【寄稿】上下水道も通っていない長野の山奥に住む若手の女性畜産農家に密着!

in 農家漁師にインタビュー/長野
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こちらの記事は、東京の学生団体「南信州サポーター」が、南信州の若手農業者団体「かたつむりの会」の方々にインタビューした内容をまとめて寄稿いただいたものです(詳しい経緯はこちら

書き手:野呂美紗貴(早稲田大学4年)・細川香奈(お茶の水女子大学2年)


 

長野県南信州の山奥、阿南町(あなんちょう)というところに、その農園はある。家族経営で、養鶏を中心に、和牛の繁殖や養蜂を行う小さな農園。特に養鶏は、通常家族経営でも50万羽くらいまで扱うところ、750羽ほどにおさえているという。事業規模は実に約700分の1。しかも、驚くことに上下水道も通っていない。そんな場所にある「みたぼら農園」の代表を務めるのは、伊豆より夏さん(28)という、取材を行った学生の私たちとも近い年代の女性。

人里離れた場所で、飼育方法に非常に強いこだわりを持って農業を営む、若手の女性畜産農家。そんな個性的な農家さんに実際に会ってお話を聞かせてもらうことができた。

 

(まず、鶏や牛の餌の保管場所を見せていただく)

Q:鶏や牛の飼育方法へのこだわりを教えてください。

A:うちの卵の黄身はレモンのような薄黄色。これはトウモロコシと海藻の色なんです。市販の卵はもっとオレンジに近い濃い黄色をしているのもありますけど、あれは実は餌にパプリカ色素を入れているんです。

鶏にストレスのないよう平飼いで、餌は8種類程度を季節ごとに配合を変えて、毎日その日に混ぜて与えています。夏はさっぱりめ、冬は脂質多めという具合です。


牛の餌も同様に、4種類の牧草を混ぜて作っています。どの子に何を何キロあげるか等のレシピもあります。

 

(続いて、牛舎に移動)

Q:伊豆さんが牛と触れ合う姿がとても微笑ましいです。牛も伊豆さんに心を許しているように見えましたが何か秘訣があるのですか?

A:毎日世話をしているからかな? この子は風邪をひくと、鼻水を私の服で拭うんです(笑)

Q:動物に対してとても自然体で接していますよね。

A:もともと私の父と母がIターンで養鶏を始めて、小さいころから動物に囲まれた生活でした。

Q:伊豆さんは、小さいころからずっと家のお手伝いをしていて、農家が嫌になることはなかったんですか?

A:なかったかな。生まれて気づいたら採卵かご持って歩き回っていて、ずっとこんな暮らしだから……むしろ動物がいない生活は考えられない。

 

(移動の車中ではこんな話も)

Q:小さい頃から農家を継ぐことが夢だったんですか?

A:小さい頃からものを書くことが好きで将来は物書きになりたいと思っていました。その影響もあって、中学校2年生から父に代わって私が「みたぼら通信」を書いて2週間に一度、お客さんに出しています。もうすぐ700号になるんです。直売の情報や日々のことを書いています。お客さんからお返事をもらうこともあるんですよ。規模が小さいからできることなのかもしれませんね。20年来のお客さんがいたり、お孫さんのことまで知っているお客さんもいます。
畜産は農業の中でも特にお客さんとの距離が遠いと感じていて。スーパーで並ぶ肉も、育てる人がいて、屠畜する人がいるわけですよね。でも特に屠畜する人は知られたくないと感じている人もいるみたいで、どうしても生産者と消費者の間で誤解が生まれやすい。どちらの誤解も見えることがあるので、それを埋めるために日々の仕事を書く。小さいことだけどそれを積み重ねていくことからなのかなと思っています。本当は面と向かって言えたらいいのだけど、それが出来ないなら出来ないなりに、伝える努力はしようと。

 

質問する中で、家の手伝いをすることを嫌になるどころか、むしろ「動物がいない生活は考えられ」ず、伊豆さんにとって動物たちは、伊豆さんの人生を語る上で欠かせない存在であることが伝わってきた。

「我が家は人も動物も、全員同じ水(湧き水)を飲んでいます」という言葉や、牛が甘えて顔をすり寄せるのを優しくなでてあげている様子からは、伊豆さんにとって動物たちは「家族」のようでもあり、「自分そのもの」のようでもあるのではないかと感じられた。言い換えれば、伊豆さんの動物たちへの向き合い方が、伊豆さん本人に返ってきているのではないか。

小さいころから自然と動物に囲まれた環境にいることも、上下水道も通らない田舎での生活スタイルも、若い女性でありながら農園の代表の肩書を持つことも、特別なことに見える。

しかし、伊豆さんは動物に丁寧に向き合うことを通して自分自身の生活を丁寧に送ることで、こだわり抜いた魅力ある畜産を実現しているのだと思う。

住む環境も生活スタイルも全く異なるけれど、そんな伊豆さんのような生き方に憧れた。私たちも、自分を取り囲む人生を語る上で欠かせないものを大切にする暮らしを送りたいと思った。

 

取材後記はこちら

取材を終えて(南信州サポーター)


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