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農家・漁師紹介

山本 悟史・千内

広島県廿日市

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−−−−−「中岡農園」に込められた想い

中岡農園は、世界遺産に登録されている厳島神社や大聖院など寺社仏閣があり多くの観光客でにぎわう、広島県の宮島にあります。宮島は「神の島」と呼ばれ、古くから田畑を耕すということが禁じられてきました。しかし、戦後の食糧難の時代になって、島の史跡や原生林に影響を及ぼさない島の景観を損なわないことを条件に、島の一部の土地を開墾し田畑を耕すことが許されました。中岡農園のある大砂利地区は、当時開拓された土地のひとつです。1946年、江田島からこの地に来られた中岡實さん、スミエさんご夫婦が開墾し「中岡農園」は始まりました。「大砂利」という地名の通り、この辺りには今でも大きな岩がごろごろと転がっています。開拓当時は、掘っても掘っても岩ばかり出てきたそうです。石工だった中岡さんは出てきた岩を砕き、ひとつひとつ積み上げ、石垣をつくり、段々畑にしました。そこで季節の野菜を育て、山菜を採り、それらをリヤカーに乗せて、弥山を越えて宮島の町へ売りにいきました。肥料は町で集めた人糞を船に乗せて、肥え桶を担いで畑に運びました。(当時、大砂利までの道路は整備されておらず、移動手段は、船か、歩いて山越えをするかしかありませんでした。)加えて、中岡さんご夫婦は自給用で米も作っていました。当時も今も宮島で唯一の田んぼです。

實さんが60代で亡くなられた後、スミエさんは、しばらく一人で野菜を作っていましたが、ご高齢になったこともあり、十数年前に家を出て、現在は江田島で暮らしています。開拓当時のお話を伺ったとき、「あの頃は地獄じゃったよ。」と言って笑うスミエさんは、その言葉とは裏腹に表情はとても誇らしげで、生きる逞しさを感じました。

 2012年12月、縁あってこの地で農業を始めることになりました。美しい段々畑を残してくれた中岡さんに尊敬と感謝の気持ちを込めて、また中岡さんの開拓精神を私たちなりに受け継ぎ、育てていきたいという想いを込めて、農園を「中岡農園」と名付けました。

−−−−−山本 悟史(やまもとさとし)が「自然農」を始めた理由

私は、以前ホテルの仕事をしていましたが、リーマンショックをきっかけに、自分が経済に合わせて生きていることに気がつきました。このままでいいのか、何に合わせて生きていけばいいのか考えたときに、自然のリズムに合わせて生きていきたいと思うようになりました。では、自然のリズムに合わせて生きていくにはどんな仕事がいいのか探していると、農業が見つかり、ではどんな農業があるのか調べていたときに、「自然農」というやりかたを知りました。「自然農」は、草や虫と共生しながら野菜を育てていきます。この農業なら、自然に合わせた生き方ができるのではないかと思い、「自然農」で営農している福岡の松尾靖子さんの農園で一年間の研修をやらせていただくことになりました。広島に戻ってきて、有機農園と観光農園で修行して、2012年に中岡農園を妻と二人で開園しました。

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(写真:畑にきて間もない頃の様子)

−−−−−中岡農園が実践する「自然農」のい・ろ・は

「自然農」とは、奈良県桜井市の専業農家・川口由一さんが1970年代半ば頃から取り組み始めた「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」を基本とした農のあり方です。「自然農法」ではなく「自然農」と、あえて「法」という字が使われていないのは、自然農は方法論ではなくてあくまで一つの農のあり方だからです。実践する人によって捉え方もそれぞれ違い、方法も微妙に違います。 また自分たち家族が食べる分だけをつくる自給なのか、出荷を前提として多くの量をつくる営農なのかによっても多少の違いがでてきます。中岡農園は、自然農を基本に、宮島の自然に合った農のあり方を日々実践しています。

−−耕しません。

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中岡農園では、畑の土を耕しません。落ち葉や枯草、そこを住処や糧として生きる小動物や虫、その排泄物を食べて生きる微生物、それらが養分となって野菜は育ちます。誰も耕さなくても、農薬や肥料をやらなくても植物が健やかに成長している森の土がお手本です。人が耕さなくても、刈った草の朽ちた根から空気が入り、ミミズが土の中を這いまわって土を柔らかくふかふかにしてくれます。私たちにできることは、そうした生き物たちの営みをなるべく壊さないようにすることです。耕さない畑は、朽ちた命の重なりでできています。そのような多くの命を内包して育った野菜は、生命力に溢れています。  宮島は、古来、島そのものが御神体とされ、「耕してはならない」とされてきた神の島です。耕すという行為が、神様の体を傷つけることになると考えられたからです。耕さない農業は、そんな宮島にあった農の形であると考えます。

