料理人と農家の壁が崩れた日

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農家, 畜産農家 福島県相馬市

昨日は友人であり仙台で串焼き屋を営む鳥卓(とりたく)のオーナーが大人の食育に来てくれました。

料理人として、毎日鶏肉をお客さんに提供する者として、鶏をシメるところから体験したいとのことでした。

うちとしても、大人の食育を見てみたい方は言ってくださいとはよく言っているのですが、やりますと名乗りをあげてうちまで来たのは彼が初めてでした。

「鳴き声が泣き声に変わる」

とは以前私がやったときの体験談ですが、どうやら彼にもそう聞こえたらしく一瞬ためらっていましたので、僕だけの感覚ではなく本当にニワトリは捕まえられて外に連れて行かれるときに、これから命を奪われるということをわかるんだなと感じました。

 

01252016大野村農園① 01252016大野村農園② 01252016大野村農園③

 

今回もいつもと変わらず山へ連れていき、用意していたナタで命をもらう手順。

前回と違うのはナタを降り下ろすのは僕ではなくて、串焼き屋として毎日鶏肉を扱っていながら、命を終わらせるのは今日が初めてという彼自身。

ナタを降り下ろす前に、僕はしつこいくらいナタを当てる位置や、力をしっかり入れて下ろすことを説明しました。

不安や恐怖で力があまり入らないままナタを下ろせばニワトリが苦しむ。

綺麗事と言われるかもしれないけど、せめて楽に逝かせてやるのがやる側が守ることだと思う。

それでも初めてなものですから、結果として二回、三回とナタを降り下ろすことになりましたが、やはり料理人といったところか、恐怖心のようなものは僕が初めてやったときより断然克服していたようでした。

血抜きを山で済ませたら、わが家へ持って帰り台所の外で羽をむしりながらさばきに入ります。

01252016大野村農園④ 01252016大野村農園⑤

ここからは僕が習うくらいで、お見事な包丁さばきで部位ごとに分け、あれよあれよという間に串焼きの下準備が出来てしまった。

01252016大野村農園⑥

部位ごとに分けられたお肉を見て、さっきまで不安や恐怖を感じてたのが嘘のように、僕も彼も正直に「うまそう」という感情に変わっている。

01252016大野村農園⑦ 01252016大野村農園⑧

この日は妻ではなく料理人の彼に調理してもらい、皆で串焼きを食べました。

彼の「今日は来てよかった」の言葉に、僕としても料理人と養鶏農家との壁が崩れたような日になった気がして、開催してよかったと思えました。

今までずっと、生産者がどんな人物なのか、生産者の育てるニワトリはどんな肉なのかを表面しか知らずにいた料理人と、料理人はどんな人物なのか、料理人はどんな想いを持っているのかを表面しか知らずにいた生産者。

まだ肉や卵を直接取り引きした事はなかったけれど、改めて話し合いまして、来週から本格的にうちの卵をお店で使ってくださることも決まりました。

命を通じて、生産者や消費者が繋がり、料理人まで繋がってくる。

求めていた流れが、少しずつこの地でも生まれ始めていることを実感できる一日となりました。

(2016.1.25)


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