【農家と漁師の結論】突破口はコレクティブインパクトだ!

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農業・漁業それぞれの道で「1次産業」の最前線を走る2人が4月30日に行われた「農家サミット」でついに対面しました。

農家ネットワーク「農家のこせがれネットワーク」の代表・神奈川県の養豚家・宮治勇輔さん。
漁師ネットワーク「フィッシャーマンジャパン」の代表・宮城県の漁師・阿部勝太さん。

2人がたどり着いた1次産業が盛り上がるために不可欠な突破口とは?いったい何だったのでしょうか?

右:NPO法人「農家のこせがれネットワーク」の代表・宮治勇輔さん

左:一般社団法人「フィッシャーマンジャパン」の代表・阿部勝太さん


ありそうでなかった農家と漁師のつながり


宮城県石巻市で漁師をしています、阿部勝太です。僕は人前で話すことは多いんですが、ほとんどが水産関係者向けなんですよ。今日は一般の方も、農業関係の方もいっぱいいるので、漁業のことも知ってもらえたら嬉しいです!


神奈川県藤沢市で養豚業をしている宮治勇輔です。確かに、僕も漁師の方とお話することって今までなかったです。

農業界隈は農家同士が情報交換することが多いんですよ。若い農家の集まりだとか勉強会とか。集まりが多すぎて困ってるという声を聞くくらいです。


漁業の場合は全く逆ですね。漁師って自分の浜の漁師としか喋んないんですよ。別の浜と合同で懇親会をやっても、結局各浜ごとに集まって話してたり。


そうなんですね。僕は、漁業者同士をつなぐフィッシャーマンジャパンの活動を知ったときは、かなり衝撃でした。今日はフィッシャーマンジャパンについてもいろいろ聞かせてください。

 

「羽振りのいい漁師」って検索したんです


震災がありまして、使っているもの全て、工場も船も、全部流されてしまったんですね。いわゆる0からのスタート。再開に向けて、莫大な資金投資問題が目の前に立ちふさがりました。

テレビなんかでは、派手な漁師が取り上げられるので「漁師って儲かってるのかな」って思ってる方もいるかと思います。でも現実は、僕たち養殖漁師のように結構厳しい中やっている方も多いです。

そこで大きな資金投資をしてもう1回やるってなっときに「本当に借金を返していけんのかな」とか、毎日いろいろ考えました。

でも決意した手前、いつまでも問題を見て見ぬふりしてやるわけにはいかない。だから単純に「どうやったらもっと儲かるのか?」「どうやったら楽しくやっていけるのか」を考えました。

とりあえずネットで「羽振りのいい漁師」で検索しました、、、(笑)

会場:(笑)

でも全然何もヒットしなくて。どうしようかと考えているときに、農家の方とご縁があったんです。そこで僕の先生になったのが宮城県の『農家のこせがれネットワーク』です。

さっそく話を聞きに行ってみると、こう…わけわかんないことを言っているんですよ。ブランディングがどうのこうのとか、パッケージングがどうのこうのとか。

やたら横文字使ったりしてね。(笑)

そのときは「はて?」と思っていたんですけども。(笑)

けど単純な話「どうやって食べる人とつながるか」という話でした。「食べものを、どこで誰が作っているかわからない」という声がありますが、それは僕ら生産者も一緒なんです。「どこで誰が買って、どうやって食べているのか」が全然わからないんですよ。むしろ「そんなの関係ない」って思っていました。

でも・・・農家さんの話を聞く中で、「生産者の情報を消費者にしっかり伝えると、結構高い値段で取引される」っていうのがチラホラ聞こえてきたんです。

これは儲かるぞ、みたいなね。

そうです。農家さんができて、漁師ができないわけないと思って、真似をしてみたのがフィッシャーマンジャパンの始まりです。なので根本は「儲かること」から始まっています。

なるほど〜!ぼくがフィッシャーマンジャパンが素晴らしいなって思ったのは、そのビジネス的なところなんです。

フィッシャーマンジャパンのメンバーは漁師さん、仲卸業者さん、魚屋さんと漁業界を支えるみなさんがいて。みんなで力を合わせて販路を開拓している。そこで稼いだお金をフィッシャーマンジャパン事務局に落として、そこで事務局スタッフを採用して、そこでまた問題解決をしていこうっていうスタンスじゃないですか。

それがすごいなっておもって、これは農家のこせがれネットワークだとできなかったなーって思って感動しました。今度僕も「羽振りのいい農家」で検索してみよう。(笑)

 

「8割がいなくなる」農業と漁業の共通の悩み

 

フィッシャーマンジャパンのゴールは何なんでしょうか?

