「10円」高くちゃだめですか?~小規模農家を襲う価格競争の波~

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農家 福島県石川町

「わたしたちは日に3度、社会を変えるチャンスがある」(映画フード・インク)

先日、出荷先の大手スーパーチェーン店で、出荷後に玉ねぎの売り場を腕を組みながら見ていました。その様子(形相)が、ちょっと普通じゃなかったんでしょうね。
青果部で鍛え上げられたというお店の上層部の方が

「どうしたの?じ~っと見てるけど。」

「いや、玉ねぎ、佐賀が大変、て聞いたから。ニュージーランド産しかないんですね。」

「うん。北海道産が出てくるまで(国産は)無理じゃないか。」

玉ねぎ産地が病気で壊滅的、輸入で商品の切れがないようにする。よくある流れです。
病気じゃなくても、天候により不作だとか、野菜だけでなく、酪農方面でも当たり前のようによく聞く話です。

ニュージーランドが不作だったら?他の国から輸入?

じゃあ、その国も輸出できない状況だったら?
少ないために高価になったものを、お金持ちが買い、庶民は食べない、で対応するしかないですよね。

じゃあ、玉ねぎだけじゃなかったら?
じゃあ、病気とか不作とかじゃなくて、それが慢性的なもの(育てる人作る人がいない)だったら?

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話を変えます。
私たちは、主に「自分で野菜の値段をつけられる、市場を通さない方法」で、野菜を売って生計を立てています。(正確には立てようとしています)

いわゆる直売所形式です。

自分で値をつけられるとはいえ、他の方より10円でも高ければなかなか売れません。どんなに美味しくて価値が高いと自分では思うものを育てても、
水と肥料で大きくなった野菜に、私たちの農薬や化学肥料をほとんど使わない小さな野菜はかないません。

泣きながら3年以上かけお客様と培った信頼関係で、私たちの小さくて10円高い野菜を買ってくださる方も多くいらっしゃいます。でも、それはとても難しいこと、それが現実です。

正直に言います。
もっと高く売れたらなぁ。

そうしたら、新規就農者でも、家族6人が慎ましくも安心して生活できるんじゃないか。
もっと丁寧に野菜を見て、多少休みながら農家が出来るんじゃないか。

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だけど、私も子ども4人を育てる身として、自分が日常的に買えないものは売りたくない。
お金持ちのために作っているんじゃない、普通の人が普通に毎日食べるものを作りたいから。
そして、地元の人に食べてもらいたいから。
だからすごく高くはしたくないけど、でも、自分達が時間や心をかけた対価として、人より10円高いことを分かって欲しい、そして伝えられるようできることをしてる。

自分達で職業を選択し、どうお金を得るかという、皆さんと同じ選択をした結果がそういう農家なのです。食っていけてもそうでなくても自己責任。
汗と涙の隣には喜びも多くあります。

でも、たまに、
種撒いたのに全滅、だとか豊作過ぎて収穫できないとか。
そんなリスクを、いくら職業選択自己責任だっていっても、農家一人一人が背負うべきものなのか?

命の根っこにある仕事なのに。

そのわりに多くが自分で値もつけられない仕事、農家。

私たちの仕事って、そんなに価値のないもの?
そんな風に感じたりもします。

話はまた変わります。
東北で売上1位だとか2位だとか?高い売上を誇るJA直売所の姉妹店に出荷していたときがありました。形が悪かったり、虫食いのあるものを、B品として安く出荷したら、こういうものは出さないでくれ、そう店側に言われました。

「農薬紹介するから使いなさい」と。

その後も、とにかく見かけだけにこだわる店の姿勢に共感できず、意見を言っても当然理解されず、出荷を止めました。
とにかくきれいなものが売れるんです。それが価値が高いのです。(そこに価値がないとは思っていません)

玉ねぎで壊滅的になったような大農家と、それ以外の小さな小さな農家が今の日本の食を命を支えています。どちらも今の日本には大切な欠け換えのない経営スタイルだと思います。

ただ、その背景にあるものを、消費者の皆さんには時々想像してほしい。

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広く多くの観点で。長い目線で。

そして、皆さんの消費行動が、世の中を動かしていることを時々思い出してほしいです。
(もちろん、私も。私もいち消費者です。)

そのために、楽しいことも悔しいことも、恥ずかしいことも、
生産者として発信していかなくてはいけませんね。
今回は、とりとめがないのに、ひたすら伝えたいことを読んでくださってありがとうございました。

(2016.7.11)


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