窒素飢餓は単なる貯金期間だ

in 「論」をよむ/九州/大分/生産の哲学
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農家 大分県由布市

久しぶりの新聞ネタです。

COP21関連で、農地の土壌に炭素を蓄えることで二酸化炭素の割合が減るのではという記事です。温暖化防止のために農業やってるわけではないけど、この「土壌中に炭素分を蓄える」という考え方はとても興味深いです。
慣行農業での「肥料」といえばまずは窒素分のことを指すのだけど(その他にもリン、カリウム、その他のにも品目によって必要な元素がいろいろあります)、この考え方にはなんかしっくりこないものがあります。「◯◯kgの野菜を作るには◯◯kgの窒素が必要」なのは確かなのだけど、土をただの培地として捉えるならば水耕栽培やった方がよほど良い気がするのです。
うちはあくまで土に種を蒔いて野菜を作っています。しかも必要な養分以外の、直接植物が吸収することのない(厳密に言うと違うのだけど)炭素分を多く含んだ堆肥や有機肥料を施しています。
窒素分など植物が吸収する元素は収穫物として畑から食卓に持ち出されるけど、かなりの量の炭素分が畑に残ります。この比較的炭素分が多く分解されにくい有機物を腐植と呼びます。
腐植は全く分解されないわけではなく、これもまた微生物によってゆっくりと分解されていきます。この働きのためにとても多くの微生物が活動することになります。土壌中の窒素分は増加した微生物の体として取り込まれているために植物が利用できなくなります。この状態を「窒素飢餓」と言うのだけど、県とか農協の指導員さん的には最悪の事態みたいです。

僕が目指してるのは「窒素飢餓の先」です。農業の教科書には窒素飢餓はダメ、ってことはよく書いてるけど、その後になにが起きるかは書いてなかったです。微生物の体内にあるので利用できない窒素分だけど、畑の外に流出してるわけではないので「微生物という形で土が蓄えている」って考えればどうでしょう?
窒素飢餓は単に貯金期間だと思うんです。
よほどの未分解の有機物を投入し続けるなんてことをしない限り(そんなこと実際やったら臭くて畑に入れないと思う)微生物の増加は収まるはずで、余った養分はきちんと植物に受け渡すラインができるはずだと思います。上手な有機農家の畑を見れば、じっさいにそうなってます。

温暖化に関係するレベルでとは言え、畑の炭素分の収支についてまだはっきりしてないってのは案外驚きでした。慣行の農地より炭素分に関しては負ける気がしないのだけど、農業に対する評価の基準として面白そうだなと、今後に期待です。

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ヒノキの防風林から降ってきた葉っぱ。立派な炭素分です!
うちの土には落ち葉、刈草、堆肥などいろんな炭素資材が入ってます。

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紫水菜ビフォー

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紫水菜アフター

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いきなり寒くなった初日は霜ではなく雪でした・・・

11201943_1040429545981579_8427281812809863143_nそして、きゃべつはいきなり凍った

(2015.12.3)

 


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