人を巻き込まない町興し〜涙の竹灯篭

in 中部/編集部から/農家漁師にインタビュー/静岡
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農家 静岡県富士宮市芝川

風岡(かざおか)直宏さん

(風岡たけのこ園代表 静岡県芝川)
風岡さん1

風岡タイムス 12 月号

「人を巻き込まない町興し〜涙の竹灯篭」

ピンクタンクトップのたけのこ農家が、食べタイに再び!高齢化が進む地元を目の当たりにした風岡さんが、たった一人で挑んだ、前代未聞の「人を巻き込まない町興し」とは…? 前回の連載で呼びかけた、農家のお嫁さん募集の結果も発表します。

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「ヒロインはやってきたのか」

森山3
風岡さん、2015 年のお嫁さん募集の成果をズバリ教えてください。

風岡9
食べタイの記事を読んだ社会人の子と、大学生の女の子が遊びに来てくれたよ。

森山3
おめでとうございます!

風岡
二人とも、静岡の雄大な自然と、意外に常識人だった僕に驚いていたな(笑)。

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森山3
充実感が漂っていますねー!タンクトップを脱ぎ捨てて、外に遊びに出かけましたね?

風岡2
芝川に美女集結だよ。食べタイの連載があってから、会いに来てくれる人が増えたんだ。みんなもぜひ、気軽に足を運んでほしいな!いくら僕が「野生の武井壮」と呼ばれたって、いきなり取って食べたりはしないよ(笑)。さて来年、僕の隣にはどんな人がいるんだろう…。

森山3
風岡さん、こう見えて誠実な方ですからね。実際に会うまでは、にわかに信じがたいでしょうけど…。

風岡
僕は仕事にも女性にも一途だよ。
いつも地元芝川の後輩に言ってるんだ、「俺を見習え」って(笑)。

森山3
数十年後、芝川がどんな街になっているのか、今から楽しみですよ。

 

「たった一人で取り組んだ、1300 本の竹灯篭」

風岡
遊びに来てくれた女の子とは、静岡の色んなところに出かけたよ。東海道五十三次の舞台にもなった、海沿いに切り立つ「薩埵(さった)峠」。日本の滝百選にも選ばれている富士宮の「白糸の滝」。どちらも、うちから20km圏内にある名所さ。

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でもね、同じ静岡といっても、僕の地元芝川は周辺地域に比べて観光資源に乏しいんだ。数年前まで開催されていた芝川の夏の花火大会も、廃止になっちゃった。このままじゃ芝川は、どんどんさみしい街になっていくさ。

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森山3
僕は芝川、好きですよ。東京の夜空には、あれほどたくさんの星は見えないですから。

風岡6
そう言ってくれるのは嬉しいさ。ただ、前にも話した通り、芝川はじーちゃん、ばーちゃんばかり。農業人口もガクンと落ち込み、高齢化してる。かつて芝川には、たけのこだけで食べていける農家があったんだ。今じゃ、収穫量は全盛期の半分以下。質もかなり低下したね。

森山3
農業も含め、芝川の街から元気が失われてしまったんですね。

風岡
そこで、地元再興をかけて 3 年前にやったのが「竹灯篭」なんだ。

森山3
たけとうろう…?

風岡
竹って、5 年くらいたつとおじいちゃんおばあちゃんになって、たけのこを生みにくくなるから、伐採して捨ててしまうでよね。その捨てられる竹を、町興しのために有効活用できないかと考えたんだ。芝川の夏から花火が無くなってしまった。ならば、僕が花火を打ち上げようと。人の目を楽しませることをしようと思ったのさ。

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風岡3
そこで、1300 本の竹灯篭を用意しようと計画したんだ。竹に入れた切込みから灯りがもれる、お手製の竹灯篭だよ。山から竹を切り出すところから、模様を彫り込むまで準備作業はほぼ一人。おまけに 10 万円の予算も、全部持ち出し。もう、たまったもんじゃないよ(笑)。

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風岡
そのうち、地元の新聞もうちの取り組みに注目してくれるようになったさ。
こうして迎えた当日。駐車場から溢れんばかり、何百人ものお客さんが押し寄せてくれたんだ。

森山3
す、すごい!

