「全体がオーガニックハーブ園の島」。無農薬にこだわる農家さんの島ライフ(喜界島のマンゴー農家・叶俊仁さん、啓子さん)

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奄美群島に位置する美しいサンゴ礁の島・喜界島。

サトウキビの産地で、美味しい黒糖やそれを使った焼酎が作られていたり、南国の果物や特有の島料理があったりと、美食にあふれた南の島です。しかし、喜界島の魅力はそれだけではありません。島全体がオーガニックハーブ園でもあるのです。

語るのは、喜界島でパッションフルーツやマンゴーを栽培している、農家の叶俊仁さん・啓子さんご夫婦。

お二人の島生活には、“考え方ひとつで豊かな日々になる”ヒントがたくさんありました。

ただの雑草じゃないんです、オーガニックハーブなのです

太陽が輝く海辺の岩場。景色に見とれていると、啓子さんがふとしゃがんでなにかを摘み始めました。「これ知っている?沖縄の方では長命草と呼ばれていて、最近は健康食品に使われていたりするよね。ここではサクナーと呼ぶの。天ぷらにするとすごくおいしいの」

「これはアオサ。たくさん採るのが大変だからなかなか食べないけれど、これもおいしいのよ」。

私にはただの雑草のように見えていた植物が、実はおいしくて体にもやさしい食材でした。

 

▷はしゃぎながらハーブをつむ食べタイ編集部

 

▷摘み取ったサクナー。ミネラルやビタミン、鉄分などたくさんの栄養素が含まれ美容に良いとされる。春菊のような香り。クセになります!

 

啓子さん:お店で買うものだけがいいものじゃなくてね。野草とか身近にあるものは、地のものだからそれこそ旬の食べ物だし、人の手をかけていないからもちろん無農薬だし。体にもやさしい、お財布にもいい(笑)。さらにここでしか食べられない。いいことばっかりじゃない?

けど島のみんなも、自然と生えている雑草でしょっていって、気が付いていないのよね。雑草・野草じゃなくて、島のオーガニックハーブなの。今はだれも見向きもしかなったものが、ハーブって言い換えただけで、なんだかいい感じになるでしょ。

 

無農薬は特別なことではないのに…

啓子さん:昔は自然に生えている野草を食べていると「貧乏くさい」って言われていたけど、今は逆に「豊かですね」って、贅沢になっているのは不思議よね。

オーガニックというだけで野菜も果物も値段が高くなる今。けれど昔は農薬が使われず、無農薬の野菜や果物が当たり前だった。「オーガニックというだけで特別な世の中ではなく、オーガニックが“あたりまえ”な世の中、それが夢の世界です」と啓子さんは話します。

 

夫の俊仁さんが作るマンゴーやパッションフルーツはもちろん無農薬。しかし、普通であるはずの無農薬で栽培するまでの道のりは、険しいものでした。

 

▷青々と葉が茂る、叶さんご夫婦のマンゴーハウス

 

俊仁さん:オーガニックでマンゴーを作るって言ったときは、ほかのマンゴー農家からは、無農薬で作れないと言われたんだよ。どこいっても「無理だ」って、やり方を教わることができなかった。だけど無農薬で作りたくて。

 

啓子さん:実は、喜界島に帰ってくる前は京都で会社勤めをしていたの。そこで仕事に追われて、食生活も大切にできないような日々を過ごしていたら体調を崩して大病を患ってしまって。その時に、自分のためには体を作る食べ物が一番大切なんだな、と感じたのよね。それで体にやさしい食材を作りたいと思ったの。

 

俊仁さん:無農薬にこだわるその1番の理由は、大切な人(啓子さん)を守りたかったからだよ。

▷マンゴーの摘果作業をする俊仁さん

さらに「私たちだけでなく、みんなにも安全でおいしいものを食べてほしい」と話す俊仁さんと啓子さん。実体験から語るお二人の言葉はあたたかみにあふれていました。

自分たちだけでなく、大好きな島も守りたい

叶さんご夫婦が無農薬で作る果物の肥料には、島の一大産業であるサトウキビの搾りカスが使われています。お二人は、自分たちでサトウキビを作るだけでなく、他の農家の収穫作業も請け負って島の産業にも貢献しています。

 

▷ビニールハウスの横に積まれた、サトウキビの搾りカス。驚くほど軽くてふかふかな搾りカスが、おいしい果物の秘訣だそう。

 

俊仁さん:サトウキビはハーベスターという機械を使って収穫するのだけど、安い機械ではないから持っている家が限られている。うちはたまたま啓子の父が持っていたので、それを引き継いで手が回っていないサトウキビ畑の収穫を請け負っているよ。

▷ハーベスターに乗り、サトウキビを刈る俊仁さん

「喜界島のものが自分たちだけでなく、みんなの健康の源にもなってほしい」。そう願い、島で農家として生きる叶俊仁さん・啓子さんご夫婦のファームライフは、日々の生活の中で忘れがちな守りたいものを思い出させてくれる、素敵なひとときでした。

 

文:編集部 田丸さくら(専修大学3年)

 

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喜界島ファームステイ推進協議会 事務局

地域おこし協力隊 木下 敦博(きのした あつひろ)

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