手作りって嬉しい?〜家庭菜園のすすめ〜【ももの体験記vol.2】

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食べタイ編集部員ももが、食にまつわる自分の体験を語る「ももの体験記」シリーズ。前回は、田植え体験から感じた、”本物”を見つめることの大切さを綴りました。第2弾は、もっと”本物”に近づきたくて、初めて自分で野菜を育ててみたお話です。


書き手:もも(食べタイ編集部員)
なんでも自分でやってみないと気が済まない「ももの体験記」を、シリーズとしてお届けしています。第1弾の田植え体験記はこちらから。



東京駅のひよこの代わりに、手作りのギフトを

私は昨年の夏に、ベランダとおばあちゃん家の畑で6本のナスを育てるチャレンジをしました。 
きっかけは、様々な農家さんや漁師さん、料理人さんなどに出会い、自分でものを作ることのかっこよさに触れたことです。彼らはお土産というと、自分が育てた野菜、獲った魚、作った料理などを渡してくれました。思いが込められたこれらのお土産は、いつも私を幸せにしてくれます。

▲岩手県の漁師さんが贈ってくださった新巻鮭。

一方で、私が返せるものと言ったら東京駅で買うひよこ、くらいしかなくて。彼らからいただく温かみのあるお土産たちと比べて、味気なさを感じていました。
「なにか私も自分の手作りのものを贈りたい」という気持ちがだんだんと大きくなっていきました。

思い返すと、この気持ちは昔から自分の中にあったのかもしれません。

たとえば小学生のとき。バレンタインデーに、大好きな人に手作りのチョコをあげたことがあります。
デパートで買ったチョコよりも、へたくそでも手作りの方が思いが伝わると信じていたのです。

さて、ひとくちに何かを”作る”と言っても、音楽、絵、服、本、など色々な選択肢があります。その中で私は、ナスを育てることを思いつきました。なぜナスかというと、ナスが大好きだったからです。そしてありがたいことに、我が家にはおばあちゃんが野菜やお米を育てている畑がありました。今まで手伝ったことはありませんでしたが、私にとって食べ物を作るという環境が1番身近にあったのです。

 「自分でナスを作ってみたい」とおばあちゃんに相談すると、快く畑を貸してくれることになりました。私がはじめて野菜づくりに興味を持ったことを喜んでくれたみたいです。

自分ひとりでは何もできなかった

さっそくホームセンターにナスの苗を買いに行った私は、ここであることが気になってしまいます。

「このナスの苗、誰が育てたんだろう??」

 自分で作るとは言ったものの、もうすでに種から苗になるまでの間に、誰かの手が加わっているらしいのです。

それは、私が貸してもらう畑も同じことでした。そこは今までおばあちゃんが手入れしてくれていて、シャベルや肥料など、野菜づくりの道具もだいたいそろっていました。そして何より私には、野菜づくりを教えてくれるおばあちゃんという先生もいます。これらを全部1から自分で用意するとなったら、それだけで挫折しそうです。

”自分”で何かを作りたい、と思っていたけれど、どうやら自分ひとりでは何もできないみたいだと気づかされました。

▲植えたてのナスちゃんたち。

時間を買っているということ

ナスが育っていく様子を見るのは、私の毎日の楽しみになりました。苦手だった早起きが、「ナスの水やりのためなら」と、できるようになったくらいです。

▲花が咲いた日の喜び。花も葉っぱも紫色。 

そんなふうに、愛情と時間をかけて少しずつ大きくなっていくナスちゃんたち。彼らを見ながらふと、「時間は、価値になるのかもしれない」と思うようになりました。 

 たとえばナスは、私がいつもより少し早く起きて水やりをした時間で育ちます。農家さんは、それとは比べ物にならないくらい、もっとずっと多くの自分の時間をかけて野菜を作っていることでしょう。

いつもの私は、それをお金を払って買っています。自分では作れないものだらけの私は、そうやって誰かが作ってくれたものを買うことで暮らしているのです。これは、誰かが費やしてくれた時間を買っているということなのかもしれません。

スーパーのナスに感動

自分の生活にナスが入ってきてから、世の中のナスによく目が行くようになりました。そして、スーパーのナスのすごさに気づきました。
輝く紫、引き締まったボディ、均一な形と大きさ。それに何より、安定した量を収穫できるというところにプロの仕事を感じます。というのも、自分のナスを誰かに贈ることを考えたときに、1番頭を悩ませたのが量の問題だったからです。

▲「お願い、明日までに大きくなって!」と祈る日も。

本当に、決まった日に贈れるほどの量がとれるのか、いつもハラハラしていました。さらに我が家のナスは、売り物と比べると、形はバラバラだし色もぼけぼけ…。

「手作りのものの方が、思いが込められてもらった人も嬉しい」と信じて作ってきたナスですが、だんだんと人に食べてもらう自信がなくなっていきました。

▲私にとってはとびきりかわいいけれど…。

私が今まで農家さんが作ったものをもらって嬉しかったのは、「関わりがある人が作ってくれたものだから」というのもあるけれど、やはりそれが「美味しかったから」というのも大切なポイントだと思います。

▲友達にナスをお披露目。

ドキドキしながら、友達にナスを食べてもらったとき、「ももちゃんが作ったから美味しい!」と言ってもらえるのはとても誇らしく、嬉しかったです。
でも、誰かを本当に喜ばせたいのなら、思いの部分だけに甘えてはいけないということも感じました。

美味しさと思い。それを両立している農家さん漁師さんはやっぱりかっこいいと、さらに尊敬が増す日々でした。

ナスが教えてくれたこと

「自分で何かを作ってみたい!」という衝動から始まったナス作り。
振り返ってみると、”自分”ひとりで作ったなんて、恥ずかしくてとても言えません。

どこかで苗を育ててくれた人、一緒にナスの面倒を見てくれたおばあちゃん、毎日ナス料理に付き合ってくれた家族、美味しい笑顔でナスを食べてくれた友達…。

こんなにたくさんの人が関わってくれていました。

それから、やはりプロが、売り物にするだけの時間をかけて作ってくれたものは素晴らしい、ということにも気づけました。
自分で何かを作ってみることも楽しかったけれど、そういう”本物”を正しい値段で買うことも、今の私にできる1つのことかもしれません。

いつかは私の手作りも、自己満足を超えた本物となって、誰かに価値を与えられるように。さあ、自分の時間を何に注いでいこうかな。


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