第2回 農業界の武井壮、たけのこを語る

in 編集部から/農家漁師にインタビュー/静岡
この記事の書き手

風岡(かざおか)直宏さん

(風岡たけのこ園代表 静岡県芝川)
風岡さん1

第2回 農業界の武井壮、たけのこを語る

連載シリーズ第2回は、伝説の農家風岡さんに「たけのこ」を思う存分語ってもらいます。「世界一受けたいたけのこの授業」、ここに開講です!!

_____

「いいのか?たけのこを話すと止まんねえぜ?」

IMG_2395

森山3
風岡さん!どうしたんですか!

風岡
見りゃわかるら、イノシシだよ。
西郷隆盛が忠犬ハチ公を連れてるみたいで面白いら?(笑)

イノシシはね、たけのこを食べちゃうんだ。たけのこ農家にとっては天敵だよね。だから僕らたけのこ農家は、命がけで野生のイノシシと格闘しなけりゃいけない時がある。

それにあいつら、グルメなんだよ。たけのこの根元の部分しか食べないのさ。わざわざ硬い鼻で土をほじって食べちゃう。実は、たけのこって根元の部位が一番おいしいのさ。

森山3
へ~!知らなかった!

aa

風岡
まずさ、みんな、 たけのこの「アク抜き」ってやったことある?そもそも、何でアクを抜くのか知ってる?

アクを抜かないと、えぐいからですよね。普通は、アク抜きのために鷹の爪とか米ぬかを入れてゆでます。だけどね、内房(うつぶさ。編集部注*1)のたけのこってのは、水からゆでていいんすよ。鷹の爪も米ぬかもいらない。アクが少ないのよ。

無題

森山3
どうして内房のたけのこはアクが少ないんですか?

風岡
アクが少ないってのは土質で決まるんすよ。内房は赤粘土。富士川っていう川があるんですけど、そこを境に赤粘土質、黒土質と分かれてる。内房の土質がたけのこの栽培に適しているのさ。

風岡さん_7995
▲風岡さんの地元を流れる富士川(向かって奥)。この写真では、川の向こうの土質が赤粘土。

 

「江戸時代から続く、芝川のたけのこづくり」

無題a

風岡3
僕の地元、芝川は中山間地といって、沢や川が多いのね。昔は雨が降ると、今みたいに堰堤がないもんで、土砂災害が多かった。それで江戸時代に、伊豆の役人(編集部注*2)が農産物推奨と、土砂災害防止のために植えたのが、たけのこだったのね。竹は繁殖力が強くてすぐ増える。おまけに根っこが横に張るもんですから地面が頑丈になる。「地震が起きたら竹やぶに逃げ込め」とか聞いたことある?竹は根っこ同士がつながっているから、地崩れがしにくいの。これが、芝川のたけのこの歴史よ。
そんで、赤粘土の土地質がたけのこと相性バッチリだったもんで、芝川の名産品になっていったというわけ。

風岡さん_1266
 ▲芝川にかつて存在したたけのこの缶詰工場(「目でみる 芝川の歴史」緑星社より)

風岡2
その後、だんだん農家も増えてきて、昭和40年代にたけのこ缶詰工場があったのがピークで。だけどそのころ、中国産たけのこが台頭してきまして。結局、缶詰工場は閉鎖になったの。

で、その当時熱入れてやっていた人が、現在高齢になっている、というのが今の芝川。「たけのこ掘り名人」っておじいさんのイメージがありますけど、労働的には間違いなく若者の労働なんですよ。何がきついかって、毎日掘らないといけない。一日経つと竹は伸びますんで。たけのこのためにも、僕は身体をガッツリ鍛えてるのさ。

風岡さん_7209

風岡3
最初出たときのたけのこや、地面の中のたけのこって、白だったりやや黄色味を帯びてるんですよ。それが空気に触れますと  青みがかかります。その青みが、えぐみ・硬さなんですよ。だから、なるべく空気に触れないほうがいいですよ。赤粘土のよさは、土中で空気に触れる割合が少ないということなんですね。で、これがその赤粘土ね。

無題

風岡5
ちなみに僕、土を食べたことがあるよ、黒土と赤粘土の両方。

森山3
えっ!

