キツイ、キタナイ、カチガアル。中学生を変えた「中山間地農業の新3K」

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この記事の書き手
農家 福島県石川町

【ゲストティーチャーしましたin石川中】
先月、町内唯一の中学校である石川中へゲストティーチャーとしてお招きいただきました。
自分達自身の感情の動きや今後の課題含め、得るもの多く、大変貴重な経験をさせていただきました。
関係者のみな様、ありがとうございました‼

今回の投稿は、いつにも増して長く、ややマジメですが、是非、絶対‼お付き合いください。

 

オファーを受けたのは12月だった。

ママ友である石川中の先生より

「中1の担任クラスに、道徳の授業で数回に分け世界の貧困含めた食の話をしているが、子ども達は自分の食べているものにおそらく何も感じていない。どこでどう作られているのかも。何も考えようとしていない。農家になりたい子もいない。とてもショックだった。その現実に一石を投じたい。何か話してくれないか。」

そんなお誘いだったと思う。

もちろん、喜んで‼と即答したが、さて、どう授業するか…?

中学1年生に、全く興味のない「農家」の話を、できるだけ楽しく耳を傾けてもらうには…
「 NIPPON TABERU TIMES」というインターネットメディアを通じ友人になった
20代の若者森山さんに助っ人を頼もう‼

東京の大学生っていうだけで子ども達は「カッコイイ」と思うだろう。

そして、実は森山さんは、テレビに出ているたけのこ農家「風岡さん」の右腕。
きっと子ども達の心をつかむだろう。

森山さんは快くOKしてくれ、電話やメールで作戦会議をし、1月末の授業に臨む。

授業に先だって、参考にするためアンケートを配布した。

将来の夢・ビジョンと合わせ、
農家はもうかると思うか?
農家はかっこいいと思うか?
農家が足りなくなったらどうなるか?そうならないためにはどうしたらいいか?
13歳にはちょっと難しいかな、と思う項目含め、全部で9項目。

このアンケートを実施して、意外だったのが、
農家はもうかる、と答えたのが24人中11人。
農家はかっこいいと答えたのが24人中16人。

もっと農家に対して散々なイメージを抱いていると思っていたから
「食生活を支え」「大変でも休みなく働き」「人の役に立っている」(子ども達の返答より)農家をかっこいいというのは驚いた。

でも、それでもなりたいとは思わないわけで。

ひとつ希望を持てたのが、ほぼ全員が、農家が減ると食べ物が減るから困ると答え、

その対策として

若い人がやる
農家のよさをアピールする
みんなで手伝う
などの前向きな意見が多かったことだ。

この結果は、都市部ではおそらく異なってくるだろうし、
超もうかっている農村でも違うだろうし、
高校生になればまた違ってくるだろう。
機会があれば知りたいと思う。

(ちなみにここ石川町は、果樹も盛んだが多くは中山間地で決して農業に恵まれた条件ではない。多くがお米の兼業農家だが、その中心は60代~70代。学区内の専業農家は、わずかにいるリタイア後に就農した60代の方と私たちだけ)

当日。

森山さんによる風岡さんの話や生産者と消費者の関係という話から授業がスタートし、

オットが「もうかる農業」の考え方・やり方を、
品種や売り方、栽培法、付加価値をどうつけるかといった話をし、
さらに、農家が担っている地域の仕事(役割)を話す。

農家が、土木に林業、大工まで‼

特に地方で税収が少ない場合は、農家が地域の自治に大きな役割を果たしているという話をする。

私は、何を伝えようかさんざん迷った。
子ども達に、農に振り向いてもらいたい。
だったら、楽しくて、カッコよくて、もうかる、がいい。

でも…多くの現実はそうじゃない。
一部の平野のように、広い農地がとれるなら、効率よくもうけることも可能かもしれない。
でも、日本の多くが抱える「中山間地」
不利で、効率悪く、もうからない。
結果、跡継ぎがいない…

もちろん、経営の才覚があれば、いい結果を出すかもしれないが、
みんなができるわけではない。

これを考えた時、私が子ども達に伝えたかったのは

「キツイ・キタナイ・カッコイイ」だった。

みんなの命を支えている仕事がある。
キツイキタナイを背負って、支えているカッコイイ人たちがいる、
その事を、大人になった時でいい、いつか思い出してほしい。
そこだった。

もうかる=カッコイイ、の価値観だったら、結局社会は変わらないんだ。

福祉だってそうじゃないか。
あんなに大切で価値ある仕事なのに光は当たらない。
もうからない仕事だ。

そうじゃなくて、キツイ・キタナイ・カチガアル

それが社会を少しずつ変え、優しく温かくするんじゃないかと思うのだ。

誤解を招かないように補足するが、「キツイキタナイ」は、もうかっていい。
農家も、もっともうかっていいと思う。
もうかるべきだと思う。
第一次産業はもうかるべきだと思っている。
もうかる産業になれば、もしかしたら、人は集まってくるのかもしれない。

第一次産業の価値を「お金」ではかるなら、もっともっともうかっていい産業なんだ。

でも、同時に、私は農家として、「そこまで」もうからなくていいと思っている。
正確には、そこまで高く売らなくていいと思っている。

だって、人の命を支える仕事だから。
人に寄り添えるポジションでいたいのだ。

だから、子ども達には、
「キツイキタナイ」でも「価値があってカッコいいんだよ」
そうメッセージした。

輸出したり幅広く事業展開し成功したり、
一般的な言い方だが「おしゃれ」に経営し成功している農家だけがカッコイイのではなく、
ごく普通の農家だってカッコイイのだ。

キツくてキタナくても。

そんな価値観の社会になってほしいから。

授業の感想を、後日先生よりいただいた。

「興味がわいた」「農家はかっこいい」等、嬉しい言葉がたくさんあった。

大人3人の言葉とエネルギーが、子ども達にちょっとずつ、届いた。

そして、一番嬉しかったのが、多くの子が
「おじいちゃんおばあちゃんを手伝います」と書いてくれたことだ。

それは、農家離れという大河の中では、ただの一滴にすぎない。
でも、子ども達の中に何か小さな点を残せたならば、あの日の役割を果たせたのではないか。

また、蛇足になってしまうが、この授業を通じて
農業(第一次産業)を、子ども達が選ぶ「仕事」の土俵に上げるには、
「なれるんだよ」「こうしたらなれるよ」をアナウンスする必要があると感じた。

例えば、和紙職人になりたい中学生はいない。
そんな仕事があることも、なり方も知らないから。
もっと具体的にアナウンスし、
農家は誰でも「なれる」のだと、農業を職業選択の土俵に上げなければならない。

長くなってしまったが、最後にひとつだけ。
事前アンケートの返答を、保護者の方が書いてくださったものがあった。
中山間地で跡を継いで農家をされている方の声。

これが現実なのだ。
多くの、今の日本の農家の。

私は胸がとても痛かった。
みなさんは、どう受け止めますか?
工夫が足りない、経営が悪いと批判できますか?

・農家はもうかると思いますか?なぜそう思いますか?
(答)農家の立地条件次第ではもうかるでしょうが、うちのように山間部はもうかりません。過疎を防ぐため、山林、田畑を守るためです。
・農家はかっこいいと思いますか?なぜそう思いますか?
(答)かっこいい?うちの場合、先祖様が守ってきたものを長男の夫が継いでいる。それだけ。否応なく選択の余地なく長男の使命を使っているだけです。
・もし、自分が絶対に農家にならなければならないとしたら、何を育てどんな農家になりますか。
(答)維持管理目的の農家には何も浮かびません。
※原文まま

(2016.2.24)


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