未来の水産の担い手を作る団体になる」というところに最終的に着地しました。後継者不足は、数字化したら結構な衝撃だったんですよ。

漁師の平均年齢は61歳。その中で息子が継いでいるところは2割しかいないんです。漁師の引退はだいたい75歳くらいなので、このままいくと15年後8割の漁師がいなくなっちゃうのかなって思ったわけですよ。

農業も似たり寄ったりですよね。

平均年齢が67歳。新規就農者は8割が60歳以上。そして売上が100万円の形態が約6割。会社が定年になって、セカンドライフで親父の後を継ぐってのがほとんど。所得のメインは年金なのでしょうね。

若い後継者がいないという意味では農業も一緒ですね。

フィッシャーマンジャパンでは、漁師の後継者として都会に出て行った漁師のこせがれを次世代漁師のターゲットにしています。あとは地元の水産高校の生徒ですね。石巻の水産高校って、全国でも有数の水産の専門知識を学べる高校なんですが、卒業生のほとんどは水産関係の仕事には就職してないんですよ。

でもそれだけだと漁師が減っていくスピードに追いつかない。

だから漁師に関わりない人にも広報しています。例えば「サーフィンが趣味で仕事でも海に携わりたい」っていう人とか。

そこで、海や魚に興味のある人達を集めて、漁師のリアルな話をしっかり届けていきたいと思ってます。「現役漁師」と「将来漁業の世界に入ってくる可能性のある若者」をしっかり繋げることで、未来の後継者を作ることが出来るのではないかと思ってます。

 

 

これからは…コレクティブインパクトだ!

 

最近コレクティブインパクトがホットワードになっていているんですよ!

コレクティブインパクトとは、「みんなで繋がりをもって一緒にやればもっと大きなインパクトができるんじゃないか」というものです。

今までは、それぞれの企業や団体が、単独で社会の問題を解決しようとしてきた。一つの団体ではできる事に限りがある、しかしそれぞれが抱えている問題って同じなんですよ。

でも最近では、行政、企業、各団体が横串でつながって1つの問題を解決していくという流れができてきた。

農業界でもやっとそれができるようになってきて、去年は個人的に農業界のコレクティブインパクト元年だと思っていました。このタイミングでフィッシャーマンジャパンとのご縁をいただけたのは何かしらの意味があるんじゃないかなと思っています。

やっぱり僕たちつながりのない世界で商売をやってきた人間で、自分の脳みそだけで考えてきたことなんですよね。そこでいろんな人と関わり繋がることで、こんなに可能性が広がるんだって実感しています。

「食べること」って僕たち生産者だけの問題じゃないと思います。

今この問題を最短で解決するのは、食産業で「繋がること」でしかないのかな思っています。

これからは農業、漁業って分けるのもなんかね。ひっくるめて一次産業でもあるし。生産者と消費者じゃなくって、生活者であるわけだし。区切ってそれぞれで活動するのではなくって、みんなで問題を解決していこうという流れになればいいなって思います!

 


今まで同じ『第1次産業』であっても繋がっていなかった『農家』と『漁師』。
今回、やっと両者が出会い、語り、繋がりました。

この『繋がり』は、きっとこれからの日本の第1次産業をより良くしていくでしょう。

なぜなら、今回のお二人のように、今までは不可能だと思われていたことが『繋がる事』で可能になるからです。

今後、この『繋がり』が日本の第1次産業に大きな化学反応を起こすでしょう。
それはいったいどんな変化なのでしょうか?

その行方をNIPPON TABERU TIMESは追い続けます。

(文:食べるタイムス編集部 増田雄太朗)


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畜産農家 神奈川県藤沢市