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お客さんに火を灯してもらって、みんなで声をあわせてカウントダウン、そして一斉に照明を落とすと…。芝川の夜に、1300 個の光が浮かび上がるのさ。

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▲ 芝川に恵みを与えてくれる富士山を表現。風岡直宏改め、キャンドルナオ「広末涼子もびっくりの景色だよ!」

風岡
これだけ灯籠が集まると、神々しさがあるよね。仏像がずらーっと並んだ三十三間堂の美しさに似ていたよ。それにね、実は一番の感動はエンディングなんだ。開始から 2 時間ぐらいたつと、ひとつ、またひとつと、光が闇の中に溶けていく。それは、まるで人間の生命がポツポツ消えていくようだった。悲しい美しさが満ちていたよ。

森山3
風岡さん、そんな繊細な感覚を持っていたんですね(笑)。

風岡
終わってから 1 か月間くらい、目をつむれば光が瞬いていて。目の奥に感動が焼き付いて消えないんだ。「もう、いつ死んでもいい…」、トライアスロンでも味わったことがないほどの充実感があったさ。

森山3
地元の人の反応はどうでしたか?

風岡4
当日は見に来てくれたけど…。準備をしてる僕に、手を貸してくれる人は誰もいなかったさ。唯一手伝ってくれたのは、隣町の焼肉屋だけだった。

森山3
「フェラーリたけのこ屋が粋がってやがる」、そんな風に思われていたんでしょうかね?

風岡
あいつは目立ちたいだけだ、そうやって陰口を叩かれていたのかもしれないね。でもね、そんな生半可なモチベーションじゃ、あのイベントは絶対に成功させられないよ。身銭を切って、仕事の合間に数百時間かけて、だよ。それも全部芝川のためさ。正直、あまりの辛さに涙がこぼれる時もあった。もう一回あれをやれと言われたら、戦慄が走るね。

もちろん、やってみて良かったこともあるよ。人を感動させようと思って、精一杯働いた自分が一番感動してたってこと。それに、自分の限界へ挑戦できたこと。もしかしたら人間って、たまに全速力で飛ばすことがあってもいいのかもしれない。最高速度300km のフ ェラーリだって、普段ちんたら走っていたら、いざという時にエンジンが回らなくなるさ。出す機会がない能力は、無い能力とおんなじ。だからこそ、僕は自分を極限まで追い込んで良かったと思ってるよ。

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▲ 富士山の嶺から流れる「芝川」をデザインした竹灯篭。

森山3
あの風岡さん、左下のカラフルな灯籠は何をイメージしたんですか?

風岡8
「ディズニーランド」、というのが外向けの回答。ほんとのところは、「ラブホのネオン」だに(笑)。

森山3
せっかくの話が台無しです(笑)。

 

「バカと言われても、人の役に立ってればいい」

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森山3
普通、「町興し」といえば、色んな人を巻き込むもの、という印象があると思います。それに対して風岡さんは、あえて一人で挑んだわけですよね。

風岡
その通り。目立ちたがり屋、バカ、そんなことを言われたって、人の役に立ってるならいいじゃん。うちのお店にお客さんが集まれば、自然と芝川の街に人も流れるさ。

森山3
それが、風岡流の社会貢献なんですね。最後に、来年の目標を聞かせてください。

風岡2
小学生の子たちがうちにお店探険に来てね。僕を見ると、口々に「こないだテレビに出てた人だ」っていうんだ。テレビで芝川が特集されたとき、風岡たけのこ園が出たのをなんと 9 割くらいの子が見てたんだよね。もう、びっくりしたよ。
僕がテレビに出ることで、街にスポットが当たる。見られると変わってくるよね。人も、街も。これは、トライアスロン時代の経験からもいえるよ。「どうなるのかな、強くなれるのかな?」と不安だったあの頃の自分に、マスコミが当ててくれた光は、本当に大きなものだった。見られている意識が高まって練習にもすごく身が入ったし、自信も深まったよ。 僕は芝川を、そんな光で照らしたい。
さっきの子どもたちが「サインして」って、目をキラキラさせながら僕に寄ってくるんだ。 「家に帰ったら、お父さんお母さんに笑われるぞ」といって書いてあげるんだけど、そんな時に、ふと思うのさ。僕は、日本一の農家になる。そして、この街に光を当てよう。この子たちに、でっかい夢を背中で見せよう、ってね。
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森山3聞き手 : 森山健太(早稲田大学 3 年・NIPPON TABERU TIMES 編集部)

 

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☆ みなさんからのお悩み大募集!

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風岡2

雨が降らなきゃ虹は出ない No Rain, No Rainbow.」

これはトライアスロン時代に出会った言葉なんだ。人は苦しいときの生き様で、その人の価値が決まる。困難な時にこそ、その人の真の人間性が出るもんだよ。だからこそ、「雨」に打たれてるそのときの一挙手一投足が大切なんだ。雨上がりにかかる「虹」の色合いは深く、美しいぜ。

 

 


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