たけのこは工業製品じゃない~幻の「白子」の収穫に密着取材~

in 編集部から/農家漁師にインタビュー/静岡
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風岡タイムス6月号

プロのたけのこ農家でも1日1本しか掘り当てられない、幻のたけのこがあるという。ホロっとくずれるやわらかな食感は、まさに極上の味覚。そんな幻のたけのこ「白子」を追い求め、最盛期の竹林を訪れました。(取材は4月)

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「視力は2.5!土中に埋まる、幻のたけのこを探す」

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森山3
さあ、山にやって参りました!以前の連載でもご紹介した、幻のたけのこ「白子」、いったいどんなたけのこなのでしょう。

風岡
柔らかい粘土質に生えるたけのこだね。普通の山なら1日1本出るか出ないかの、貴重なたけのこさ。一般市場に出回ることはまずない。いまだ生態の多くが謎に包まれているんだけど(※編集部注)、僕は白子の出る条件を研究して、日本で初めて量産に成功したんだ。今は、約25%の出現率まで引き上げたよ。

森山3
白子収穫、大いに期待できますね!
それにしても風岡さん、ものすごく険しい山ですね。

風岡9
急斜面だから、山道がニガテな女子の手も自然に握れてしまう。農家ってええら?

森山3
まず自分が歩くので精いっぱいですよ(笑)。さて、たけのこはいずこに…

風岡
おっ、あったぞ!ほら、ここの地面だよ。
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森山3
え・・・?どこですか?

風岡3
ほら、ここに穂先が出てるでしょ。
無題

森山3
わ、かすかに!小指の爪ほどの大きさもないですよ。

風岡
僕は、視力2.5なんだ。

森山3
マサイ族ですか(笑)

風岡2
たけのこの仕事は、目が良くないとやっていけないさ。上空から獲物を狙う鷹みたいにたけのこを探すのね。

足裏の感覚も重要。草が密生しているところでは、目がきかないもんで、足の感触を頼りにするしかない。よし、掘っていくよ!
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風岡
たけのこを傷つけないように、側面を滑らすように掘っていって…
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森山3
数cm単位の、繊細なクワづかいです。
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風岡
ほら、たけのこが見えてきた。根元まで掘り進めたら…

森山3
わ!!

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風岡
一撃で仕留める!

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森山3
かっこええ、、たけのこの収穫、想像を越えてます!!

風岡
さあ、どんどん行くよ!
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森山3
たけのこ掘りって、キノコ狩りみたいなものかと思ってました。地面から十分に出てきたのを掘るわけじゃないんですね。

風岡3
地面に出てしまうと、光合成が盛んになって、黒くなる。そうなると、えぐみが強くなるだよね。一方、地面の中のは黄色い。味に格段の違いがあるさ。僕はあえて、土中のたけのこをねらってるんだ。

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▲スーパーのたけのこと、風岡さんのたけのこ。色の違いは一目瞭然。

森山3
風岡さんは、いつからたけのこ堀りを?

風岡
小学生3年のころ、はじめは親父の袋持ちから。掘る技術自体は、2・3年で身についたよ。ただ難しいのは、安定供給さ。自然相手だもんで、経営的な面がめっぽう難しいだよね。たとえば、裏年。たけのこは、表年(出る年)と裏年(出ない年)が交互に来るさ。だけど裏年に供給できなければ、お客さんは離れてしまうよね。となると、竹の仕立て方や竹藪の管理が重要になってくる。竹を熟知するのに歳月がかかるさね。

森山3
素朴な疑問なのですが、なんで「裏年」なんてのがあるんでしょうね?毎年出てきたほうが子孫も残せるのに。
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風岡7
カメハメ波みたいなもんだら?1年エネルギーをためて、翌年放出するみたいな。

森山3
なるほど(笑)。表年・裏年という区別は、あくまで人間の事情なんですね。
や、それにしても緑の竹林にピンクが映えますねえ。

風岡
今日は、パンツまでピンクで揃えてるからね!
おっと、こいつはでかいのが見つかったぞ…
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森山3
カメラスタンバイOKです!

 

風岡9
いいのがとれたら?
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森山3
え!??生で食べちゃうの!(笑)
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風岡2
とれたての味を確かめてるのさ。ほら、かじってみなよ。

森山3
はい・・。わ、甘い!!!

風岡
サトウキビみたいな甘さだら?たけのこを掘ったらかしにしとくと、蟻が寄ってくるさ。それくらいの糖度があるということだに。

森山3
実食に、ますます期待が高まります!

 

「たけのこは工業製品じゃない」

Hisilicon K3

風岡
さーて、まずは腹ごしらえ。

森山3
プロテインですか(笑)

風岡
肉体労働の直後は、成長ホルモンが出てるからね。おっ、お客さんだ。いらっしゃい!
無題

森山3
あのー、すみません。何を買っていかれるんですか?

おばあ
これだよ。
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森山3
おお、白子!

