今季、海水温の上昇で前半の秋芽網期は海苔の不作が心配された有明海。
しかし、奇跡的な海水温の低下で冬からの冷凍網期は盛り返し、シーズンを通しては例年通りの海苔が収穫されたようです。
有明海に面する熊本県の松尾漁協で海苔の生産をおこなう牛島昭成さん(39)を編集部は訪ねました。
「海苔漁師同士の宴会で食べるタイムスの話がでるけんね〜。
幹弥(浦山幹弥さん)と藤川さん(藤川直樹さん)と俺が登録しとるけんかね。
どうやったら登録できるのか?ってよー聞かれるばい!」
−−−−−日本食べるタイムスに登録されている有明海近郊の海苔漁師は現在その3人。
「藤川さんは面白いね。よく『いいね』を押すよ。
海苔は、同じ海でやってるのに違う。不思議だもんねーあれ。隣同士であっても違うし。
例えば潮位も熊本と佐賀と福岡では違う。県によって、ここが0だよ*ってとこの線が違うんで、こないだどこが0なのかを巡って言い合いになった(笑)
網の高さをみんなで話しとるときに、基準が違うけんどっちが高いとか低いとか争いしとった!食べるタイムスは漁師が結構見とると思うけどな。最近、俺はネタがなくなってきよる。俺は“想い”で打つけんね」
*…潮位が0の地点を指す
−−−−−牛嶋さんの想いって?
「いろいろあるけど、海は国民みんなのものっていうのを生産者もわからんといかん。あとは海苔についてやっぱ多くの人に知ってほしい。海苔ってこういうふうにできてるんですとかね。あとは、朝ご飯に海苔ば食べて欲しいっていう思いがあるねー」
−−−−−松尾漁協で海苔づくりの継承はどうされているか?
「婿養子が継いだりはする。血縁関係が今のところ普通。けど、興味本位でよいから海苔に興味がある人は受け入れる体制ば作っていかなんって思うったいね。
俺が漁師始めて10年くらいで800件いた漁師の数が今は300件くらい。半分以下たい。それだけ生産者が減ってるてこと。だから海外からの海苔に頼るしかなくなってきているんだよね。
それが、未来の子どもたちのためにいいものかと言えば俺はハテナマーク。
”新規就農はあるけど新規就漁はない”
それが出来ればいいよねー」
−−−−−海苔漁師になるために必要な道具やかかる経費は?
「今は年配者で辞められた人の道具は余るから、それをうまく活用できたらいいんじゃないかと思うよ。新規に始めると、相当お金がかかるけん。
この機械1000万ですよ(笑)
そう簡単に手出せない出せない
嫁がびっくりするもん。サラリーマン感覚で育った環境とはあまりにも違うけんね。
自分でやってる仕事に“誇り”があるから、生きてる間に改善していきたいて思うよ。
45歳がピークだと思って今動き出しとる」
−−−−−−「海苔づくりは感覚が全てではない」試行錯誤の上、たどり着いた解決策とは?
「海苔作りは、悩むところが多すぎて解決するところにいかないんだけどね。
誰でも海苔がつくれるようにするために、収穫した海苔の乾燥法を全部データ化したったいね。ただデータ化したからだれでもいい海苔がつくれるわけではないんだけど、乾燥はベテランしかできないという概念があるけん、それをどうにかしたくて。
いきなりきたお嫁さんが乾燥が出来る仕組みをつくっておけば大丈夫たい!」
−−−−−−海苔や機械に詳しくなくても大丈夫なのか?
「男は嫁ば選ぶときに悩む
『こいつは海苔づくりができるかわからん』
絶対湿度とか相対湿度とか ちんぷんかんぷん たいね
うちの嫁もそうだった。
けど、いまはデータ化しとるけん『数字はいくついくつにして』って言えばできるとよ。
便利な世の中たいね」
−−−−−牛嶋さんは、同じ海苔漁師の方たちと地域を越えた交流もされています。最後に今後へかける想いとは?
「いま、実は全国の海苔漁師が繋がり始めとる。
若い漁師でも良い海苔がつくれる時代がきとるけんね。
日本の食をまもるために、これからも頑張っていきたいと思うよ」
【参考】
浦山幹弥さん https://taberutimes.com/posts/producer/urayamamikiya
藤川直樹さん https://taberutimes.com/posts/producer/fujikawanaoki
文:編集部 峯美紀子