【編集部の夏休み08】福島県矢祭町特集 ~人口5800人の町はこれからどこに向かうのか~

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一ヶ月にわたる農家旅・Full Bag Tourを敢行中の二人から、特別編が届きました!

9月4日(水)〜6日(金) 福島県矢祭町

今回の記事は僕たちが福島県矢祭町で経験した3日間の軌跡をたどる。矢祭町はかつて蒟蒻の町として栄えたところ。価格の下落によって蒟蒻農家は激減し、今では新たにゆずと鮎の町として再起を図る。農業を基幹産業とする矢祭町。矢祭に住む人々はどのように生きているのか、そしてこれから矢祭の農業はどうなっていくのだろうか。

片野恵仁さん

今回の矢祭滞在では宿を貸して頂き、お世話になった片野恵仁(かたのけいじん)さん。片野さんは里山復活プロジェクトである「来る里(くるり)」の代表や、在来蒟蒻の復活や育種を行なっていらっしゃる方。片野さんを中心に矢祭の歴史や在来蒟蒻のお話を伺った。

かつては「蒟蒻で御殿が建つ」と言われたほど蒟蒻で潤った矢祭町。しかし輸入物や病気に強い上に栽培期間の短い品種の登場によって矢祭の蒟蒻は衰退したそう。ただ味や香りは間違いなく美味しいと評価が高い在来蒟蒻。片野さんら地元の人々は在来の蒟蒻を守っていくために栽培を続けている。今では「幻の蒟蒻」として高値でごく一部に流通しているそうだ。

在来蒟蒻芋の畑

今回はその貴重な在来蒟蒻芋を使って蒟蒻を実際に作らせてもらった。蒟蒻芋からとれるマンナンと呼ばれるデンプンを用いて普段食べている蒟蒻が作られる。片野さんの蒟蒻は絶品。キラリと光る澄んだ白の蒟蒻は宝石のようだった。安定供給・大量消費の時代の中で取り残されてしまったもの。地方に眠っている宝物は、きっと地域の数と同じ分だけたくさんあるのだろう。

在来蒟蒻を使って蒟蒻を作る様子

続いてのお話はゆず。新たな産業として立ち上がったゆずだが、苦戦が続くようだ。

柚子組合・組合長の緑川さん
ゆず生産者の鈴木さん

蒟蒻産業の衰退後、新たな作物として栽培が開始された柚子。一時は青森を中心に相当数の出荷をしていた。しかし、東日本大震災の後、販路が一切消えてしまったという。今では出荷量は回復してきてはいるものの依然として風評被害は残るという。「基準値をクリアしていてもなかなか福島のゆずというとね、、、」と語るのは、柚子組合・組合長を務められる緑川博之(みどりかわひろゆき)さん。3.11は今なお矢祭町に爪痕を残している。

加えて、「今年は裏年だから収量が去年の5分の1だ。」とため息をつく鈴木つね子(すずきつねこ)さん。矢祭のゆず農家にとっては厳しい1年になりそうだ。

青ゆず 10月から11月にかけて黄色くなる

また後継者の問題も深刻だ。ゆずの木を管理する世代の高齢化が進んでいる。「きっと自分の世代でゆず農家は終わりだ。」そう語る生産者は少なくない。緑川さんも「ゆず生産に参入してもらうためには、産業としての魅力がないとね。」と後継者確保の難しさを吐露する。多少の差異はあれ、それぞれの地域が抱える問題に違いない。どのように地場産業である農業を守っていくのか。どの地方にも突きつけられている課題だ。

花卉類の育種の様子
(有)矢祭園芸
堆肥づくりの現場
(株)辰巳屋

この3日間で、蒟蒻とゆずの他にも数多くの方にお世話になり、いろいろな勉強をさせていただいた。農業生産法人(有)甚右衛門の高信甚一郎(たかのぶじんいちろう)さん、並びに農業法人でんぱたの鈴木正美(すずきまさみ)さんはいち早く法人化に乗り出し、矢祭の農業を支えている。高信さんは種苗会社とタッグを組んだカラートマトや、ひょうたんの生産などニッチトップ戦略を。鈴木さんは矢祭町独自ブランドのコメや野菜などを、委託販売を受けながら独自の出荷ルートで販売する戦略を。このようにお二人ともそれぞれ思いを持って特徴のある経営をし、次世代の矢祭の農業が生き残るための道を模索されていた。

ひょうたん畑を案内して下さった高信さん
地元を案内していただいた鈴木さん

これからの農業が、地方がどうなっていくのか、そしてどうしていくべきなのか、確たる結論はでなかった。伝統を継承していくあり方。法人化し新しい道を探るあり方。自分に合うやり方でそれぞれが地元のために何かしようと行動している。どっちが良くて悪いということはない。矢祭町の人々はそれを知っている。だから彼らの間には、おのずから温かい連帯感ができている。3日間を通して、その温かさが伝わった。とても刺激に満ちて勉強になった一方で、居心地の良い時間だった。

−−福島県矢祭町が気になった方はこちらから↓↓↓−−

矢祭町HP http://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/

片野さん始め矢祭の農泊 https://nohaku.net/council/council-818/

矢祭園芸さん http://ysflower.jp/

矢祭町のゆずhttp://www.town.yamatsuri.fukushima.jp/page/page000101.html

甚右衛門さん http://cucinaitalia.jp/exhibitor/jinemon/

でんぱたさん http://denpata.com/

書き手:末永 玲於

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