おばあ
ここらはたけのこの産地だけど、白子は滅多にお目にかからない。87年生きてきたけど、他のお店では見たこともないねえ。
おにいさん(風岡さん)は、よく勉強してるさ。だから、量産ができただよね。わたしは客人への最高のもてなしとして、白子を使ってるよ。
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森山3
おばあさん、嬉しそうだったなあ。風岡さんが量産に挑んだのは、お客さんに喜んでもらうためだったんですね。

風岡
その通りさ。だけどね、そんないい話ばかりじゃないら?

森山3
え?

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風岡
たとえば、たけのこの水煮。今は最盛期だから価格も落ちてるけど、もう少し早い時期だと、800円くらいすることもある。

森山3
ちょっとお高い気もしますね。

風岡4
「水煮に800円?」お客さんにそう言い放たれることもあるよ。

「まったく、たけのこなんて買うもんじゃない。人からもらうもんだよ」

屈辱的だよね、そう言われるのは僕のたけのこは、工業製品じゃない。情熱を込めて作ってるんだ。だけど、口でいくら言ってもわかってもらえないさ。だからこそ、味や評判で見返すしかないと思っているんだ。実際に、「日本一の味」と銘打っているうちのたけのこ。ここ10年以上、味に対するクレームがついたことは一度もないよ。

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▲これらすべて、処分品のたけのこ。「僕が目指している日本一は、売上じゃなくって味。」「収穫して2日たったものは山に廃棄。お客さんに、最高の鮮度で届けたいから」

風岡6
「高い」の一言で片づけられてしまう。そういう言葉が出てくる背景には、たけのこ農家のステータスの低さがあるよねそもそも、たけのこ農家って職業として認められてると思う?一般からすれば、山菜を取っている人、くらいの印象なんじゃないかな。

森山3
今日、生産現場を目にしてから店頭に立つと「このたけのこ、1000円で買っていいの?」という気持ちになります。実はいま、すでに筋肉痛が始まっていまして。この収穫を2か月間続け、竹林の手入れと合わせて年330日以上かける風岡さんの労働量たるや、目を見張るものがありますよ…

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風岡
ぶっちゃけ、たけのこ農家に限らず、農家全体が軽く見られているよね。
僕の目標は、情熱大陸にでることさ。先頭ランナーになって、みんなが持ってる農家像を変えていきたいんだ。僕みたいな農家が100人出てきたら、農家のイメージだって根底から覆せる。農家が軽視される時代は、もう終わりにしたいのさ。

 

「幻のたけのこの味」

風岡
さて、これが今日収穫してきた白子ね。
Hisilicon K3

風岡
皮をむいて比較してみるよ。まずは普通のたけのこ。

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風岡
つづいて、白子。

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森山3
皮も、下の方のポツポツも、全体的に白いですね!

風岡7
まさに、たけのこ界の美白美人!

それじゃあ、白子の味を一番楽しめる、「刺身」(※編集部注2)で食べてみてよ!
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森山3
…おおお!みずみずしい!口に入れた瞬間、たけのこの香りをのせた水分が迸ります!口の奥でほわっと広がる丸い風味。栗のような甘み。一本一本の繊維まで感じられるのに、柔らかい。舌の上に残る、後を引くうまさ。たけのこの常識をひっくり返す味ですね!

風岡
たけのこを越えたたけのこ、それが白子なんだ。

森山3
いま感動したのは、たぶん、食味の問題だけじゃないと思うんです。機械生産されたモノじゃない、有機的な情熱が込められたたけのこ。生産現場を目の当たりにし、風岡さんという作り手の味が加わったのだと思います。

風岡2
一年間かけて、たけのこという「作品」を育てる。それを納得して買ってくれるお客さんがいる。シンプルだけど、僕にとってはすべてさ。

 

※編集部注 白子について
専門的には「アルビノ」(色素欠乏のため白色または著しい淡色となった個体)と呼ぶ。通常のたけのこも、白子も、品種は同じ孟宗竹。特定の環境条件に誘発されて、白子が発生すると予測される。(風岡さん談)

※編集部注2 生ではなく、茹でたたけのこの刺身です。

※風岡さんのたけのこにご関心がある方へ
今年のたけのこシーズンは終わりました。来年のシーズンをお待ちください。予約のお問い合わせは、風岡たけのこ園(TEL:0544-65-5005)まで。

 

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風岡2

「仕事が顔を作る

いつも崖っぷちの中で仕事をしている。ワンコケ、ワン骨折みたいな仕事だよ、山の仕事は。だから、顔も引き締まるよね。もっさりしたやつには、山仕事は務まらないよ。
スポーツアスリートって、精悍な顔つきでしょ?でも、引退後のアスリートって、どんどん顔から緊張感がなくなっていく。四方を海に守られている日本という国に、良い顔を作ってくれる仕事ってどれくらいあるのかな。僕はね、農家って、ダサメンをイケメンにしてくれる、すんごくいい仕事だと思うさ。

 


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農家 静岡県富士宮市芝川