「おぶくさん」を後世に。僕らが最後のチャンスかもしれない。

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農家, 畜産農家 福島県相馬市
「ここはおぶくさんの田んぼだったところだ。」
にんそくと呼ばれる、その地域の田んぼをやっている人たち数人が集まり、その地域の田んぼへ繋がる水路のドブさらいをする日だった今日、車も農機具も入ってこれないような山林の陰で、落ち葉で詰まった水路を皆でかきだしている時に一人のおじいさんが言った。
僕も含め数人がおじいさんの話に耳を傾け水路から顔を上げてみると、水路の横にはなんとなく昔は田んぼとして使ってたんだろうと思わせる小さな跡地があり、今では草に覆われていて、言われなければ田んぼだと気がつかないような状態だった。
「おぶくさんとはなんですか?」
初めて聞いた言葉に、思わず僕は食いついた。
「もとはおぶくさんって言って、田んぼをやっている百姓は神様の為の田んぼを持ってたんだ。その田には女はいれてなんねぇ。機械も肥料もいれてなんねぇ。できた米はモチにして神様に供えたんだ。おぶくさまともおぶくでんとも言った。もうやるもんは一人もいなぐなっちまったけどな。」
そう言われて、すごく悲しいと思った反面、良かったとも思った。
あと数年で、こんな貴重な体験をしてきた人が地域からいなくなるかもしれない。
僕ら世代が、もしかしたら直接この世代から教わり引き継げる、最後のチャンスの世代かもしれない。
そう思えて、おじいさんの話を聞き終えた時には、僕がおぶくさんの田をやりたいと思った。
「おぶくさま」とは「お仏供さま」らしい。
「おぶくでん」とは「お仏供田」らしい。
昔は神様のために育てる田んぼがあったんだ。
嬉しい。
もう一度やり直したい。
僕はおぶくさまの田んぼを、必ず子どもたちに見せてやりたい。
(2017. 4. 30)

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