喜界島を知っていますか?奄美群島のひとつの島です。
奄美群島で一番大きな島が奄美大島(そのまんま!)で、大島から飛行機で15分!
人口約7200人の島(鹿児島県大島郡喜界町)。
この島の経済を支える基幹作物は、私たちがいつも食べている砂糖の原料であるサトウキビ。約700戸の農家のほとんどが、サトウキビを栽培しています。
そこで今回取材したのは、玉岡裕敏(ひろとし)さん。
(プロフィール)
サトウキビ農家。高校卒業後、生まれ育った喜界島から大阪の専門学校に進学。その後、コンピューター関係の仕事に就く。13年間、大阪-東京の遠距離恋愛を実らせた結婚を機に、31歳で島へ戻る。11年間農協職員を務めながら、両親の畑を手伝う。そして農協職員退職。現在はサトウキビ専業農家。
2017年8・9月、喜界島では50年に1度という大雨が2ヶ月連続で降りました。
3日間で500ミリを超える雨量は、島の主な作物であるサトウキビに大きな被害を与えた…
と思っていたら、サトウキビはすくすくとまっすぐ育っていました。
案内してくれた玉岡裕敏(ひろとし)さんは、びっくりしている私に、
「喜界島はむかしから水害に強いといわれていて、実際に今回の大雨でも水が引くのがはやかった」
と教えて下さいました。
台風がよく来る南の島に適した作物が、強い風にも倒れないサトウキビだそうです。
島では、収穫量日本一の白ごまも栽培していますし、いろんな野菜もつくっていますが、自然の猛威に対して一番強いサトウキビ。
「でも今回は想定外だったな」
と裕敏さんはおっしゃいます。
「サトウキビは、葉っぱを伸ばして太陽の光をたくさん浴びて、茎に糖分を蓄えるんです。だから、風で葉っぱを折られてしまうと、糖度が上がらないんですよ」
糖度とは、甘さの指標のことで、通常であれば、毎年基準糖度である13度は、ほとんどの農家が超えます。糖度13度から下がるごとに、組合が買い取ってくれる金額も下がっていくから大変なんです。
増える農地
裕敏さんは、結婚を機に勤めていた大阪の会社を辞め、故郷喜界島に。農協の職員をしながらサトウキビ畑を継ぎました。
だんだん慣れてきたところで、転機が訪れます。
日本全国高齢化。喜界島も例外ではなく、農家さんたちは、どんどんご高齢になって畑で働くのが辛くなった。
裕敏さんは、親戚のサトウキビ畑の面倒もみるようになり、そうこうしているうちに、いろんな人たちから委託されるようになりました。
サトウキビ畑はどんどん拡大していきます。
「自分にとって、キビは生きるため。だから、増えても平気ですし、いずれは自分の代がくると思っていましたから。自分の植えたキビの成長を見守る楽しみだね。収穫量が増えたときの喜びもあるし、来年こそ、糖度を上げて太いキビを作りたい」
増える肩書
農地だけではなく、裕敏さんの肩書も増えていきました。
サトウキビ農家、元農協職員、集落の区長、農協の協力委員、糖業振興会、キビ部会代表、消防団副分団長
「なんでこんなに増えたんですか?」
とわたしが聞くと、
「ローテーションで、気づいたら役がどんどん回ってきたんだよ」
裕敏さんはゆかいそうに笑っていいました。
ファームステイも受け入れる
玉岡家は、ファームステイで2人を受け入れています。
ひとりは、栗野浩文さん。
自衛隊員として喜界島へ勤務していたころから、土日は玉岡家へファームステイ。
退官後、実家の農家を継ぐ。現在もサトウキビ収穫の繁忙期になると、玉岡家へファームステイでお手伝いにやってきます。
栗野浩文さんからみた、裕敏さんは?
「裕敏は、自然体で動じないですね。仕事に関して熱心で、計画性がある。明日は何をする、雨の日は何をするっていうのをちゃんと考えているなって感じます。あと、農業以外にも消防団副分団長など様々な肩書があって、組織に合わせて行動できる順応性も魅力ですね」
もうひとりは、濱田早紀さん、横浜に住む法政大学2年生。
去年、たまたまファームステイツアーでお世話になったのがきっかけで、島の暮らしに魅了され、今年もファームステイにきたリピーター。
裕敏さんの魅力は?
「赤の他人だった私にもすごく優しくて、気を遣わず接してくれることですね。驚くほどフレンドリーで、都会での生活のような建前だとか遠慮がいらずに生活できます」
濱田さんをインタビューしていると、裕敏さんがにこにこしてわたしたちの会話を聞いています。そして、玉岡さんはこうおっしゃいます。
「ファームステイはね、正直、負担もある(笑)。だけど、娘のような感じでいろいろ話を聞くのが楽しいし、彼女たちが学んで少しでも成長してくれるとうれしい。」
実は、来年の収穫に向けて、サトウキビの葉(はかま)を剥きやすい品種も植える予定だとか。
その理由は、
「ファームステイに来て初めてサトウキビの収穫体験をする子たちが、効率的に楽しく作業に取り組んで欲しいからね」
と、学生がファームステイに来るのを楽しみにしていらっしゃいました。
~編集後記~
サトウキビの収穫をお手伝いしたあと、妻・美智子さんの手料理をご馳走になりました。
▼ハマった!奄美群島の伝統料理『油そうめん』
油そうめんは、家庭によって味付けや汁の量、入っている具材が異なるそうです。
玉岡家では、汁の量を少なめにしているそうです。
▼粒味噌&炒り卵!おにぎり3個は食べられます。笑
「粒みそ」は、奄美群島の名産品で原料の大豆がそのまま入っていました!
酔った裕敏さんから、聞きました!
妻・美智子さんとの13年におよぶ遠距離恋愛時代(東京―大阪)、LINEのようなツールはなく、裕敏さんの仕事も忙しく連絡をとることが厳しかったそうです。だから、毎回別れ際に次に会う日を決めていたそうです!
結婚後も素敵な食卓を囲む玉岡夫妻の家で、ファームステイライフはいかがでしょうか。
<ご感想・ご連絡はこちらまで>
喜界島ファームステイ推進協議会 事務局
地域おこし協力隊 木下 敦博(きのした あつひろ)
✉ kikaijima.fsp@gmail.com
書き手:龍谷大学社会学部3年 東谷しおり