平良木亨さん(秋田県横手市)に聞く③:パティシエの“おかかえ農家”になる!

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11800756_852890028125369_32768720_o話=平良木 亨さん(秋田県横手市)

 

仲間といっしょに
花火を打上げる

今、横手でクッキングアップル(調理用りんご)をやっている仲間は3人です。ひとりは佐藤和也くん(http://taberutimes.com/posts/producer/satokazuya)。あともう一人、俺よりもうちょっと若い生産者で、りんご専門でやっている人がいます。彼も、農協出荷だけしていたのが、高橋基さんのところに出荷するようになってからいろいろ考えるようになったらしくて。今、「紅の夢」のほかに「ジェネバ」もやっていて、「ブラムリー」もつくり始めたいと言っています。

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(実がなるようになって2年目を迎えている、ひららぎ果樹園の「ジェネバ」)

 

何で自分ひとりでやらないのか? ひとりだったら、つくる量に限界があるというのもそうだし、何だろうなあ、自分ばかり儲かったっておもしろくない、さびしいものがあるじゃないですか。仲間といっしょになってやって、花火を打ち上げて、みんなでそれを「ああきれいだなあ」って見上げるようなやり方のほうが、俺はうまくいくと思っている。仲間がいるからできると思う。

 

大産地には名前では勝てないですから、こまごまとやっていく外ないんだけれど、ひとりでは、作戦を立てるにしても数は打てないじゃないですか。俺ひとりでどこかに行って学んでくるのには限界があるけれど、3人集まれば、共有できるものがずっと増える。

 

でも、年いってる人には理解してもらえないです(笑)。加工するりんごといったら、一番下のランク、はじいた「裾もの」を使ってもらうというイメージがついちゃっているから。俺自身、就農した当時はそう思っていました。行政の人たちからも、今はまだ理解してもらいにくいだろうと思っています。

 

枝が出れば高校生。
花芽がついたら20歳

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このブラムリーの樹は、今年一年でここまで伸びました。来年の春になると枝が出て、初めて花芽がつく。その次の年に、ようやく実がなるんです。つまり、今はまだ赤ちゃん。いや小学生くらいかなあ。どんどん伸びてもらう時期です。来年初めて枝が出れば、高校生くらい。花芽がついたことが確認できたら、20歳かなあ。そんな風に、実がなるまでに最短で3年、本格的に実をとれるようになるまでには4年、5年かけて育てます。

 

そうやって5年、10年と手をかけてやって、育っていくところを見ているのが、果樹栽培のおもしろさなんだと思う。他の農産物とはスピード感が違いますからね、業者さんと話をしていると、たまに噛み合ないなあということがあります。行政の人も、やっぱりスピード感を求める。担当部署ががだいたい3年周期で変わっていきますから、その期間内に結果を出したいということなんだろうと思うんです。でも、俺らのスピードとは合わない。このスピード感は、果樹農家同士であれば共有できるものなんですけれどね。伝わりづらいのはしょうがないけれど、ちゃんとしたものをつくっていくためには、4年、5年は待たないと。だから、今は行政の力を借りずに、自分たちの力でやっています。

 

「おかかえ農家」に
なっていけたら

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(平良木さんが育てた昨年の「紅の夢」の切り口。写真提供:デリカテッセン紅玉)

 

このあいだ、基さんから「今年は、紅の夢を300キロ以上は欲しい」といわれました。もうオーダーが入っていて、確実に売れるはずだと。基さんは、これまでがんばって色んなところで「クッキングアップル」というものを打ち出してきてくれた。その成果が出始めていると感じています。

 

基さんとは、ここ何年か「ふじ」と「紅の夢」をそれぞれコンポートにして関西方面に販売するということにトライしてきたんですが、これの評判がよかった。今年は本格的にいきます。関西には、うちらのりんごをパティシエの人たちに紹介してくれているスイーツコーディネーターの方もいます。いわゆる橋渡し役ですけれど、ただのメール上のやりとりで右から左に流すんじゃなくて、実際に横手まで来て、「見たものを伝えるから」といってやってくれている。生産者が出向いていくことはなかなか難しいですから、ありがたいことです。おかげで、いつか自分の方から訪ねていこうとも思える。うちのりんごを使ってくれている人たちと顔と顔でつながったら、互いの親近感が違ってくると思う。

 

今の夢は、横手のクッキングアップルが、お菓子をつくる人たちの話のひとはしにぽろっと出るようなりんごに育っていくこと。

「うちのこのりんご、横手から買っているんだけれど知らないの?」

みたいに(笑)、人づてに広がっていったら楽しい。数年前、横手の果樹農家仲間が始めた「農楽交(のうがっこう)」というプロジェクトでは、「食べる人たちにとっての“行つけの農家”になる」ことをテーマに、食べる人たちといっしょになって交流や勉強をしています。同じように、俺ら横手のクッキングアップル生産者が、パティシエさんたちにとっての“おかかえ農家”になるような流れになったら、それもまたおもしろいなあと思っているんです。(おわり)

 

・第1回はこちら①「秋田からクッキングアップル!?」http://taberutimes.com/posts/4110
・第2回はこちら②「あの雪害があって、今がある」http://taberutimes.com/posts/4129
聞き手:保田さえ子(NIPPON TABERU TIMES副編集長)


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農家 秋田県横手市