【編集部の夏休み12】農業の課題を農家から学ぶ!大学を飛び出して、1ヶ月間旅に出てきた!

in ピックアップ/編集部から
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8/22〜9/21の一ヶ月にわたる旅「Full Bag Tour」は、多くの方のご支援のおかげもあり、無事に終了しました。

農家さん・漁師さんのもとを訪ね歩き、ともに汗を流し、ともに時を過ごした相棒と、一ヶ月間の旅を振り返りました。

まず、

末永 玲於

から。

僕の主な目的は、長期的に、より良い農業流通を考えて行くために、現場に行って勉強することでした。また、「旅〜イベント」という一連の過程を通して、“現場に行って、魅力を発見し、それを消費者に伝える“という農業流通の一部分を短期間で経験することも考えていました。そのような思いを持って臨んだ一ヶ月間で、自分が何を学び、どのように考え、そして変わったのか3つのテーマにまとめて綴って行きます。

1、農業流通について

僕は各場所で「流通経路」「金銭的・時間的コスト」「その背後にある戦略」「望ましい物流」等の流通に関する質問を多く投げかけました。その中で得られた問題意識・体験知が2つあります。一つは物流コストが上がり続けて行く現状です。どの生産者(特にB2Cを主な流通手段とする生産者)にとっても大きな足かせとなっていました。その一方でドローンや自動運転といったテクノロジーによって圧倒的な価格破壊をしてくれることへの期待は高かったです。それらの技術はコスト高の農業物流業界にとってかなりのインパクトを持って業界を一新していくと思われます。テクノロジーの発展に必ず目を向けていかなければいけないと感じました。もう一つは、プライスメーカーになることの重要性です。今回伺った農業者の中で、大規模生産によってロットを揃え価格決定権を持つ方、ブランディングにより安定価格を維持する方、完全契約栽培によるマーケットインによって価格を維持する方に出会いました。彼らに共通する点は、プライスメーカーであり経営が安定している点です。農業流通の面から逆に言えば、農業者をプライステーカーからプライスメーカーにさせることができれば、そこに価値が発生するのだろうと思いました。

2、農業生産について

まず第一に思ったのは、一括りに「農家」と言っても全く同じ経営体の農家は存在しないということでした。農家の数だけやり方・思いがあるのだと切に感じる一ヶ月となりました。経営面ではそれぞれコストの割き方や経営状況、生産規模が違っていて、それが明確に強みや弱みに表れていました。また農業者同士が相互補完的な関係で、強みを足し合わせればメリットがあるのではないかという場合でも、情報のギャップやその他の要因で連携が取れていないのではないかという感覚を持ちました。その乖離の原因や解決策は何かも考えていこうと思います。

また、一般的に共通している課題も見えてきました。担い手不足、価格決定権の不在、天候等のリスク、生産要素・流通・人件費などのコスト高による利益率の低さなど、問題は山積していることを改めて認識しました。だからこそそれらの課題に向き合って、解決策を示せるサービスは価値があるのだということも感じました。

3、農業の価値について

「農業の価値とはなんなのだろうか?」この問いは今も考え続け、解が出ないものです。ただ、この旅を通して視野が開けました。以前は、農業の価値は人の胃袋と心を満たし人々の幸せに貢献するものなのだろうなと漠然と考えていました。しかし、この旅を通して「心を満たす」の部分がより鮮明になったように思います。それは農業にある貨幣価値に換算できない価値の体系です。生産者とともに汗を流し頂いた野菜は別格に美味しいですし、農業者の中には地域と良好な関係(贈与の体系)を気づきあげていらっしゃる様子も拝見しました。加えて、食・農を通して感じられる人々との有機的な結びつきには、「地方社会のあたたかさ」や「互酬性」と呼ばれるものも感じました。つまり、農村経済を支える価値基盤として、資本主義的な価値観以外の価値体系が確実に存在するということを感じました。

まだ具体的には言語化できていませんが、これらを突き詰めていった先には、市場経済の外側にある農業の価値を社会に問えるのではないかといった期待感が感じられました。

―総括―

「百聞は一見にしかず」とは言いますが、それを実感する旅でした。今までは「〇〇らしい」だった情報が、自分で足を運んで見て触れて話して一緒にすることによって「〇〇だ」に変わりました。自分の中の一番の変化はまさにそこにあると思います。旅の主眼が現場を勉強することであるのなら、達成されたように思います。もちろんこれからも勉強は続きますが、価値観を広げる面でも、殻を破る意味でも良い一歩となりました。

