【特集】稼げる若手農家のビジネス戦略4選

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【特集】農業ビジネス

農家の3Kイメージ「きつい・汚い・給料低い」を覆す生産者たちを大特集!農業をビジネスとして成立させるための「クリエイティブな」視点に迫りました。彼らのマインドは、一次産業界だけでなく、幅広いビジネスシーンで通じるはずです。

今回は、世の常識に反して独自のビジネス戦略で稼ぐ、4人の若手農家をまとめました。

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No.1 風岡直宏(静岡県、たけのこ農家)

「超アナログ商法!スマホ・パソコン無しでもお客さんの心をつかむ秘訣」

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――お店のたけのこって1本いくら位で売ってるんですか?

風岡
高いのだと1本3980円。直売所で売れるの。FAXや電話での注文も受けつけてるよ。

 

――なかなか規格外の値段ですね!

風岡
やっぱりこの値段を見て、ほかの農家も「高い」っていうんだ。でもさ、勝手に生えてきたたけのこと、年間300日かけてつくったたけのこは、値段が違うのは当たり前って答えてるの。それでも高いっていう人はしょうがないさ。僕は、色んなたけのこがあればよいと思うさ。安いたけのこがよければどこかで買ってもいいじゃん。うちのたけのこは、地元のお客さんも買うし、地方のお客さんも納得してお金払ってくれるから、全然いいと思うんだ。

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――付加価値があるから、多少高くてもOKなんですね。
遠方のお客さんとの関係をうまく築けた要因は何だと思いますか?

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「どうやって広げよう?」ではなく、「どうやってよいものをつくれるか?」を追及してること。最近、若い起業家と話すと「どうやって広げよう?」に目が行っているなと感じるけど、ぼくは断然、後者を考えるさ。

 

――ネット販売には手を出さないんですか?

風岡
やったらやったらで売れるのはわかってるさ。今だって、直売所と電話&FAXだけで販売してて、残ったらすぐに鮮度が落ちるから、山に捨てるって決めてる。だけど、ほとんど捨てない勢いで売れてるからね。
もしネットで売り出したら、商品が足りなくなる、そして、他のところから商品を持って来なきゃいけなくなって質が落ちる。一番やりたいのは僕が掘ること!ネット始めたら、地方発送や買い集めまで自分でやらないといけなくなるもんね。

 

あえて実家前に直売所を作った理由

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直売所の奥に、僕の実家があるのがわかるでしょ?どうしてわざわざこんな場所で商売をやると思う?
正々堂々とビジネスをやるためさ。僕が何かせこいことをやったら、実家の評判までガタ落ちになるじゃん。実家の真ん前で事業を展開することで、自然と信用を大切にするようになるさ。

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――風岡たけのこ園の限定サービスってありますか?

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「新鮮さ」も、うちのセールスポイントだに。ここにたけのこが並んでるとしますよね。で、小さいのしか並んでない。夕方来たお客さんがポツリ、「…これしかないの?」「ちょっとお待ちいただけますか?20分で掘ってきますから!!」 僕がこう言うと、お客さんすごい喜ぶですよ。たった今、堀ったばかりのたけのこを手に入れることができるから。
これ、ほかのお店に真似できないじゃないですか。値段は多少高くてもいいんです。その人のために堀りに行くんだから、値段は関係ないんですよ。だって、お客さんは大きいの欲しいんだもん。これが、他店にできないサービスの秘訣です。

元記事:2015.10.23

 

次はアナログ商法から一転、生産から顧客の口に届くまでを一貫してプロデュースした、六次産業の事例です。

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No.2 宮治勇輔(神奈川県、養豚家)

「神奈川トップブランドを作った、BBQマーケティング」

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僕がまだ大学生の頃、養豚農家を営む親父が育てた豚の肉で、友人とバーベキューをしたときのこと。「また食べたい!どこで買える?」と聞かれて頭が真っ白になった。親父に聞いてみると、流通の過程ではどの農場の肉も一緒にされ、店頭では誰が育てた肉かなんて分からないらしい。たまたまその日は、コンテストに出品した豚がお肉として戻ってきていたので、家で食べることになったのだった。 この日、「うちの肉ってこんなうまかったんだ!」という驚きと、「何かおかしくないか?」というモヤモヤが残った。弟の大輔は、「こんなうまい豚肉を親父の代で終わらせてはいけない」という思いを心に秘めた。

親父は、養豚を継いでも継がなくてもどっちでもいいと言っていた。それなのに、奇しくも兄弟そろって同じタイミングで実家に戻ることになる。起業を志して勉強するうちに、農業の魅力と可能性に気づきはじめた僕と、あのバーベキュー以来、変わらぬ思いを持ち続けた大輔。

「こんな小さな養豚農家に、後継ぎは二人もいらねえ」

「聞いてくれよ、親父。農業を『新3K』にするんだ!」

従来の農業は『きつい、汚い、かっこ悪い』ということから3K産業とまで言われる仕事だ。それでもみんなから「おいしい」と評価される豚を育てる親父の仕事は、決して蔑まれるようなものじゃない。親父にこう伝えた。

「生産からお客さんの口に届けるまでを一貫してプロデュースする。かっこいいだろう。顔が見える相手に直販で売れば、『宮治さんのお肉、おいしい〜』って声も聞ける。感動もあるよ。うまくて安全な豚肉を食べてもらえば、お客さんもつく。きっと稼げるよ。かっこよくて、感動があって、稼げる。『農業新3K』だ。それには生産する大輔と、売る俺の2人が必要なんだよ」

顔の見えるお客さんにうちの肉を売るには、まずバーベキューだ。うちの肉のおいしさを伝えるには、一番良い方法だと思って開催した。当日は、母がせっせと地場の野菜を切り、親父と大輔は会場で肉を焼いた。

