美味しさの決め手は“一人称”~僕が直売にこだわる理由 前編~【米農家とファンづくりの話をしようvol.1】

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食べタイの中でも人気企画となっている「ハマダ食堂」

2016/9/12 ハマダ食堂NO.457より

当連載【米農家とファンづくりの話をしよう】では、「ハマダ食堂」を発信している富山県黒部の専業米農家「濱田ファーム」に訪れて聞いてきた、ファンづくりの極意に迫っていきます。

 

濱田ファームは代表の濱田智和さん(47歳)と、奥様の濱田律子さん(46歳)が、米作りから直売までを自らの手で行っています。

「僕がつくったお米なんです」

これが、直売の際の決まり文句だと話す智和さん。

 

連載第1回目は、そんな彼らの直売へのこだわりを前編、後編にわたってお届けします!

 

 聞き手:土谷奈々(早稲田大学院1年)

とにかく自然体

濱田ファームに到着、律子さんがご自宅へ案内してくれました。

濱田ファームは1階が事務所で、律子さんの作業スペースになっており、2階にご自宅があります。

早速ご自宅へお邪魔すると、智和さん、娘のここちゃん、律子さんのカナダ時代のご友人が昼食の用意をしてくれていました。(律子さんのカナダ時代のお話は今後の連載で!)

「適当に座って~」

律子さんにそう言われて、和やかな雰囲気の食卓に混ぜてもらいます。

テーブルにはきらっきらの海の幸が並べられていました。今日は手巻き寿司です。

これが噂のハマダ食堂かと、ウキウキ。

 

律子さん:「私ビール飲んじゃおうかなぁ。いい?」

智和さん:「いいよ。俺が運転すればいいから」

律子さん:「わーい!奈々ちゃんもいかが?」

土谷:「いいんですか…!」

律子さん:「もちろん(にっこり)」

楽しそうにビールをグラスに注いでくれる律子さん。

出会ってまだ30分ほどしか経っていないのに、緊張がすっかりほぐれていました。

「好きなだけ食べてね」

気を遣い合うことなく、思い思いに手巻き寿司をぱくぱく。

とても居心地のいい空間。

彼らはつねに自然体で、飾らない。

この自然体な人柄は、きっと彼らの米作りスタイルにもあらわれているはず…!

 

「電話が得意なんだよ。特にお母さんとか(笑)」

濱田ファームは直売と通販、年5回のマルシェを通じてお客さんにお米を届けています。

その中でも、電話やFAX、メールなどで直接注文を受ける直売が基本です。

米作りを始めた当初は、近所の家を回って、ひたすら売り歩いたという智和さん。

それが今の、直売のルーツとなっています。

智和さん:小さいお米のサンプルとチラシをもって、ピンポンしに行ったりしていたこともあったな。

300グラム位のお米をジップロックに入れて、2人で雪の中を売り歩くの。この辺は農家ばかりだけど、そうじゃない団地に行ってピンポンして、「今年から農家始めた濱田ですけど」って。そして、サンプルを渡して「よかったら食べてみてください」って感じで。

ここは石田っていう地区で、石田小学校がある校区を2年間かけて回ったんだけど、これがすっごい嫌で。もう思い出したくないくらい嫌だった。

土谷:やっぱり嫌ですよね…でも何でできるんですか?嫌なのに。

智和さん:売りたかったんだよね。自分たちの米を、どうにかして。そうしないと食べていけないというのもあるけど、やっぱり売ってみたかった。

土谷:そういうところから始まるんですね。作るだけではなくて、売ることもしなくちゃいけない。

智和さん:基本的には農協や業者がお米を買い取ってくれるから、うちみたいに自分たちで売っているというのはあまりないね。それを直売って俺は呼んでるんだけど。

土谷:そこってこだわりたいところなんですか?

智和さん:そうだね、直売があるから濱田ファームっていうスタイルができていると俺は思う。

例えば、奈々ちゃんに俺がお米を売るとするじゃない。このお米美味しいかどうかって気になるでしょ。そして「美味しい」って言ってほしいじゃない。だから、「美味しくしよう」って思って作るのよ。奈々ちゃんがどうやったら「美味しい」って言うかなと思って作るの。

そうすると、心持ちとかモチベーションとかが全然違うんだよね。それは自分たちで売り歩いてみて初めて気づいたことなんだけど。

そこから、本気で売り方を考えるようになったね。

土谷:なるほど。そういう「食べてもらいたい」って気持ちを感じるのは、今だとマルシェとかになるんですか?

智和さん:妻は電話対応してるから、意見や感想とかは電話で聞けているはずなのね。で、俺が聞ける場所はマルシェとかだから、そこで話を聞くかな。

けど、妻が出張でいないときは俺が電話番してるから、留守電に入ってればかけるんだけど、俺、実は電話得意なのね(笑)

土谷:電話が得意とは…(笑)

智和さん:メールじゃなくて電話がいいんだよね。文章だと俺の想いが伝わらりづらいから、電話をかけることが多いんだけど。で、向こうはだいたい女性なのね。お米買う人って男じゃないよね。お母さんか、奥さんかじゃん。お母さんとかすごい得意でさ、俺(笑)

土谷:何ででしょうね…(笑)

智和さん:なんだろう…場を和ませるのが得意なんだよね。

土谷:電話越しなのにすごいですね。世間話とかをするんですか?

智和さん:めったに話すことないからさ、俺なんて。でも買ってくれてる人は基本常連さんだから、向こうは濱田ファームのことを分かって電話してきてくれてるじゃん。で、「実はね、電話っていつもうちの嫁さんがやってて、今日たまたま俺で。ラッキーですよ。こんなことめったにないんで」みたいな話から始まるわけだ。

土谷:上手いですね(笑)

智和さん:そう、それで「今週田植え終わったばっかりでね。今年は天気がいいからすごく活着もよくて、いいお米ができると思いますよ」っていうような話をして…

土谷:すごい営業上手!で、それが楽しいってことですもんね?

智和さん:そうそう。そういう話って、お米買って食べるにあたってね、「美味しさ」につながるのよ多分。「あぁ、この人が作ったんだ」ってなる。だから、天気の話とか何でもいいけど言ってみたりする。「今も窓から山が見えて綺麗なんですよ」とかね。

土谷:こういうやりとりを楽しみに、ファンができそうですね。

智和さん:そうなのよ。こうやってファンを増やしていく。まぁ、地道なんだけどね。お米って一回買って終わりじゃないからさ。

 

このような電話対応での何気ない会話にも、彼らの自然体な人柄はあらわれています。

だから、自然と場が和み、それは「美味しさ」に繋がります。

 

彼らのファンづくりからすると、「美味しさ」は味だけじゃないようです。

では、彼らの考える「美味しさ」とは何なのでしょうか?

 

後編に続く。

 


 


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