7年前でした。
東日本大震災が発生してからいつの間にか7年以上が過ぎて、今では『復興』という言葉を耳にする機会もずいぶん減った中で、まだこの地で起きていることがありました。
『子供たちに農業体験をさせたくない。』
『学校給食に相馬の野菜を使わないでほしい。』
少数ですがこのような意見が、ここ相馬市には未だに起きているのが現実でした。
それでも諦めなければ必ず、今日のような日が訪れるものです。
今日、僕の母校である大野小学校の一年生たちが、相馬土垂の芋掘り体験に来てくれました。
7年前のあの日、この子たちは産まれていたんだろうか。
この子達は相馬の田んぼや畑に触れてこれたんだろうか。
色々な想いが込み上げるなか、僕の不安など何の問題にもならないほど子供たちは楽しそうに相馬土垂を掘り、袋に入れて持ち帰ってくれました。
子供たちに農業体験をさせることは、ずっと前からうちの農園でやっています。
でもそれは、相馬の農業に抵抗がない親御さんが体験に連れてきてくれることがほとんどです。
学校を交えて正式に子供たちみんなに農業体験をさせるのはこれが初めてです。
ましてやその体験が、相馬市の伝統野菜である『相馬土垂(そうまどだれ)』の芋掘り体験です。
ずっと頭の中に想い描いていたこの光景にたどり着くまで、本当に長かった。
でもたどり着けたら着けたで、なんだかあっという間だった気にもなりました。
今日は地元の新聞社である福島民報も福島民友もどちらも取材に来てくれて、相馬市の広報の記者さん、福島放送のテレビ局まで来てくれました。
他県からしたらただの芋掘り体験に過ぎないかもしれませんが、僕ら相馬市からすれば今日は本当にこの町が動いた一歩なんです。
いよいよ11月からは相馬市すべての学校給食にも相馬土垂が入ります。
あれから7年。
今はまだ何にもわからなくていい。
大きくなっても記憶の片隅でもいい。
二十歳を過ぎて、この町の居酒屋にでも入った時にふと、相馬土垂の文字を見つけて思わず注文してくれるくらいでいいんです。
相馬市中の子供たちがいつかそんな体験をしてくれる日まで、僕らはこれからもこの町で相馬土垂を守り続けます。