風岡
すると、黒土は苦いんです、赤粘土は苦くない。黒土は落花生とかに合ってるんすよ。その作物に適する土ってのがあるんですよ。

森山3
内房の赤粘土が、たけのこの味にもすごく影響を与えてるってことですね?

風岡5
そうそう。だから僕のことネットで見た人は、山を整備すればお金儲けできると思うかもしれないけど、僕の味にはならない。

森山3
土質にプラス、土の手入れもしてますか?

風岡
もちろん。肥料は年に5回。僕のところで使ってるのは、自然素材を中心としたオリジナルブレンドの肥料。肥料代は年間30万円もかかるよ。

でも、肥料をやってるのとやってないのって言ったら、たけのこの味にも格差があります。甘さが全然違うし、身がふっくらするんですよ。普通のたけのこが筋っぽいのに対して、肥料入りは柔らかさが出る。一般的には肥料をやると収穫量が増えるだけと思われてますけど、味も全然変わるんですね。

 

「気づいたら、まわりはじーさん、ばーさんばかり…」

森山3
内房地域にはたけのこにマッチする赤粘土の土質があるのに、絶賛活躍中のたけのこ農家は、どうして風岡さんだけなのでしょうか?

風岡
さっきも触れたとおり、まわりがじーさん、ばーさんばっかりなのさ。肉体がきついのもあるし、事業に対してハングリーってわけでもないしょ?だからみんな、普通に農協に卸して暮らしてる。僕は農協には卸さない直売スタイルで、肉体にも相当な負荷をかけて利益を上げてるから正反対だに。

無題a
▲訪れた日、風岡さんの山の手入れに同行させてもらい撮影。手にしているのは草刈り機。

風岡
うちの山の斜面は、スキー場の上級者コース。それぐらい勾配がきついさ。
ここに、年5回肥料をまくのね。

森山3
足場が泥でぬかるんでいたので、数歩歩いただけでこけそうになりました。
こんな中での肥料まきや草刈りは大変でしょうね…

風岡
普通の竹やぶって、日が差し込まないもんで、あまり草生えないんすよ。だけど僕の竹やぶは、味を良くするため、あえて透かしてるから日が差し込むのね。その上、肥料もやる。するとね、雑草がぼくの背ぐらいまで伸びるんすよ。ほんとにびっくりするぐらい。もはや武井壮を超えて、ランボーだよ。

(連載シリーズ③ http://taberutimes.com/posts/5337 に続く)

(編集部注)
*1.「内房」:風岡さんの地元、芝川の地区名。富士川をはさんで、赤粘土の地質、黒土の地質に分かれている。そのうち、赤粘土の地質のほうが内房地区である。
*2.「伊豆の役人」:江戸時代文久年間に、伊豆代官手代だった山崎善兵衛を指す。彼が親竹3本を移植したことで、芝川のたけのこの歴史が始まったと伝えられている。

森山3
聞き手:森山健太(早稲田大学3年・NIPPON TABERU TIMES編集部)

 

<風岡さん連載シリーズ 一覧>

第1回 「たけのこを1億円掘った男」
http://taberutimes.com/posts/4030
第2回 「農業界の武井壮、たけのこを語る」
第3回 「日本初!幻の白子たけのこの量産に成功したさ」
http://taberutimes.com/posts/5337
第4回 「男の血が湧き立つ!たけのこづくりは、エキサイティングな天職」
http://taberutimes.com/posts/5413
第5回 「超アナログ商法!僕がお客さんの心をがっちりつかむ秘訣」
http://taberutimes.com/posts/5428
最終回 「時代は低燃費系男子?僕はフェラーリ系男子だよ」
http://taberutimes.com/posts/5746

 

無題

風岡2「仕事に生きる男の障害になるのは、断言する、プライベートだ。」

仕事人ってのは、プライベートから身を崩していくもんだよね。だから不倫なんて絶対しちゃダメさ。それなら風俗に行くほうがマシだよ! ……ん、僕? 僕は、誠実の鑑みたいな男さ。

 


➤この農家・漁師のプロフィールを見る
農家 静岡県富士宮市芝川