ここでは、ある農家さんがお金にならないキズモノ野菜=B品と格闘する姿が語られています。
その農家さんとは、震災後、福島に移住した小規模農家の紀陸洋平さんと聖子さん。
彼らは「震災で起きたことを自分のこととして考えたい」という理由で、10年以上住んだ群馬県から福島県に移住を決意し、貯金も機械も何もないまま農家生活をスタートさせました。
そんな小規模農家さんの、リアルな心の声を聞いてください。
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時間をお金に換算したら、畑に捨ててきちゃった方がいい。
畑に捨てればそれは土に還るからね、循環だ。
そりゃ、食べてもらうために育てたんだもん、食べてもらいたいけどさ。
趣味で農家してるんじゃない、家族がメシ食ってくんだ、時間に対して生み出すお金は大事な視点。
たいしてお金にならないキズモノ野菜をわざわざ収穫して
この程度ならお客様からお金をいただいても失礼じゃないかな、て選別して
ましてやなんでB品かって説明までつけて、いくらになるってんだ?
でも、小さな農家だからできること。
畑のリアルを伝えること。
農家のリアルを伝えること。
儲けがいくら、だけが仕事じゃない。
畑のリアルを伝えるのは、小さな農家だからこそできる仕事だ。
私たち小さな農家の社会に対する力なんて3歳児の鼻クソほどの大きさもないけれど、
社会に対してできる、大事な大事な私たちの仕事。
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彼岸花が田んぼのそこここで咲いている。
随分と日が短くなった。
彼岸である。
あぁ、死んだばあちゃんのおいなりさんがもう一度食べたい。
お墓参り行けないからさ、夢でいいから出てきて食べさせてよ。
ねぇ、ホントは聞こえてるんでしょ?
最近、母親をしていると
実は子である自分に、強く胸をつかまれる。
私は子であり孫なんだ。
心の中でつぶやく。
ごめんね、全然孝行してない。
言葉が見つからないまま涙だけが出てくる。
私は子どもなんだね。ずーっと。ずーっと。
彼岸花を見ながら、また泣いた。
(2017.9.24)