最終話「変えてはいけない掟」〜無線のない時代にマタギはどうやってクマをとったか〜

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連載シリーズ「無線のない時代にマタギはどうやってクマをとったか」

いまはマタギもスマホを使う時代だ。しかし、山中ではスマホは使えないので、「無線機」を使う。だが、かつて「無線のない時代」もあった。そのころ、東北のマタギたちはどのように山を歩き回り、集団で意思疎通してクマを捕らえていたのだろうか。マタギ界のオピニオンリーダーに聞く。(編集部  森山)

語り手:斎藤重美さん

山形県小国町猟友会の副会長。10代でマタギになり、現在まで約100頭のクマを仕留めてきた。

 

最終話 変えてはいけない掟

— 五味沢マタギの先輩から教わってきて、継承したいことは?


もっとも、山の歩き方とかよ、そういう技術も教えることは教えるんだ。たとえば、雪の中で疲れない歩き方というのはよ、上りは大股でゆっくり、下りは小股で歩けと。

 

これは雪のある時に、下りを大股でボンボン歩いて行くと、もしなんかあった時、もしその道をバックしなければなんなくなる。そうなると、跳ねてったところに、脚が届かねぇわけよ。だから下りは小股で階段を作りながらおりれよと。これは教えられればある程度はわかるどもよ、あとは自分で歩いてみて、なるほどなという歩き方になっていく。

 

とにかく山の“技”はぜんぶ教えてる。だけど受け継いでほしい“気持ち”もある。

いまの若い人に、山言葉を全部話せとはいわねぇ。だども、山さ入って使って悪い言葉、たとえば仏さんに関した言葉「死んだ」とかよ、ちょこっと腕を切ったから「血だ」とかよ、そのへんの言葉はしゃべっちゃいけねえ。今後、勝手な言葉でどんどんとやっては、なにかあった時、「やっぱそうなったべ」となるから。

 

ようするに、一番大切なものは、山さ入った人の気持ちだ。『山の神様に命を預ける』といってけじめをつける。それで山を歩って獲物を捧げていただく。そういう気持ちは忘れないで受け継いでもらいたい。そのためにおれらも要所だけは教えていくからよ。

<終わり>

書き手:森山健太(日本女子大学1年)

連載シリーズ

第一話「クマとの距離、2m」

第一話「クマとの距離、2m」〜無線のない時代にマタギはどうやってクマをとったか〜

第二話「なぜ山言葉があるのか」

第二話「なぜ山言葉があるのか」〜無線のない時代にマタギはどうやってクマをとったか〜

第三話「マタギの頭の中の“図面”」

第三話「マタギの頭の中の“図面”」〜無線のない時代にマタギはどうやってクマをとったか〜


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