一瞬の気の迷いで「しらぬい」はほぼ全滅

in ピックアップ/九州/生産の哲学/生長記録/鹿児島
この記事の書き手
農家 鹿児島県南さつま市

申し訳ないお知らせがあります。

「南薩の田舎暮らし」では、今年は「しらぬい」(デコポンとして知られている柑橘)の販売はありません!

甘みと酸味のバランスが素晴らしい」 とリピート客も多かった人気商品でしたが、今年はインターネットでは一箱も販売できません…。

何が起こったのか? というと、ちょっと栽培に失敗してしまったのです。

この「しらぬい」、人気商品のポンカンより手間がかかっているくらいなんですが、ちゃんとした売り物になったのがたったの7箱でした。金額にして、1万4000円。一年間栽培して、2万円も売り上げがないって…。廃棄率、9割以上ですね。普通の企業だったら、工場長は即クビって感じの結果です。自営業だからクビにならなくてよかった…。

きっかけは、一昨年の台風。一昨年の台風では、しらぬいの樹がたくさん倒れてしまい、それを引き起こしてみたのですが、やっぱり弱ってしまって根がちゃんと活着しない感じでした。

【参考】三歩進んで二歩下がる。台風15号。(2015年8月)

で、昨年も強い台風が来てしまって、この弱った樹たちはかなりの割合で(今度は逆側に)倒れてしまいました。もうこうなると絶望的ですが、台風に耐えて倒れなかった樹も相当弱っているようでした。

そして、安直に思ってしまったんですよね。「ちょっと肥料をあげた方がいいかな?」と。うちの柑橘は「無農薬・無化学肥料」を謳っているんですが、実質的にほぼ無肥料で育てていて、有機質肥料も普段は滅多に与えません。だから台風後に弱った樹を見て、「ちょっとは肥料が必要かなあ」と思ったのです。で、そんなにたくさんではありませんが油粕をやりました。 今から考えると、これは悪魔のささやきでした…。

肥料をあげると余分な栄養素が葉に溜まり、それに引き寄せられて虫がやってきます。目に見えない、小さなダニが柑橘の大敵なのですが、そのダニたちが大発生してしまいました。「サビダニ」または「リュウキュウミカンサビダニ」という連中です。こいつらは、果実の皮の汁をチューチュー吸って、果実品質を台無しにしてしまうのです。台無しになっちゃったやつが冒頭の写真。これにやられると皮がキタナイだけでなく中身も美味しくなくなります。

そんなわけで、一瞬の気の迷いで一年間の苦労が水の泡になってしまいました。こういうことがあるから、農業ってのは怖いですね。

台風後に弱っていたとしても、肥料をあげるというのは愚策でした。何もやらない、の方がまだマシで、やるとしてもごく微量のミネラル類をやるか、やったかやらないか分からないくらいの肥料をやるべきでした。何しろ無農薬でつくっているので、樹の中のバランスや生態系が少しでも崩れるとすぐに潰滅してしまうんですよね。そのバランスが崩れないように、時間がかかっても徐々に修正していかないといけません。焦って肥料などやるのは禁物。

そんなわけですので、今季は柑橘には好適な気候で、ちゃんとやっていれば豊作だったはずの年ですが、「南薩の田舎暮らし」のしらぬいはテンでダメで販売できないということになりました。楽しみにしてくださっていた皆さま、本当に申し訳ありませんでした。来季にご期待いただければと思います。

なお、同じ失敗をタンカンでもやってしまったのですが、タンカンは倒れた樹が一本もなく台風被害が比較的軽かったため、しらぬい程は肥料をやっていないので病害虫被害が軽くて済みました。この教訓を胸に、これからの柑橘栽培も心してやっていきたいと思います!

(2017.02.19)


➤この農家・漁師のプロフィールを見る
農家 鹿児島県南さつま市