相馬の伝統野菜を復活させる日

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農家, 畜産農家 福島県相馬市

ついにこの日が来ました。

私の古里、相馬市にその昔あったとされる里芋、相馬土垂(そうまどだれ)を復活させる日です。

始まりは数年前。

福島県の伝統野菜の品目リストが書いてあった一枚の紙に、たった二行程度で書いてあった相馬市の唯一の伝統野菜、相馬土垂の文字。

あとにも先にも相馬市の伝統野菜はその1つだけ。

鳥肌が立つ思いで読んだその二行は、一気に僕を突き落とした。

その1つだけなのに、相馬土垂は現在、所在不明。

誰が持っているかもわからず、どこにあるのかも把握できてないということが書かれていたのだった。

かすかな希望は、農家が持っている可能性はあるというような文が付け加えられていたこと。

それでもこの一枚の紙から相馬土垂の持ち主を探せというのは過酷すぎた。

相馬土垂の名前を知ってるという人に会うだけで二年以上。

栽培してたという人に会うまでにさらに一年は使った。

現役で家庭菜園から本格的な畑までやってるおじいさん、おばあさんに相馬土垂の事を知っているか訊ねてまわっても、百人中百人が知らないのだ。

これは昔の人たちが、野菜の品種名を気にせずトマトならトマト、ナスならナス、カボチャならカボチャと言っていた事が大きいと思う。

相馬土垂もただの里芋として扱われて、そのまま親から受け継いだ世代(今のじいさん、ばあさん世代)が、名前を知らないまま里芋として育てていたのだと推測できる。

実際に相馬市で里芋を育てている農家で、相馬土垂を知っている人は一人しか会えなかった。

それでもようやくここまでたどり着き、たくさんの人に助けられて種芋を手に入れて植えつけるところまでこれた。

小耳に挟んだ面白い話だと、僕らが相馬市には相馬土垂があると新聞やテレビで言ったから、野菜の苗屋にその種がほしいと相馬市の農家たちから注文が殺到しているらしい。

苗屋には「土垂(どだれ)」という里芋はあって、「相馬土垂」はこの土垂を何年も相馬で育てることによって、より相馬の気候に馴染ませた里芋であり、土垂を買って相馬で育てれば相馬土垂だというのは、少し浅いが間違いではないし、原物がほとんど失われているのだから、もう一度始めの土垂からやり直すのもアリだと思える。

実際にうちも保険として、植えつける場所はわけてはいるが、土垂も購入して植えている。

僕らは、これからも相馬市には相馬土垂があるんだともっともっと宣伝して、相馬の失われかけた伝統野菜を取り戻す。

そしてその相馬土垂は、僕ら大野村農園の所有物ではなく、相馬市の伝統野菜として相馬市へ返還したい。

だからいずれは相馬のみんなが相馬土垂を栽培してほしい。

相馬には相馬土垂しか伝統野菜は無く、相馬土垂は相馬で育てるから相馬土垂なんだから、本当にもう一度、今度は失わないように、僕らの子供や孫の世代まで、今度はみんなで古里を守り続けたい。

秋には相馬市に、ぜひ皆さん相馬土垂を食べに来てください。

大野村2 大野村1 大野村4 大野村3

(05.20.2016)

40年越しの復活。伝統野菜「相馬土垂」をここから始める

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