【まとめ】農業を通して考える「子供の哲学」 -リトルファーマーズ養成塾を通して-

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今回のまとめ記事は、熊本県の阿蘇地方で様々な活動をされている熱い農家大津愛梨さんの「リトルファーマーズ養成塾」に関する一連の記事をまとめました。その要点となる「子供の哲学」。この概念はどのように子供たちを変えるのでしょうか。

5日間の合宿を通しての子供たちの成長をこの記事から感じてほしいです!

また、この記事は現在子供に教育をしている親御さんや、農業を通した教育に興味のある農家さんに読んでいただきたいと思いました。


7月26日

大々的に公募する前に口コミで集まってしまったので、こんなことしますよ、というお知らせのみですが、今日からこんな子供合宿を開催致します。いい成果が得られたら、継続したり他地域でも実施できる方法を考えますd(^_^o)

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来たる7月26日、地球環境基金等の助成を受けてリトルファーマーズ養成塾in南阿蘇を開催します!

 この度の熊本地震では、農家が持つ「生きる力」の強さが際立ちました。食べ物を作っているという「備蓄力」に加え、自然と共に歩んでいる精神力の強さのおかげかもしれません。

子どもたちには災害が来ても折れない心と、農業という仕事の強みや誇りを身につけてほしい。そんな思いから、子どもたちが自らのアイディアと力で、農作業と農業経営にチャレンジする合宿を開催することに致しました。

期間中は農作業や里山での遊びをしながら、夜には農業経営についてのお勉強もします。講師は熊本を代表する農業法人の創始者・木ノ内孝さんや、田舎のヒロインズ内外で活躍している丹羽なほ子さん・吉村みゆきさん。

詳しくは募集チラシをご覧ください。


1日目 7月26日

第1回リトルファーマーズ養成塾が始まりました。

今回、子供の自由を最大限みとめるに当たり、”自由奔放”と”創造的自由”の違いを明確にする必要があり、それを導いてくれるのが、新潟大学の豊田光世さん。「子供の哲学(p4c=philosophy for children)」を日本の教育現場(特に公立の小中学校)に広めるべく尽力されている、尊敬すべき友人です。

子供たちが「自己紹介しよう〜」と言い出したところで、すかさず豊田さんが、私、オモシロイやり方知ってるよ、と。毛糸をまきまきしながら車座になって自己紹介。グルリと3周する間にできた毛糸の球は「コミュニティボール」と呼ばれ、このボールを持っている人が発言をするのが唯一のルール。何となく雰囲気が和んできたところで、大人はさりげなく退室。時々質問には来るものの、今日からとりあえず3日間のスケジュールと合宿中のルールを決めていました。お見事。

長旅をして来た子たちを配慮して、今日の午後はフリータイム。あっさり仲良くなったみんなが選んだ遊びは「相撲大会」!どんだけ昭和なんだ…(^_^;) 付き合いきれなくなった女子たちは料理に参加。なかなかいいチームになりそうな感じです。ちょっとした夕立の後に表れた虹♬ いい事ありそうです!

 

 

2日目 7月27日

リトルファーマーズ養成塾2日目。
子供たちが決めたルールとスケジュールに従って活動した1日でした。竹を切り出すところかは始める流しソーメン。箸も手作り。オヤツのお菓子づくり。川遊び。虫捕り。そして夕方になってやっとこさ農作業(笑)擦り傷や切り傷はあるものの、概ね順調にスケジュールをこなしました。

今回の合宿の鍵を握る「子供の哲学」の時間では、”モノの値段”についてみんなで考えました。人は何に対してお金(対価)を払うのか。誰のための黒字なのか。どうすれば売る人も買う人も満足するか。等々。なかなか立派な議論ができました。