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「うぁ〜脂身がおいしい!全然、豚臭くない!!」

「勇輔の友達かい?ありがとう。たくさん食べていってくれよな」

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そこには、こんなに嬉しい事はないって顔をしている親父の姿があった。丹精込めて作った豚肉を、目の前で「おいしい、おいしい」と言って、喜んでくれる人がいる。親父の顔を見て、僕がやろうとしていることは間違ってないと確信した。自信を持って食べてもらえる豚だ、だからうちの名前をとって『みやじ豚』にしようと考えた。

以来、みやじ豚バーベキューは毎月開催。口コミで参加者が増えていき、メディアの取材もくるようになった。それに伴い、評判を聞きつけたレストランとの取引も始まった。そうして2006年に立ち上げたのが、株式会社みやじ豚。現在、みやじ豚は神奈川県のトップブランドとなり、2008年には農林水産大臣賞を受賞した。

元記事:2015.12.22

 

続いては、“ハッシュタグ”を活用した、SNS全盛時代の農マーケティングをご紹介します。

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No.3 片山和洋(熊本県、果樹農家)

「オーナー募集で100名が即決!SNSマーケティング」

100名枠がすぐに埋まったオーナー制度

リアルな生活を満足したい人向けに行ったのがOWNERS」でのオーナー募集です。

オーナーさんは年間1万円でハナウタカジツの旬を楽しむことができます。オーナーになった暁には、旬の果実を届けるだけではなくスイーツレシピやイベント招待・収穫体験などをとっておきのものを用意しました。

<プラン名:夏も冬も感動の果物体験。フルーツ王国熊本の季節を感じる果実たち>スクリーンショット 2016-07-24 16.51.29

◆提供商品
①桃(はなよめ)12個入
②すもも 500g ×4パック
③キンカン 250g×7パック
④どすこい!横綱みかん7個入
◆オーナー特典
①ハウスにオーナー様のお名前プレートを設置
②果実を使ったプチギフト
③収穫体験
④のし対応可能
⑤追加商品購入は通常価格から2割引

正直、このプランの利益はほとんど0です(笑)

けれど、募集を開始して早2日で50名の満員御礼に達し、急遽二次募集も行いました。現在、ハナウタカジツのオーナーさんは100名を越えています。

収益ほぼ0!それでもオーナー制度をはじめたワケ

収益0、しかしオーナーさんは僕がアプローチしきれていない人たちにも「きっかけ」を与えてくれるんです。これにはとても意味があります。僕は、オーナーさんに前述した”能動的な発信”を呼びかけました。

2016年冬、オーナーさんへ「種ごと丸ごとキンカン」を届けました。オーナーさんには、キンカンが届いたら、メディア(インスタグラムやFacebook)を通して#ハナウタカジツというハッシュタグをつけて投稿してもらったのです。

スライド2これらの発信により、オーナーさんでない人にもハナウタカジツの存在を知ってもらえるのです。オーナーさんの多くは、リアルな生活を満足したい人です。彼ら、彼女らの友人ですから、投稿をみて問い合わせをくれる人も多いです。 他にも、 能動的発信を促進させるためにこんなことをやりました。

#ハッシュタグ をつけたら抽選でハナウタカジツが届くというキャンペーン

ここでは、隠す部分(ハナウタカジツとオーナーさんしか知らないコミュニケーション)と見せる部分(万人が見ることのできる情報)を分けるのです。

隠す部分=抽選でハナウタカジツが届くという秘密

見せる部分=本人がハナウタカジツを購入したという事実

秘密を与えることによって、お客様は「抽選で当たればハナウタカジツが届くかもしれない!投稿してみよう」という気持ちになります。その投稿自体が、ハナウタカジツにとっては新たな見込み客獲得につながるのです。

元記事:2016.8.11

 

ここまで、それぞれに個性が色濃い、3人の若手農家のビジネス思考を検討しました。彼らは、ただ単にモノを売る、以上のところを目指しているという点で共通しています。最後にお届けするのは、「モノ(農作物)」ではなく「ひと(生産者)」の重要性を指摘した、鈴木啓之さんの論考です。

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No.4 鈴木啓之(愛知県、農家、全国農業青年クラブ連絡協議会顧問)

「いちげんさんからエバンジェリストまでの道」

いまどき、安心や安全、新鮮、顔が見えるはもう当たり前になってきてる。

それはただのスタートライン。

そんなことを堂々と謳い続ける農業コンサルタントを見ると失礼な言い方だけど

「なめんなよ」と思う。

そこからどう【関係性】を感じてもらうかだったり、【ファン】になってもらうかが大事。

農産物の価格と価値のバランスの満足は重要、

だけど今の世の中はそれをつくる【生産者自体の価値】もそこにプラスされてきてるはず。

その生産者の人となりやエピソード、社会にどんな貢献ができているか、どんな事を想いどんな活動をしているか、そんなとこまでひっくるめて提供しなければいけない。

一回買ってみるかと【いちげんさん】が、

値段のわりに美味いじゃんと【リピーター】になり、

ここのは良い物だから他の野菜も買ってみよう!と【ファン】になり、

やっぱどれをとっても間違いないな、誰かにオススメしようと【コアファン】になり、

それを超えると、よし、俺はここを徹底的に支えよう!息子にも、孫にも、ここのをずっと伝えていこう!

と、共に支えてくれるような伝道師になる。

用語としては【エバンジェリスト】なんて強烈な名前がついてます。

うちはまだまだ歩き始めの小さな農園。

自分なりのサイズでファンになってくださる方を増やそう。

元記事:2013.5.29

 


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農家 静岡県富士宮市芝川
畜産農家 神奈川県藤沢市
農家 熊本県熊本市
農家 愛知県碧南市