【まとめ】「30年先の未来に希望の種を植える」 それも僕ら農家の役割

in ピックアップ/まとめ/熊本/神奈川/福島/農家の仕事
この記事の書き手

「農家」の役割ってなんでしょうか?

農作物や、牛や豚など家畜を育てて消費者に届けることなど様々です。

今回は、農家が創り出す多くある役割の一つのお話です。

心も身体もヒエヒエの今という時代に、これからの世代の為、農業に奮闘している農家さんのアツアツの思いをお届けします。

_________

No.1 宮治勇輔さん(神奈川県、養豚家)

「日本の農業を最速・最短で変革するカギは、農家のこせがれである」

◆一次産業を、かっこよくて・感動があって・稼げる3K産業に

勤めていた会社を辞めて小さな養豚業を営む実家に戻ったのは2005年の7月でした。起業を志して毎朝早く起きて出社前に勉強をしていた日々。どうしても実家の養豚業のことが離れず農業の本を買いあさって読み続けました。農業の世界は問題が山積み。

後継者不足が問題とよく言うけど、これは後継者不足が問題ではなくて、後継者が後を継ぎたくても継げない農業の仕組みそのものが問題なんだと気づきました。

実家の養豚業を何とかしたい。その時、学生の頃に行ったバーベキューを思い出しました。バーベキューを行えばお客さんからの喜びの声も直接聞くことができるし、価格の決定権も戻ってくる。バーベキューでうちの養豚業が変わるかもしれない。(中略)

うちは小さな養豚農家。人もお金もノウハウもありません。自分のできることから始めようと取り組んだのがバーベキューでした。友人知人にメールニュースを配信してお客さんを集め、毎月バーベ キューを開催しました。みやじ豚のおいしさと、一次産業をかっこ よくて・感動があって・稼げる3K産業にしたいという想いに共感してくれた方々が自分のコミュニティに戻って口コミをしてくださいました。

みやじ豚の噂は瞬く間に拡がりました。今では同業者からも「神奈川のトップブランドはみやじ豚だ」と言われるようになりました。
ph05

◆農業の理想は家族経営

畜産業界の経営環境が非常に厳しい中、応援してくださる方々のお陰で何とかやっていくことができそうです。通常、ここまでくると規模の拡大を行います。ですが、規模の拡大を良しとせず、家族経営でできる適正規模を守って経営する道を選びました。レバレッジの利かない農業は家族経営が一番。小さいながらも生産からお客様に届けるまでを一貫してプロデュースできる農家は、素敵なお客様に囲まれて心豊かな人生を歩む事ができます。

でも、僕には日本の農業を変革する使命があります。自分の時間とエネルギーは全て、日本の農業を盛り上げるために使おう。この生涯をかけて日本の農業を変革しよう。そう決意しました。
ph09

◆農家のこせがれの帰農支援を

日本農業を変革のために残された時間は5年。最短最速で日本の農業を変えるためには何が必要か。たどり着いた結論は、都会で働く農家のこせがれが実家に戻って農業を始めることでした。既存の仕組みにとらわれず、これからの農業標準をつくることを目指します。そうすることで、一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にする、 そして、農家と生活者が本当の意味での顔の見える関係づくりを支援していきます。

農家のこせがれが胸を張って、「俺の親父は百姓だ。将来は俺も実家に戻って後を継ぐのが夢だ。」といえるような産業にしていきたいのです。

そして10年後、小学生の希望職種ランキング1位に「農業」!

そんな社会を目指しています。農業は魅力溢れる素晴らしい仕事です。農家のこせがれ達にも、早くそれに気づいて欲しいと思っています。

元記事

 

No.2 大津愛梨さん(熊本県、あか牛・米農家)

「女性農家がアクションを起こし、世の中を照らします」

◆農村資源からエネルギーを生み出す

11099616_849280068531585_1368884218_n
就農した平成15年の冬にはさっそくNPO法人九州バイオマスフォーラム(以下KBF)を設立。農家が「食べものだけじゃなくエネルギーもつくる存在」にもなることは、日本でも可能なはずだという想いがあったからです。とはいえ、再生可能なエネルギーへの関心さえも薄かった当時の状況の中、農村にある全てが資源だ、という広報啓発活動を細々と実施するのがやっとでした。
日本でも原発事故が発生し、事態が一転。新しいエネルギーの必要性が誰の目にも明らかになったのです。目指すはエネルギーの地産地消。草や生ごみや家畜糞尿を原料としたバイオマス発電は、原料の調達に費用がかかるため、成功させるには相当の工夫がいります。しかし実現すれば、農家の副収入や農村の活性化に最も貢献するエネルギー事業です。環境省の支援を受けて南阿蘇でのバイオマスエネルギー事業を3年間検討した結果、大規模の施設しか採算が合わないと言われていたものが、小・中規模でも事業化できそうな見通しになってきました。

◆女性農家がアクションを起こし、世の中を照らす

そんな「エネルギーの地産地消」への取組みを続けていた矢先に、女性農業者によるNPOの代表という役目を仰せつかりました。
「いのちと食」という視点で農業を見つめ直すために女性農家たちが立ち上がったのがきっかけです。
(中略)「ネットワークを活かした具体的なアクションへ」が当面の目標で、農家女性の発信力(=女性目線の情報発信)と受信力(=無理のないおもてなしによる都市農村交流)の向上に加え、農山村における再生可能なエネルギーの普及活動に取り組んでいくつもりです。再生可能なエネルギー事業が農家の副収入につながり、日本の農家が「食べものとエネルギーをつくる存在」として頼られる存在になっていきたいと思っています。