「大人が決めた事を子供がやる」のではなく、子供たちが自らを律しながら楽しく過ごす、というのが基本姿勢。親バカながら、普段からこの基本姿勢で過ごしている大津家3兄弟が見せてくれた、「育てたように育っている姿」に頼もしさを感じました。ちなみに、こうした対話の時間を1日に1時間はやりたい、という私の要望に対し、交渉によって45分に短縮してきたのも我が息子たちでした(^_^;) 自分の頭で考える姿勢は、習慣づければ誰にでも身につくはずなのです。子供たちは適応力が高いので、明日くらいには対話の時間に慣れて、更に面白い議論を繰り広げてくれることでしょう。

3日目 7月28日

リトルファーマーズ養成塾、3日目の中日を終えました。

子供たちがのびのび過ごした(時にダラダラ。疲れが出てきた子の自由な過ごし方)のは当然として、今日の「子供の哲学タイム」のお題は、「仕事とは」でした。おもしろかった〜。

特に印象的だった意見を紹介します。
・自分にしかできない、自分に合っていることで、相手の人が喜んでくれること
・お金がもらえるのは頼まれたことや人の役に立つこと。
・仕事は一番大切なことじゃない。健康が一番
・仕事は自分で見つけてやること

等々。3日目にして、ようやく全員が何かしらの意見を言えるようになってきていて、その内容が深いこと、深いこと。

対話の後に今後のスケジュールについて話していたら、原価計算やマーケティングの話になり、受け入れ農家になってくれている美里さんがたっぷり語って下さいました。出てくる質問の鋭いこと、鋭いこと。彼女の娘さんも一生懸命レクチャーを受けていて、「親子だとなかなかこういう事を話す機会がない」と喜んでもらえました。参加した誰もに良かったことがある企画を目指しているので、大人にも子供にも、ドイツから来ている大人でも子供でもないステラにも、みんなに得るものがあれば何よりです。

自分の頭で考えるスイッチの入った子供たちの発想や疑問は、大人顔負け。明日も楽しみです。

4日目 7月29日

終盤になってやっとこさ「リトルファーマーズ養成塾」らしい1日を過ごすことができました。

午前中は藤原農園さんの畑で収穫作業ををさせて頂き、それらの農産物を買い取らせてもらうことで話が決まりました。が、子供たちはお金を持っていないので、明日のファーマーズマーケットで売れてから払わせてもらうように交渉。仕入れ価格に人件費や袋代や場所代を加算して売値を決めていく子供たちは、経営のことまで考えていて、まさにリトルファーマーズです。万が一売れなかった時は、他の労働などで支払うとして、そんな無茶な商談を農家さんが認めてくれるかどうかは、平時からの信頼関係があってこそだという事に自分たちで気がついてくれただけでも、この塾を開催した意味があったというものです。

農作業で汗を流した後は、みんなで川へ。リサも滝デビュー♬ 写真を撮る前になくなったオヤツのアイスは、近所のイチゴ農家さんから譲って頂いたイチゴミルフィーユアイス。むふふ。

1日1回の「子供の哲学タイム」では「自由とは」をテーマにみんなで考えましたが、眠くて仕方がないので、また明日にでも報告します。明日は10時半くらいから、南阿蘇村の久永屋さん(長陽駅の駅舎カフェ)前にて、子供たちによるファーマーズマーケットが開催されます。お近くの方はぜひ冷やかしにいらしてください*\(^o^)/*

このイベントに協賛して下さったアグリコネクト社さん、アグリダイレクト社さん、新潟大学の豊田さん、ありがとうございました。まだ最終日のマーケットが残っていますが、子供たちは見事な経営者に育ってくれました!

5日目 7月30日

リトルファーマーズ養成塾のハイライト、「リトルファーマーズマーケット」。でも、小学生たちに任せるのは流石に無理があったかな〜。それなりに賑わったし、値下げ交渉やサービス品など接客はなかなか素晴らしいものでしたが、結局何がどれくらい売れて、どのチームがどれくらい儲けたかがイマイチ明確になりませんでした(^_^;) とは言え、経費を差し引いても、それぞれがお目当のかき氷にありつくくらいの売り上げはあったので、子供たちは満足顔。子供たちが奮闘している間に極上のかき氷を先に頂いた大人たちも満足顔(^_^)v テレビ熊本の取材まで来て、盛況でした。

