YOUは何しに大土へ?小さな村の大きな夢

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日本の集落

現在の日本の人口は都市地域で1億143万人、農業地域では2567万人となっており全体の80%の人口が都市的地域に集中しています。これに加え、農業地域では都市的地域に先行して高齢化と、15歳以上65歳未満の生産年齢人口割合の減少が進行しています。このような現状の中で冠婚葬祭の生活扶助や農作業を助け合うといった集落としての機能を失いつつある村が増えています。石川県加賀市にある大土村もそんな村の一つでした。しかし、この村出身の二枚田さんの取り組みにより大土村は現在も新たな魅力を生み出し続けています。

二枚田さんと大土村

当時、村を出て大阪で働いていた二枚田さんはある時ふと空を見上げて光化学スモッグや排気ガスでくすんだ大阪の空を見たとき、自分は50代、60代になってもここにいるのか?と疑問を抱いたそうです。このことがきっかけとなり、故郷である大土村に戻って炭工房を営み、教育委員会と提携して小学生の農業体験支援などを行なっていました。

二枚田さんのふるさとである大土村は100年ほど前の最盛期には44軒の家におよそ279人が生活していましたが、現在定住しているのはわずか2人と猫1匹のみです。赤茶の瓦が特徴的な大土村の古民家も火事や大雪により減少し、多くが空き家になっています。故郷がなくなることを痛ましく感じた二枚田さんは今立町、荒谷町、杉水町、そして大土町の4つの集落の住民のみなさんと力を合わせて保存会を設立し、民家の活用を考えるようになっていきました。

丘を登れば村が一望できます。
二枚田さんがお父様から引き継いだ炭焼き小屋

大土村の特徴

大土村の古民家の家の瓦は防水作用のある釉薬がぬってあるため、多い時で4メートルもの雪が降る大土町の地域でも、雪や水がしみ込まないようになっています。瓦の美しい赤はこの釉薬によるものです。また、豪雪地帯であるため屋根には雪かきがしやすい工夫も施されています。雪止めという横線が瓦の色を変えることで表現されており、その線より前に出ないようにすれば安全に雪かきを行うことができます。

壁にも特徴があり、竹を稲ワラを含んだ土壁で固めた後、雨が当たる部分にだけ杉の皮を貼り劣化を防いでいます。

 さらに、大土村の30枚の棚田には土砂崩れ防止用に石垣が組んであり、水流によって破壊されることのない頑健な構造の田んぼになっています。

家ごとに屋根の色にむらがあるのも特徴的
右手の蔵に雪滑りが施されている。
下部の杉は30〜40年で定期的に手入れしなければいけない。
棚田の壁は石垣で出来ている。

これからの大土村

このような日本の伝統的な古民家を守るために、大土村は平成23年に「加賀市加賀東谷」として重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。しかし、保存地区になったとしても急に住民が増えるわけでもないし建物は人が住まなければ荒れ果ててしまいます。そこで、二枚田さんはNPO団体と協力し、国内と海外からのボランティアを受け入れる活動を2013年から始めました。大学生を中心とするボランティアたちは放棄されていた田んぼで稲を育て、雪かきや畑仕事を行なっています。毎回の食事には畑から取ってきたばかりの無農薬野菜を使用し、そのままかじっても美味しい野菜本来の甘みを楽しめます。

最近ではボランティアの皆さんと共同し、空き家を利用してゲストハウスを運営するという計画が進められており、近々法人化し本格的に始動するようです。

ジャガイモを植えるための畝作りを教わります。
イノシシよけフェンス完成!暖冬のせいで雪が減少するとイノシシはぐんと増えたそうです。
囲炉裏で焼けばなんでも美味しい!
日本文化を味わうためのお茶会体験
四方を囲む山へ続く道の手入れも二枚田さんとボランティアが力を合わせて行います。

次は何をしようかな

集落を維持することはただ多くの人に訪れてもらうだけでは達成できません。例えば、毎年ゴールデンウイークになると多くの観光客が山菜採りに大土村に訪れますが、彼らはまだ小さいものまで採取し、来年のことを考えてくれないようです。そうなると日常的に旬のものを食べる地元の皆さんの分が減ってしまいます。このような住民の生活と地域活性化との折り合いをつけることが新たな課題となっています。

観光客というよりも関係人口を増やすために、二枚田さんは大土村が外国人と日本人が交流し、理解し合える場所になればいいと考えています。関係人口とは、大土村のような農山村に多様な貢献をしたいと行動する人々のことであり、人口にはカウントされないものの、これからの地域を支える重要な役割を担っていくことができます。「大土村に関わりたい」そう思う人が増えるように、大土村の挑戦は続きます。

作業後の一休み
次はどんな子がやって来るかな?どんな問題を起こすかな?と考えることや、ボランティアの成長を見ることを楽しみにしている二枚田さん。(右奥)
 

二枚田さんはボランティアでやって来る若い世代に農業を応用して幅のある生活を送って欲しいと言います。自然のままの野菜を食べること、コタツや囲炉裏を囲んで団欒すること、そんな原点に立ち戻った暮らしに自分の人生を省みるポイントがあるのかもしれません。


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