【取材レポート】本当の食とは?生産者が教えてくれたこと

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今年10月、食べタイの編集部員になって初めて先輩たちと山形県小国町に行ってきました。景色が綺麗で食べ物も美味しく、心も身体も満たされ、個性豊かな生産者に出会うことができた濃密な小国町での出来事をレポートします。

                                                         

 

〈書き手〉山村奏(津田塾大1年)

 

いざ、小国町へ!

小国町に行って初めて漁師以外の生産者さんにお会いしました。

というのも私は北海道の山と日本海に面した小さな村で育ち、父は漁業を営んでいます。定置網漁、飯寿司や鮭とばを作る加工業、さらに最近ではホタテの養殖も始めました。

私の父はこういった事業の拡大だけなく、漁で使う網は外注せずに自分で作ったりと、とにかく自分でなんでもやる人です。

仕事場から聞こえてくる父と従業員の笑い声や父の姿を近くで見てきて、”父は楽しく仕事をしているんだなぁ”と感じていました。

そんな生産者の娘に生まれた私は、生産者の仕事に対する情熱や生き方に興味を持ちました。そして、食べ物を獲ったり、育てたりする仕事はとても奥深いのではないか、生産者の仕事に対する想いをもっと知りたいと思い、今回小国町に行くことを決めました。

 

現状に満足しない

小国町に到着してまず牛飼いの鈴木富男さんにお会いしました。

実際に牛舎を見せてもらいながら、牛や富男さん自身のことについて伺いました。富男さんは半世紀以上にわたって牛飼いをしており、和牛能力共進会と言われる、和牛の品評会でも高得点を出しているほどの大ベテラン。

話を聞いていると、大ベテラン富男さんの口から想像もつかない言葉が。

「俺はまだまだ半人前だ」と。

長年和牛に向き合い、和牛と共に過ごしてきた富男さんですら、まだ自身のことを一人前だと認めていないということに驚きを隠せませんでした。

私はその現状に満足せず、より良い牛を育てようという富男さんの意欲の高さに
とても刺激をもらいました。そして、意欲を持ち続けることは必ず良い結果として表れるということも同時に感じました。


和牛の品評会に出すための牛を育てている牛舎。なんと、この牛舎は富男さんが自分で建てたそう

しかし、長年に渡って牛と共に歩んできた富男さんの和牛人生は来年で後継者に譲るそう。

富男さんがご自身を一人前だと認めるのは、後継者が立派に成長した時か、
はたまたもっと先のことなのか、富男さんの今後に目が離せなくなりました。

 

味を選ぶということ

富男さんとわかれた後は、きのこ農家である拓磨さんに逢いに、拓磨さんや地元の人たちで作った農業法人「きんたけ工房」へ。「きんたけ工房」では従業員数名で、しいたけや舞茸、しめじなど様々なきのこを生産し、多くの方に届けています。

そこの従業員の一人である拓磨さんは「きのこの菌床(オガクズなどを固めて作った培地)を宇宙に持っていったら上に向かって生えるのか、下に向かって生えるのか気になる」と言うほど常にきのこのことを考え、きのこを愛してやまない、きのこヲタク。

そんなきのこを愛してやまない拓磨さんはきのこの製造技術を残していくために、後継者ができやすい環境作りに力を入れています。

例えば、以前まできのこの生産技術というのは感覚で伝えられ、誰もが簡単に理解することは難しいものでした。ですが、拓磨さんはそれを誰でも同じ手順でできるようにマニュアル化や機械化をしていったのです。

こういった拓磨さんのきのこに対する熱い思いが総務省にまで伝わり、「きんたけ工房」が発足し、今にいたっています。

そう、拓磨さんは凄腕きのこ農家なのです。

そんな拓磨さんが作った自慢のしいたけ。

その名も”たくましいたけ”。

とても肉厚で香りも味も濃く、とても食べ応えのある絶品きのこです。


たくましいたけ、写真を見てるだけでよだれが出ます

拓磨さんがご自慢のたくましいたけを紹介している時に一言。

「大きさよりも味をみてほしい。
一口も食べていないのに、”大きい立派なきのこだね”と言われることが一番嫌い」。

私は拓磨さんのこの言葉を聞いて、食に対する考え方が大きく変わりました。

いきなりですが、皆さんはスーパーに行った時、”大きいから”、”安いから”という理由で食材を選んでいませんか。

味を知らないのにもかかわらず。

私も拓磨さんに出会う前までは”安いから”という理由で食材を選んでいました。
ですが、今は違います。

拓磨さんに会って、大きさや値段で食材を選ぶのではなくて、
口に入れて味を選ぶことが本当の食であるということに気づきました。


きんたけ工房のリーフレット。
中を見てみると、きのこの生産工程が写真付きでわかりやすく載っています

今回の訪問を通して、食とは何かを深く考えることができました。

普段何気なく食べている食材は誰が、どのようにどういった気持ちを込めて作っているか。一つ一つの食材に愛情込めて育てている生産者の皆さんに会うことで、食べ物のありがたみや美味しさを深く噛みしめることができます。

そして、父以外の生産者の方々にお会いしてわかったこと。それは、生産者は皆それぞれ“自分らしさ”を持っているということです。

自分のやりたいことを自分なりにやってみる。

富男さんや拓磨さんにお会いして、強く感じました。

生産者に直接会うことは自分の食に対する思いや考えが大きく変わります。

みなさんも小国町に足を運び、生産者に会い、食の奥深さに触れてみませんか。


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