いろいろ悩みましたが、農薬を使うことに決めました(No.1)

in 「論」をよむ/うんちく・こだわり/ピックアップ/九州/仕事,生活を覗く/大分/日々の仕事/生産の哲学/自然の猛威
この記事の書き手
農家 大分県由布市

この秋の葉物がとても悪い状態です。
9月の長雨と高温の影響で、発芽した芽が流れてしまったり、虫の大量発生で、品目によっては全滅かも、くらいのひどい状態です。ここまでの状態は初めてです。

いろいろ悩みましたが、農薬を使うことに決めました。
今回使用する農薬はBT剤という種類の微生物由来の農薬で、国の有機野菜の基準である有機JASには適合の資材です。ちょうどフランスの有機農家さんがうちに泊まっていて、フランスでも使用することがあるそうです。

しかし、農薬は使わないというお客様とのお約束に反してしまいます。それは、とても申し訳なく思っています。
購入をやめてしまわれることも覚悟で決めました。みなさまの判断で決めていただければと思います。

この数週間、竹林畑にとっての有機農業やこの仕事の意味や価値、これを選択した意味など考え直したり、思い出したりするいい機会になりました。
野菜の収穫はかなり少なくなってしまいましたが、そういう意味ではよい経験になりました。

農薬に対する気持ちはこれまでも何度か書いてきました。
それが『悪い』から使わないのではなく、使いたくないから使わないだけ。使わなくても美味しい野菜ができる方法を選択してるから、使う必要がない。そんな農業を目指しています。

そもそもモノゴトに対して、良い・悪いという判断をしないことにしています。この生活をしているうちに、そういう自然観が身につきました。
自然のなかには良いものも悪いものもありません。いろんな関係の中でそれぞれの役割や立場があるだけで、人間が勝手に決めた良いものも悪いものも粛々と生命をまっとうしているように見えます。

健康について、安全性について、作り方など、いろいろな意見が溢れています。それらを公正にディスカッションするのは大事なことのはずですが、どうも「正解や正しさ」「良い・悪い」を競いすぎているのではと感じています。特に有機市場ではそんな風潮がとても強く、私たちの立場としてはそれがあまり好きではありません。

誰が言ってることが正しいという問題ではなく、みなさんが主体的に考えて行動すれば十分だと思っています。

お店に売ってるから、国の安全基準だからなんて、もはや信じられないし誰も責任とってくれないと思わざるを得ない状況です。だけど私たちは毎日食べものを食べなければいけない。
何かしらの判断基準をもつようになるのはむしろ当然なのではないでしょうか?

大切なのはその判断は自らの体で感じ、頭で考えたことかということだと思います。

竹林畑は農薬を使用しないと決めていました。
誰かに指示されたわけでも、何かの基準に従ったわけでも、市場に迎合したわけでもありません。たんに、自分の体質的に散布するのは無理だと思ったからです。そして、そういう食べものを必要としている方がたくさんいることも知りました。

だからこそ、竹林畑の野菜の「正しさ」を訴えることはしませんでした。例えば、「安全・安心、健康」というキーワードを避けています。
そのかわりに、竹林畑でやっている農業そのものや畑のありのままの姿をお知らせするということをやってきました。こんな農業をやっている人の野菜、食べてみたいねっと思ってもらえるように。あるいはその反対の判断をされる方にとってもわかりやすいように。

こんなことを考えているうちに、竹林畑にとっての有機農業の意義がはっきりとしてきました。

それは、自分で考え自分で選択した農業・商売ができる仕事だということです。
作り方の工夫もお客さまとの付き合い方も、生活もすべて自分で考えて、組み立てなければなりません。
とてもハードですが、やりがいはあるし、楽しいしカッコいいと思いました。

最後は「良い・悪い」ではなく「かっこよさ」なんです!

 

今回の件はこれまでのお約束を破ってしまう、そのことに関するご批判や判断は受け入れるしかありません。かっこ悪いです。
だけど、自分がやろうとしている農業を曲げたわけではないことをご理解いただければと思います。

反省すべきところもたくさんあります。
毎年、少しずつ暖かい時期へ作付けをシフトしてきていましたが限界を越えていたようです。虫除けネットなど必要な対策もしないままでした。
いつの間にか「農薬を使わないでも大丈夫」な農業の範囲を越えてしまったのは事実です。この異常気象だって、もはや異常って言ってられないくらい毎年おかしなことが起きるのが当たり前と構えるべきでした。
BTであっても今後は使うつもりはないです。今回を最後にするつもりで取り組んでまいります。

今後の出荷で農薬使用した品目については、その旨をお伝えいたします。
もし、ご興味ありましたら農薬についてや有機農業の基準(竹林畑にとっての『基準』はもともとありません)などについて調べていただければと思います。
ご質問にもわかる範囲でお答えいたします。

いつものように長くなってしまいましたが、竹林畑はこんな農家です。

(2016.10.17)

ーーーーーーーーーーーーーーー
(編集部注)
本文章は大分県由布市の農家、竹林諭一さんの記事です。
この記事の後に諭一さんの奥さん、千尋さんが記事『いろいろ悩みましたが、農薬を使うことに決めました(No.2)』を追記として書かれております。NO.2を読まれていない方はこちらからどうぞ。

『いろいろ悩みましたが、農薬を使うことに決めました(No.2)』

いろいろ悩みましたが、農薬を使うことに決めました(No.2)


➤この農家・漁師のプロフィールを見る
農家 大分県由布市