードコートのうどんやハンバーグもおいしいので食べに来てください。

山本:ありがとうございました!

コロナで見直されるローカル経済とサプライチェーン

 コロナで見直されたローカル経済、直売所やJAの役割。JAの運営する直売所に出すような、小規模の農家さんが日本の食や農村風景を支えています。

 そして、直売所はコロナ禍において、地域内において消費者と農家を近づける役割を果たしています。アフターコロナにおいて、JAや直売所による「ローカル経済」は役割を見直されることでしょう。

 コロナの先に、農家と消費者の間のサプライチェーンや、もっと言うと「情報コミュニケーションデザイン」はどのように変化していくのか、編集部としても注目していきたいです。

 そして、アグリパーク上里(関越自動車道上里ICすぐ)は、とうもろこしと梨がもうすぐ旬です。ぜひ、行ってみてください!




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