前回に引き続き、利賀村(富山県南砺市)にいる中西さんにお話しをお聞きします。今回は中西さんが作っているどぶろく『まごたりん』に注目しました!
「どぶろく」と聞くとなんとなく馴染みにくいイメージを抱く人も多いかと思います。
そんな中、女性人気を集めるほど飲みやすいと言われる『まごたりん』。一体どんな秘密があるのでしょうか?
意外な由来、“幻の熟成どぶろく”などの話題から、限界集落で活動し続ける中西さんの人生観まで、たっぷり語っていただきました!
ライター:川﨑 嘉皓(かわさき かひろ)/慶應義塾大学

「まごたりん」の意外な由来、こだわり抜かれた原料

どぶろくついて詳しく聞かせてください!
まず、商品名が「まごたりん」ですけど、これはどういった意味なんですか?
「まごたりん」っていうのは私のことだね。

私の祖父が「”たりん”さん」と呼ばれていたんだ。
豪快でお人好し、そして何よりも大酒飲みで「わしは一生飲んでも足りん!!」っと言っていたことが由来。だから私の父は「子たりん」。で、私は「孫たりん」と呼ばれていた。
それをそのまま銘柄の名前にしたって訳。
どう?ストーリーがあって面白いでしょ?

すごく素敵な名前だと思います。
その「まごたりん」の特徴はどのようなものですか?
まず、一般的にどぶろくは水とコメを発酵させたものを酵母菌でアルコール化させたもの。清酒(日本酒)の原型で濾していないから、にごりと甘味がある。
「まごたりん」は「自家製の有機無農薬米」と利賀村の湧き水「鴻の貴水」を原料にしているのがこだわりやね。

個人的には、「どぶろく≒甘酒」みたいなイメージを持っているんですけど、「まごたりん」の味の特徴はどうですか?
そうだね。ほどほどに甘さと辛さが共存している。特にまごたりんは天然酵母だから甘味がしっかりしている。
だから、清酒が飲めない女性でも「まごたりんなら飲める!」と言ってくれる人もいるくらい。

「まごたりん」は全3種類。それぞれ酵母が違うから、味わいも変わってくる。
「ノーマル・岩魚の酵母・そばの花の酵母」の3種。
元々ノーマルだけだったんだけど、せっかくだから利賀村の特産を酵母にしようと思って追加で2つを作ったんだよ。

本当に飲める?2年ものどぶろく
そう言えば、すごく面白い話があってさ。
この前、“2年もの”の「まごたりん」を見つけたの。
2年もの…
どういうことですか??
以前、地元の祭りで皆に「まごたりん」を振舞ったんだけど、それを1本だけ公民館に置き忘れてたみたいで。
この前、たまたま発見しちゃったんだよね。
時間で言うと丸2年間も経ってるし、夏の酷暑にも晒されていたはずだよね。
えぇ!どうなってましたか?
(ちょっと嫌な予感がする…)
酸っぱくなったりしてとても飲めないんじゃないか、と思っていたんだけどちょっと試しに飲んでみたら….これがまたおいしくて!
まだ少しだけ取ってあるからよかったら飲んでみない?

夏場は35度を超えるような場所に2年間も放置していたけど、全然平気。だから最近は賞味期限は無いんじゃないかと思っとる。
とにかく飲んでみて!
……

どう??
めちゃくちゃおいしいです!!
自分はむしろ2年ものの方が好きかもしれないです(笑)
甘味が強くなってますよね?
そうでしょう!
恐らくアルコールが少し抜けた分、より甘味を感じられるどぶろくに仕上がっとるのかな。

やはりどぶろくは「生き物」なんだなと。
2年ものまでいかなくとも、そのときによって味や度数は少しずつ異なってくる。
こだわって作った「まごたりん」だからこそ、その瞬間ごとに味わいの違いを意識してみるともっと楽しめるはずやね。
なるほど「生き物」ですか。
2年経っても成長し続けていたとは。

「永遠のチャレンジャー」中西さんの夢
既に「民宿・農業・どぶろく」をはじめとして色々なことに取り組んでいらっしゃると思いますが、今後やってみたいことってありますか?
もうたくさんあり過ぎるくらい!
一番大きなものは「自然栽培」に挑戦すること。
有機無農薬の栽培を始めて10年。それがほぼ確立した感じがあるから、より環境に優しい、そしておいしい農法を目指そうということでもう既にやり始めている。
また新しい挑戦をするんですね…!
最近、利賀村への移住者で農業に関心の高い若者と「自然栽培研究会」を立ち上げたりもしたよ。
ここ(利賀村)は庄川の源流に位置する。だから川の水を汚さない、環境に優しい方法の確立に大きな意義を感じとる。
そして何より、意思のある若者と一緒に目標を持って取り組むことが楽しくてしょうがない!

農地として非常に優れた環境である、そしてそこに意思をもった人々が集まって来とる。
だからこれまで言ったけど、利賀村が面白いのは“これから”。「いよいよおもしろなって来たわ」ってね!
素敵です…!
人生100年時代っていうけれど、ただなんとなーく100年間生きても意味ないじゃない?
健康であり、夢をもって前向きに挑戦し続けることが一番大事。
だからどんどん挑戦していくし、食を通じてよりみんなの健康をサポートしていけるようにもなりたい。

そうやって健康で前向きに夢を追いながら、「ピンピン、コロッ」と逝けたら幸せだと思わん?
だから、今はいつ死んでも悔いが無いっちゃ!
そう思って毎日頑張っとる。
カッコよ過ぎる!そんな大人になりたいです。
だけどあと最低10年は頑張って続けようと思っとる。その後は私の想いに共感さえしてくれれば、その人にお願いしても良いかな。血縁は無くとも構わない。

「(村には)過疎で人がいない」とか愚痴ばかりを言ってても始まらん。
とにかく前向きに、コツコツと努力することが大事。そうすればこうして少しずつ結果はついてくるし、何よりも毎日が楽しいから。
運営している「百姓塾」でも次の世代の子供たちにそういったことを伝えるようにしとるよ。
いかがでしたでしょうか。
全2回を通じて、富山県の山奥の秘境で民宿経営・農業・どぶろくとマルチに活躍する中西さんにお話しを伺いました。

“限界集落”というとなんとなく元気の無い印象でしたが、実際に聞いてみるとそのイメージとはかけ離れていました。
素敵な民宿と地元の美味しいごちそうやどぶろく。そしてそれらを運営するエネルギッシュな中西さん。
富山の秘境「利賀村」とそこで暮らす中西さんに少しでも興味が湧いた方はぜひ民宿「中の屋」へ!
撮影,デザイン:嶋田一輝 (慶應義塾大学)
取材:武市俊平,藤田瑞穂(慶應義塾大学)
◎今回ご紹介した中西邦康さんやまごたりんの詳細について
◆中西邦康さんFacebook:Kuniyasu Nakanishi
◆利賀どぶろく「まごたりん」お買い求めの先:
・百選横丁
・ Amazon
◆中西さんが運営する民宿「中の屋」:
・HP
・楽天トラベル
・AirBnB
・るるぶトラベル
この記事を書いたのは慶應義塾牛島ゼミ「利賀プロジェクト」です。

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