−−草を大切にしています。

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中岡農園では、農薬を使いません。肥料は、菜種油(遺伝子組み換えではない)の油粕のみ使用しています。刈った草も畑に敷いて野菜の養分とします。草は養分となるだけでなく、畑の上に敷くことで土が乾燥しにくくなり、保温効果が生まれます。野菜が草に負けず健康に育っていれば草は刈りません。野菜の周りに草があることで、風雨から守られ、暑さ寒さから守られます。また、野菜の代わりに草が虫の食糧になってくれるので、虫による被害が抑えられます。  私たちが農園に来た当初、畑は一面、人の背丈ほどもある蕨と、するどい刺のある野苺の木で覆われ、他の植物はほとんど生えていませんでした。一面を覆っていた蕨と野苺を刈ったことで、ずっと陰になっていた場所に日が射し、土の中で眠っていた種や、鳥が運んだ種が、少しづつ芽生え始めました。それでも草の種類はまだまだ多いとは言えません。草の種類が多様になれば、集まる虫も多様になり、バランスが生まれ、土は豊かになります。畑に地力がついてくれば、いずれは現在使っている油粕も必要ではなくなります。  宮島は、島全体が世界遺産となっている島です。厳島神社などの建造物だけでなく、その豊かな自然が世界遺産としての価値になっています。宮島には日本全体の約5分の1、広島全体の約2分の1の動植物が存在しているという報告があります。そんな豊かな自然に恵まれた宮島にある中岡農園の畑も、多種多様な生き物が集まる場になればいいと考えています。

−−手作業でやっています。

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中岡農園での農作業は、ほとんどが手作業です。鍬とスコップと草刈鎌があれば大抵のことはできます。耕さないので耕運機も要りません。畑作りの最初に、畝を立てる(種を播いたり苗を植えたりするために、土を盛り上げる)作業があります。鍬とスコップを使って畝を立てるのに、夫婦二人で丸1日以上かかります。機械を使えば、一人で数時間の仕事です。一見非効率に見えますが、一度畝を立ててしまえば、何年もそのまま使えるので、違う野菜を植える度に、耕したり畝を立て替えたりする必要はありません。また、宮島は、本土から海で隔てられた離島なので、物を運ぶのにフェリーに乗せなければなりません。機械の運搬費や時間、故障のリスクなどもあわせて考えると、約6反(約1,800坪)の広さの中岡農園の畑であれば、手作業の方が効率的であるとも言えます。

−−種にこだわります。

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中岡農園で育てる野菜の種の多くは、「固定種」を使っています。固定種は、何世代にも渡って人が作り続け、種を採り続けながら品種改良してきた野菜の種です。現在、流通している野菜の多くは、異なる性質の種を掛け合わせた「F1種」と呼ばれる種から作られています。F1種の種は、野菜の味や形が均一に揃う、成長が早く収穫量が多いなどの特徴があります。F1種に比べ固定種は、形が揃わないことが多く、成長はゆっくりで収穫量も多くはありませんが、風味が豊かで個性的な味がします。それから、F1種は基本的に一代限りで、同じ野菜を作るためには毎年新しい種で育てなければいけないのに対し、固定種は、代々育て続けられてきた種なので、自家採種をして親の性質を受け継いだ野菜を作ることができます。自家採種を毎年続けることで、その地域の気候や風土に野菜が適応し、その土地特有の野菜になっていきます。  宮島は、歴史と伝統が息づいた島です。ただ、神の島として耕してはいけなかったこの島の農業の歴史は浅く、宮島の伝統野菜と呼べる野菜は、今のところありません。固定種の種を蒔き、野菜を作り続け、種を採り続けることで、宮島の風土にあった宮島特有の野菜が生まれ、それが宮島の伝統野菜になっていくことを中岡農園は目指しています。

−−宮島の自然が育てています。

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中岡農園の日当たりの良い南向きの斜面の畑には、太陽の光が惜しみなく降り注がれます。瀬戸内海からのミネラル豊富な潮風を受け、弥山から流れる湧水は枯れることなく恵みを与えてくれます。花粉を運ぶ蜂、土を柔らかくするミミズ、草々やそこに集まる虫、それらを分解して肥やしにする目に見えない微生物たち、そして、野菜自身が本来持っている力で野菜は育ちます。人ができることは、成長しようとする野菜に、ほんの少し手を貸すだけです。中岡農園の野菜を育てるのは、私たち人間を含めたこの豊かな宮島の自然です。そのように育った野菜は、小ぶりですが、宮島の自然がしっかりつまった生命力に溢れた野菜になるのです。

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