(第二回から)
「息子が後を継ぐのは当然だ」
渡邊拓磨さんより上の世代、父親の正義さんが20,30代の若い頃はそう言われていた。
一般的にも、一昔前まではいわゆる世襲が現在よりも圧倒的に厳しかった。
拓磨さんは高專卒業後、ふるさと樽口集落で生きていくことを決め、帰ってきた。拓磨さんの帰郷を喜んで町の人が拓磨さんにこう声をかけた。
「(小国に帰ってくるなんて)すごいねえ・・・」
拓磨さんはこの言葉に違和感を覚えた。
「『なにが?』って思ったよね。オレの場合は、好きで帰って来てるだけなのに、なんで『すごいねえ』と言われるのかなと」
なぜ、町の人はそう言ったのか?
もしかしたら、あの人は小国を好きではないのかもしれないと拓磨さんは想像した。好きだったら「よく帰ってきたな」と言う程度ではないかと。
「小国を好きでいることが大事なんじゃないの」
拓磨さんは強調する。自分が帰ってきたのは小国が好きだから。そして、小国で暮らしたいという意思が気持ちの多くを占めていたからだ。
好きなこと・やりたいことをやって生き生きと人生を送る。このような考えは、当たり前に聞こえるかもしれない。しかし、地方社会ではまだまだ理解が進んでいない。
そんな地方社会の中で、拓磨さんは「オレは、好きだからここにいる」を唱え続けている。目指すゴールは、小国町民が「小国が好きだ」と言い、よりフレキシブルに、より自由に発想できる“人口が減っても幸福度が増すまちづくり”だ。
文:北澤嵩人(食べタイ編集部、早大3年)
【連載おわり】
連載シリーズ
「お前ん地元、ジャングルみたいだな!」小国町・渡邊拓磨さん(1)
「バチ当たっていい」樹齢800年の御神木をなぜ切ったのか 小国町・渡邊拓磨さん(2)
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