釜石の漁師の担い手はいるのか ~『釜石まつり with 海の祭 ism 祭り参加体験プログラム』参加レポート~ 

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農家、漁師の担い手が足りない。

そんな地域では、”地元のまつり”の担い手が足りないという事も多いのではないだろうか。

岩手県釜石市もその一つだ。

「鉄と魚とラグビーの街」と言われる釜石市は、かつては多くの漁師が海で稼ぎ、生活をしていた。しかし、他の多くの一次産業の現場と同様に、漁師は減少し、担い手不足が課題となっている。それに伴い、海のまつりである「釜石まつり」の担い手も不足し、まつりの継承についての課題を抱えているという。

そんな釜石市で、一般社団法人マツリズム主催の『釜石まつり with 海の祭 ism 祭り参加体験プログラム』が開催された。マツリズムは、各地で若者や外国人などに向けて、地域のまつりに参加するプログラムを企画している。釜石まつりのプログラムは、地域のお祭りに、釜石まつり体験に加えて、漁場見学や漁師さんとの懇親会など、盛りだくさんだった。

※プログラムは、海を未来へ引き継ぐアクションを広めている、日本財団『海と日本プロジェクト』の一貫です。

<書き手> 学生編集部員 荒川暁世

 

 

 

 

漁船の上から曳き船まつりを観覧

釜石まつりは毎年10月の第3日曜日を含む金・土・日に開催される。その中日である土曜日に、曳き船まつりが行われる。海の向こうにある奥宮から市内にある里宮まで、ご神体を船に乗せてお連れする。神様を乗せたお召船を中心に虎舞や神楽を乗せた10数隻の船が海上をパレードをする。

今回、マツリズムのプログラム参加者は特別に、”漁船の上から”曳き船まつりを観覧させてもらった。

虎舞を披露する船。漁船上からの曳船まつりの観覧は、地元の人でもなかなか出来ない経験らしい。(漁船上からの一枚)

マツリズムのプログラムのために漁船を出してくれたのは、地元漁師の箱石忠男さんだ。この地域で牡蠣や、ワカメ、昆布を生産している。釜石まつりのあった10月は、ちょうど牡蠣が旬の時期だった。

箱石さんには、二人の息子と四人の孫がいるそうで、まつりの観覧の際は、孫を連れて船を出してくれた。

箱石さんの漁船。一緒に乗っているのは、箱石さんのお孫さん。(尾崎白浜の漁港にて)

箱石さんは、慣れた手つきで船を操縦する。陸への船の寄せ方、ロープの縛り方、どの動作も身体に染みついている。

かっこいい。

そして、船の上でバタバタ暴れる孫が落っこちないように心配したり、「もっとスピード出せ~!出せ~!」と言う孫からのリクエストに応えてくれたりする、優しいおじいちゃんだった。

箱石さんのお孫さん 元気が良すぎて舟から落ちないかと、大人たちはヒヤヒヤドキドキ(箱石さんの漁船上にて)
やんちゃ坊主な箱石さんのお孫さんと二人で。(まつり観覧後の懇親会にて)

漁師さんと懇親会

曳き船まつりの観覧後は漁師さんを交えての懇親会だ。

懇親会で、漁師の箱石さんから”漁師の担い手”についてお話を聴いてきた。

 

箱石さんには二人の息子さんがいるが、二人とも漁師にはならなかったという。息子さんに対して漁師を継いで欲しいと思わないのかと尋ねたところ、「やっぱりさ、親としては漁師やれっていえねえわ。」と箱石さんは言う。

なぜなのか。

漁師の仕事は楽な仕事ではない。

右手一つで自然のモノをとる。決して簡単な仕事ではない。

一人前になるには何年もかかるし、一人前になってからも常に勉強だ。

お給料だって毎月決まった額をもらえるわけではなく、自分がどれだけ捕ったかで稼ぎが決まる。

 

そうか、漁師の苦労を知っているからこそ、そして漁師である以前に父親だからこそ、

息子には楽をして欲しいのだ。

 

そんな箱石さんの”漁船”の名前は大悠丸という。その由来を箱石さんは誇らしげに教えてくれた。

「俺の船名はさ、大悠丸。これ(=大)が長男、これ(=悠)が次男。長男と次男の名前をとって大悠丸。”大悠丸”って、良いなって思って付けたんだ。」と。

 

息子の名前を船名にする程の、漁師としての誇りが伝わってくる。

 

箱石さんの漁船 大悠丸(漁船上より)

 

マツリズムのプログラムに参加して

今回、マツリズムのプログラムをきっかけに初めて釜石を訪れ、漁師さんとお話もした。そして、今まで知らなかった漁師のかっこよさや、まつりの迫力を知った。

 

その中でも特に、”大悠丸”に乗って漁に出る箱石さんの話が印象的だった。

漁師の仕事に対する誇りと息子に対する愛情があるが、息子に対し、「漁師の仕事を継げとは言えない」という、矛盾、葛藤があるように感じたからだ。

 

そして、漁師さんとお話していて、一つ気が付いたことがある。

漁師の担い手不足で困っているのは誰なのか。

漁師さんだろうか。

いや、漁師の担い手がいなくなって困るのは、漁師ではなくて、漁師に頼っている私たちなのかもしれない。

 

 

漁師も、まつりも、無くなってしまったら寂しい。

若者が、頑張らなくっちゃな。

 

 

 

 

 

 


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