遠方から来た子たちを空港まで見送りに行ったら、予定の便が欠航になってしまい、散々待った挙句に振り替えになった事で疲れたものの、私たち大人にとっても得るものが多い企画でした。
空港からの帰り道、自作のキーホルダーが売れたサンタが「お母さん、アイスおごるよ」と言い出して。初めて息子にご馳走になりました。思い出に残るアイスの味でした♬


「子供の哲学」について

昨日の「子供の哲学」について。テーマは「自由について」でした。この5日間、自分たちで自由に過ごし方を決めてきた子供たちが、自由をどう捉えているか。内容はさておき、話すことに慣れてきた最終日の車座対話は、もうみんな意見が言いたくて言いたくて、大いに盛り上がりました。リサもつられて挙手(笑)こういう対話を初めてした子たちも、4日でこれだけ慣れて、自分の頭で考えたことを人に伝えられるようになるんだ、と感動しました。以下、子供たちの意見をメモ書きした一部をご紹介します。

・自由とは、好きにしていい代わりに責任がついてくること
・自由とは、ヒマ
・自分がやっていいことをやれる代わりに人がやりたいこともやらせる
・親に指定されるんじゃなくて自分で決めること
・自由になってこまることは、やりすぎて取り返しがつかなくなることがある
・自由になりすぎないためには自分で決まりごとをつくる
・日頃からのストレスがあると、自由にしてよくなった時にやり過ぎになってしまうから、日頃のストレスををためない
・ほんとに何をやっても怒られない自由を1度は味わってみたい

(2016,7,30)


まとめ

庭先で羽化したばかりのセミを息子と観察しながらこの5日間を振り返り中。

子供は誰もが伸びる可能性をもっています。それぞれが違う可能性を持っているので、画一的な指導では伸びるものも伸びなくなってしまいます。

以前、お米の他に減農薬キュウリを栽培していた時、まっすぐのキュウリを箱に並べながら悶々としていた事があります。スーパーで売られているようなキュウリは、SMLのサイズ別にまっすぐなものだけを「秀品」として出荷します。収穫適期を1日でものがすと、翌日には「規格外」と呼ばれるほどの大きさになってしまいます。熟している分、大きくても味が濃くて、自家用として美味しく食べていましたが、商品としての価値はほとんどありませんでした。

まっすぐで適度なサイズの秀品はもちろん立派ですが、規格外と呼ばれる品々には違う「価値」がある。そう思って過ごしていた時と一緒だなぁ、と思った次第です。

今回の合宿には、お医者さんから自閉症の診断を受けている子もいれば、ホームスクールで学校に通っていない子もいました。全員がお互いの多様性を認めながら、目立つ喧嘩は1回も起きないまま、見事な社会ができていました。周りの子と違う興味や特性があるとしても、あの子たちは病気でもなければ反社会的でもありません。そして子供たちはそれをごく普通に受け止め、特別視もせず、役割分担を自然としていました。夫や仲間をはじめ、多くの方々の理解と協力があってこそできた企画でしたが、やって良かったと思っています。

規格外になる才能を持っている多くの子供たちが、サナギから脱皮して羽ばたけることができますように。微力ではありますが、農家女性たちならではの取組みとして、社会に一石を投じていきたいと思います(^_^)v

(2016,7,31)


編集部より

いかかでしたでしょうか。主体的に考える力を育むアクティブラーニングの形として、リトルファーマーズ養成塾は子供たちだけではなく、筆者の大津さんにとっても大きな意義を持つ場になったのではないかということが、この記事をまとめている最中にひしひしと感じられました。今後、農業を通じた教育を子供たちにしていきたいという声も私たちのまわりの生産者の方から聞かれます。今回のリトルファーマーズ養成塾を一つのモデルとして、農業×教育という活動があれば編集部としても積極的にお話を聞きに行くなどしていきたいと考えています。


➤この農家・漁師のプロフィールを見る
農家 熊本県阿蘇郡南阿蘇村