また、農業は確かに課題が多く難しいフィールドだと思いますが、それ故の解決した時のインパクトの大きさや資本主義的な価値観以外の価値体系の存在などを考慮にいれると大変魅力的な産業には変わりないなというのが正直な印象です。今後もインプットとアウトプットを繰り返し、農業界に関わらせていただきたいなと思った一ヶ月間でした。

・・・

続いて

山坂 千晴

のレポート。

今回の旅における私個人の目標は、「現在の農業界における課題を知り、その解決策を模索すること」でした。

旅を振り返って、まず最初に思い浮かぶことは、「農業形態が本当に多種多様であること」でした。農業界には様々な課題がありますが、一人ひとりの農家さんが抱える課題も多種多様です。一人ひとりの病状によって違う薬が処方されるように、一人ひとりの農家さんによって、現状の課題に対する解決策も異なると感じました。

そして、農業界にどのような問題があれど、解決策は農家さんとともに模索し、構築していかなければならないと、改めて感じさせられました。現在の農業界の課題の多くが現場レベルでの課題であることに加えて、農家さんとともに課題を解決することがより価値が高いと感じられるからです。

旅を行う中で、ほぼ全ての農家さんから伺えたことがあります。それは、「輸送コストの上昇」という課題でした。農家さんの中には、農協への系統出荷を行うのではなく、農家さん独自で販路をつける直接販売を行いたいと考えている方が少なからずいます。その場合、顧客からの注文に対して、農家さんの方で袋詰めや発送を行う必要があります。現在、ゆうパックやヤマト運輸などの輸送費が上昇しているため、輸送費を商品の値段にのせる必要があります。これでは、消費者側も手を出しにくい商品になってしまいます。顔の見える野菜や、農家さんの対面販売のニーズが高まっている今、「輸送コストをいかにして削減するか」考えなければならないのです。

もう一つ、「新規参入しにくい業界であること」も強烈に印象づけられました。農機一台の値段や、生産にかかる経費などを具体的な数字をもって教えていただけたため、新規参入のリアルを知ることができたと感じています。日本の農業、日本人の食生活を維持していくためには、農家さんを含めた生産者の減少を少しでも食い止める必要があります。農機シェアや、新規就農者への整備された土地の譲渡など、就農のハードルを下げるような仕組みづくりが必要です。

今回の旅を通して、農業の現場を肌で感じ、農家さんが実際に必要としていること、困っていることの数々に出会いました。今回の旅の中で出会った農業の課題は、数え上げるとキリがありません。

その中で、あまり重要視されていないと考えられる課題の一つに、「農作業以外に手が回らないこと」が挙げられると感じました。農業形態にもよるとは思いますが、多くの農業者は、農作業に追われる毎日を過ごしており、家事や子育てに十分な時間を裂けていないという事実が浮かび上がってきました。炊事をする時間がないため、コンビニ弁当で夕食を済ませてしまったり、引っ越し後の整理がついておらず、部屋にダンボールが散らかっていたり。農繁期が長いわけではないとはいえ、農家の生活が依然として低い水準で推移している現状が露呈していました。

このような状況では、農業のイメージが向上するわけもなく、農業界に入りたいと積極的に考える人が増えるようには思えません。まずは、農家さんや農業者の生活水準を上げる必要があると感じました。新規就農者への補助金云々のハード面だけでなく、ソフト面にも目を向ける必要があることに気づかされました。

今回の旅、Full Bag Tour ver.1の目標である「現在の農業界における課題を知り、その解決策を模索すること」 は、達成されたと思います。農家さんの日常の生活に触れ、細かい数字などを教えていただきながら、突っ込んだ議論をすることができました。教科書的な学びが、実践的な学びへと変化し、これからの農業界を構想していく上で、その種となる経験を得ることができたと感じています。

今後も、農家さんのもとへと足を運び、学び続けていきます。そして、農業界で貢献できるよう、精進してまいります。

・・・

今回の旅でお世話になった農家さん、漁師さん。支援してくださった協賛企業の方々。そして、この記事を読んでくださっている読者の方々。

この場を借りて、すべての方に、感謝申し上げます。

私たち二人は、これからも突き進んでいきます。



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