12499455_849281561864769_885512000_o
↑ERIさん(後列中央)と田舎のヒロインズメンバー

実際に農家がエネルギー供給事業に乗り出しやすくするための会社も興しました。「里山エナジー株式会社」です。14年間の間に授かった4人の子供たちを自然に触れさせて育てながら、農薬を使わないコメ作りに取り組み、阿蘇特産のあか牛を放牧肥育するグループを立ち上げようともしていて、さらに「農家が食べ物も風景もエネルギーもつくり出す社会へ」を主旨とする女性農家を中心とした全国ネットワークの代表をつとめ、地域エネルギー事業を興すための会社もつくった。これだけ複雑になった社会で「ひとつの解決方法」なんてあり得ないと思っていますので、いろんな事に足を突っ込むことで、相乗効果を起こしていきたいと願っています。

元記事:2016.4.1

 

No.3 長谷川純一さん(福島県、会津伝統野菜栽培農家)

「食とは命をつないで行く事なのだ」

◆会津伝統野菜とは?

%e3%81%a7

約400年前から会津で古くから作られ親しまれてきた野菜、それが会津の伝統野菜です。

夏の暑さと冬の寒さ。その温度差と降雪の多さなど、厳しい自然環境の中で、肥沃な大地の恩恵を存分に受けて育つ野菜達は、在来種(その土地で育ってきた野菜)であり、会津の食文化であり、故郷の味そのものでもありました。

また、管理が大変ですけど、それだけ作物が生きようとして作られるんで、やはり味は濃くなります。

◆絶滅の危機に瀕している伝統野菜

昭和20年頃になると、日本は、同じ物と同じ量と、多い量と質と形にこだわりすぎました。いきおい、伝統野菜の特徴ある野菜たち、そういったもんが嫌われる時代になってしまいました。

作りやすく売りやすい「F1種」と呼ばれる品種改良した種が出回るようになり、市場流通の観点からも、生産性の高さからも、伝統野菜を作る生産者が激減しました。収量が多く、味も良いといわれる品種を作る事は、農業経営を考えるうえで必要です。しかし、会津で作られてきた伝統野菜の文化は途絶えてしまいます。

私は、会津で伝統野菜を作り続けることを選びました。種と文化を保存し、地域の味を残すべく畑で伝統野菜を作りながら、会津内外に広める活動を続けて来たんです。

◆食文化を守る意味

%e3%81%af

伝統野菜は、自分で作って食べると違いがわかります。きわめつけは、「おじさん、本当に美味しい野菜だね!」って子どもたちが教えてくれたときでしたね。これは絶対に残していきたいって思いました。

売れない野菜を作る不安よりも、自分が残さなければ次世代の子供たちに会津の味を残してやれない。そんな気持ちが強かったですね。会津の『食』を守る、農業の未来を作ること。現在は、会津の農業高校の学生達と一緒に「会津の伝統野菜を育て種を守っていく」取り組みをしています。今では、学校給食で採用されたりと、価値が見直され始めています。

◆人と種をつなぐ物語

スクリーンショット 2016-01-07 20.30.35

「東北食べる通信」っていう雑誌に小菊カボチャっていう伝統野菜を取り上げて頂いたんです。普通皆さん種を取ると全てゴミ箱にいっていたと思うんです。在来種っていうのはその種が無くなることが一番怖いことなんです。そこで会員の方々に「種をお返しいただけませんか」ってお伝えしたら、みなさん洗って乾燥させて送り返してくれた。

なんかこう、消費者と生産者が「種ひとつ」で繋がっていけるって、今まで無かったような気がします。

自分たちの子どもみたいに大切に育てたものを大切にして頂いて、またその食べたものから種が生まれて、それがまた繋がっていく。その時に、「人と種を繋ぐって本当に出来るんじゃないかな」って思いました。

そして、「人と種をつなぐ会津伝統野菜の会」を結成しました。そこで、東北食べる通信を買って頂いた方々と一緒にオフ会を開きながら、生産者と消費者のコミュニケーションをとりつつ、「また来年もこういったことをやりましょう」という話し合いもしました。そういった、食の循環が確かに生まれました。

(代筆:日本食べるタイムス編集部・会津農林高校OB小林篤史)

_____

宮治さん、大津さん、長谷川さんの取り組みは、日本の農業、そして食文化を動かしています。このお三方の歩みからいま、私たちが改めて考えるべき事は、次世代に繋ぐべき食の遺産とはなにか、食材の価値とはなにか、ということではないでしょうか。

長谷川さんはこうおっしゃっています。

「食とは命をつないで行く事なのだ」

 

最後に、農家が生み出す、“もう一つの役割”とはなにか。

それは、農業の魅力をつくり、景観を守り、エネルギーをつくる、そして、食文化を守り未来につなげること。

農家さんたちは、“30年後に芽ぶく希望の種” を植えているのです。


➤この農家・漁師のプロフィールを見る
畜産農家 神奈川県藤沢市
農家 熊本県阿蘇郡南阿蘇村
農家 福島県会津若松市