「季節を届ける料理人」が地域を変える!?    ― 離島で学ぶ「和食の入り口にただしく立つ」ための1年間 ー

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島根県の海士町という離島に、季節を届ける料理人を育てる「島食の寺子屋」という和食の料理人学校がある。
生徒たちはそこで、海・山・田畑に囲まれて暮らしながら、仕入れから調理、提供までを経験する。

その日その季節に島で採れた素材にひたすら向き合い続ける環境は、料理人としての技術だけでなく、感性にも磨きをかける。

現在は2019年4月入塾生を募集中だ。

 

今回話をしてくれたのは「島食の寺子屋」を運営する海士町観光協会の恒光さん。

▲ 島食の寺子屋の校舎内で話をしてくれる恒光さん

―島食の寺子屋では、地産地消すること自体が料理人の人材育成になるし、人材育成することで、今まで使われていなかった島の食材が地産地消されるようになっていく。

恒光さんから話を聞くなかで
「料理人から地域が変わっていく日も近いかもしれない」
そう思った。

今回はそんな料理人の育成に挑戦する「島食の寺子屋」を紹介していく。

 

 

<書き手>学生編集部員 小川愛媛

 

 

 

どうして海士町で和食の料理人を育てることに?

▲海と山に囲まれる海士町

そもそも、どうして海士町で和食の料理人を育てることになったのか。

きっかけは、島を訪れた日本を代表する和の料理人 斎藤章雄氏の
「ここで人材育成をしたい」という一言だったそうだ。

「生産現場を知らない若手の料理人が多い」
「レシピ通りに作ることは出来ても、『こういう風に仕上げて』という問いかけに対して全くどうしていいか分からない人が多い」

ちょうどそんな思いを抱いているときに、別件で海士町を訪れた斎藤氏は、海・山・田畑に囲まれた生産現場に近いこの島の環境をとても気に入ってくれたそうだ。
海・山・田畑、どこに行くにも車で20分もあれば行けてしまう。

▲湧き水にも恵まれたこの島は米もつくることができる

 

一方、海士町も「食」に関して多くの課題を抱えているという。

たとえば島のホテルは、一気に50~100人規模のお客さんをさばかないといけない。

均一のサービスを提供するためには、同じ品目を同じ品種で一定量、一定の時間につくる必要がある。島の小規模な生産現場だけでは対応が苦しいのが現状だ。

―ほんとうに不揃いな野菜とか、このホウレンソウは山ほどあるけど、なすびは2本しかない、みたいな状況でも、目の前の素材に向き合って、それぞれの小鉢に人数分振り分けていく。

その辺の技術力もそうだし、島の旬に向き合って「野菜がないなら魚でどうするか」、「少ない野菜でいかにバリエーションをつくるか」、そういう料理人としての幅を広げられるようなカリキュラムになっている。

 

▲実際に離島キッチン海士の厨房で調理する寺子屋の生徒の様子

寺子屋では、島の食材をつかっての校舎での調理実習と「離島キッチン海士」という島内の料理店の厨房での実践という2つのカリキュラムを反復しながら、島のその日をカタチに出来る料理人を育てているという。

たしかに「食材を選べない」離島で、自然と向かいながらで和食を学ぶ寺子屋の環境は、ハウツーや流通に頼らない逞しい料理人を育てる場として、絶好の環境かもしれない。

 

和食の入口にただしく立つための1年間

現在3期生を募集している「島食の寺子屋」。

2期生にはいったいどんな人がこの学び舎にたどり着いたのだろうか。

―2期生は女性2名。

そのうち1人は九州の大学で栄養学科を卒業してそのまま寺子屋に。

もう一人が神奈川出身で、全く料理に縁がない不動産業界にいたけども、たまたま求人をみて応募してきてくれた。

▲佐藤先生と生徒さんの様子

元々料理に全く縁のなかった人も寺子屋で学んでいるのは正直意外だった。

寺子屋で講師を務める佐藤先生は元々都内で創作和食店を経営し、サウジアラビア日本国総領事館で料理を提供していた経験もある。

そんな佐藤先生の目から見れば、2人とも最初はド素人のなかのド素人だった。

それでも今では「和食の入口にただしく立つ」ことが出来てきたという。

▲生徒さんがつくった料理

ここで言う「和食の入口にただしく立つ」とはどういうことなのか。

もう少し詳しく話を聞いてみた。

―1つの素材に出会ったときに、五法(切る・煮る・焼く・蒸す・揚げる)のうちのどれを選ぶのかの見極めができて、自然に振り回されながらも寄り添って料理をつくることが出来ること。

ちゃんと漁師さんや農家さんの苦労も知っていること。基礎もあって、自然のことも知っている状態が寺子屋の考える「和食の入口にただしく立つ」ということだと思ってる。

 

▲生産現場を訪れる生徒さんたちの様子

和食の技術と心構えの基礎を学びたい初心者にとっても、生産現場に飢えている経験者、料理人としての表現方法や感性を磨きたい人にとっても、学びの多い環境と言えそうだ。

 

料理人として何ができるのか

▲ 厨房で料理を準備する様子

1人前になるには10年はかかる和食の世界。

そのうちの1年を島食の寺子屋で過ごしたあとにはどんな将来が広がっているのか。

調理の技術を学ぶだけでなく、生産者さんとの距離が近いことや、自然に向き合い続ける経験は、「料理人として出来ることはいっぱいある」ということに気づかせてくれる。

進路先の第一候補は、都内や島内の日本料理店だが、きっと島食の寺子屋からは、生産者さんとの関わり合いのなかで「生産現場を何とかしよう」とか「料理人として何ができるのか」といったことを考えられる視野の広い料理人が出てくるだろう、そう思った。

▲生徒さんがつくった料理

―島食の寺子屋では、変に色付けをしないで、基礎の部分をとことんやる場所にしようと意識している。

だからこそどこででも活躍できる。

厨房だけにとどまらず、ゲストハウスで自分で料理を振る舞いたいと思っているような人にも向いているかもしれない。

調理の専門学校や通信教育、お店で修行するなど
いま、料理を学べる場所はこの世の中にたくさんある。

その最初の1年として、そのうちの1年として
「離島で和食の技術と心構えを学ぶ」
という選択は、きっと料理人としての視座を高め、地域をも変えていくかもしれない。

 

さいごに

▲ 画像をクリックして、イベントページへ!

近々、今回紹介した「島食の寺子屋」について恒光さんが都内で話をする機会があるという。

海士町は、都内からだと飛行機とフェリーで最低5時間はかかる。直接話を聞いてみたい人にはまたとない機会だ。

料理人としての視座を高め、地域の食の在り方をも変えうる海士町での新しい取り組みを聞きに、まずはぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。

 


島食の寺子屋 公式ホームページ:http://oki-ama.org/washoku-terakoya/

写真提供(アイキャッチ画像、1枚目、4枚目、5枚目、7枚目、8枚目、10枚目):

月刊専門料理8月号

https://shigoto100.com/2017/08/shimasyoku.html

https://shigoto100.com/2018/11/shimasyoku-2.html

※リンクは日本仕事百貨のものです。

 


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