さくらんぼの母さん

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この記事の書き手
畜産農家 群馬県渋川市

黒毛和牛を母牛から出産、育成、肥育と一貫して育てている小さな牧場ですが、黒毛和牛=霜降りのお肉という世間の単純なイメージではなく、新しい取り組みの若い牛さんがいたり、従来の理想肥育の牛さんがいたり、お母さん牛や長寿の牛さんなど、牧場の黒毛和牛の魅力は実はさまざまでたっくさんあります。

価値の高い1つのやり方に固執してしまって本来はあまり見えてこなかったそれらの多様性を新しいやり方で価値を再構築して、本来のバランスを取り戻す事が未来に繋がるという事をEmeatは大きなテーマにしています。

難しい言葉だと伝わらないので、ここは「黒毛和牛にもたくさんの種類がいるのですが、全て私の子だから親バカ全開で楽しい人と、新しいやり方で、それぞれの価値を再構築していきたいです!」という事です。

前置きが長くなりましたが、お母さん牛の幸せの循環を Tsui-teru! さんと一緒に作り上げて行こう!の第四弾『 さくらんぼの母さん 』です!

これまでのおおまかな取り組みの内容はブログ『母牛』をクリック!
もっと詳しいこれまでの取り組みは、『Emeat × Tsui-teru!』をクリック!

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2007 . 9 . 5生 8産(11歳)

さくらんぼの時期にとても大きな子を産んで、その子は「さくらんぼ」と名付けられ病気を一切しないで1t 近い牛さんになったお母さん「さくらんぼの母さん」です。
とても骨格が大きく、性格も強いので我が家のナンバー2の存在でした。
とても賢くて、ツノでスタンチョンをひょいと毎回外すもんだから、他の牛さんも真似してしまい管理してる私達からみたら本当に裏ボスっていう存在でした(笑)

印象的なのはオデコにある白い毛ですね。実は今回は黒毛和牛ではなく、黒毛和牛と乳牛のホルスタインを掛け合わせた交雑牛(F1)のお母さん牛です。
我が家は黒毛和牛の生産を母牛の管理から行っているのですが、石坂牧場の母牛は実は全て黒毛和牛ではありません。我が家には50頭の黒毛和牛のお母さん牛に混じって10頭ほど交雑牛のお母さんが活躍しています。

どういうこと?と思う人もいると思うので簡単に説明しますと、交雑牛に和牛の受精卵を移植して和牛を産んでもらうという事です。受精卵は主に我が家で採卵したものです。なぜそんな事をするの?という事ですが、それは時代の流れもあっていろいろと試行錯誤してきた結果なのですが、まず交雑牛で和牛を生産する利点から言いますと、導入資金が安い、骨格が大きいので大きい子を産む、乳の出が良い、子育てが上手い、受精してあるのを移植するので理論上は受胎率が良い、種付けよりも移植の適期がシビアでないので予定を組める、オスが多く生まれるetc…などです。

こんなに良い事尽くしならもっと普及してるはずですがあまり聞きませんよね。
現場の感想ですが、理論上はすでに受精してあるんだから受胎率も高くなるんですが、その為には母牛のシビアなコンデジション管理と授精する技術が高くないと理論なんて簡単に吹っ飛びます。まだ未経産などの若い牛さんならいいのですが、産歴を重ねてくると管理が難しくなってきます。和牛なら受精卵移植が上手く行かなければ人工授精の方にスライドできるのですが、交雑牛のお母さんの場合は逃げ場がなく、高い受精卵と管理コストが天井知らずでどんどん嵩んでいきます。
そんな中でも我が家の交雑のお母さん牛は頑張ってくれています。導入するときに私が直腸検査してから購入したいと言って驚かれたのも良い思い出です(笑)

という事で、あまりやってる農家がいないので結果的に長寿の交雑牛は数が少ないめずらしい牛さんという事になります。さらに本音を言えば再肥育しても前例が少ないのでどうなるか分からないという事にもなります。

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今度は交雑牛のお母さん牛さんなので正直どうなるか分かりません。。。
とずっと一緒に取り組んできた Tsui-teru! の鈴木さんに再肥育前に相談したところ、「そんなめずらしい牛さん、ぜひやりましょう!」と言って頂きスタートしました。

さすがお肉のワンダーランドの Tsui-teru! さん!!

そして何産もがんばってくれたお母さんがお腹いっぱい食べて元気になって、今度はお肉になってしあわせを運ぶための再肥育という管理する私達にとってもしあわせな期間を与えて頂きました。この私達が感じたしあわせをスタートラインとして、硬いと言われ価値の低かったお母さん牛の本来の価値を再構築して、召し上がるお客様まで循環していきたいんです。

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枝肉は大雑把な印象は形がホルスタインで脂質は和牛に近いものとなりました。
総重量はありますが部位の厚みが無いのでドライエイジングに向いてるか心配になりましたが、さすがドライエイジングへの取り組みも長く、1頭買いも第4段を迎える Tsui-teru! さんは麹を使った独自のショート熟成や熟成するものとしない部位の住み分けも巧みで、とにかくロスのない管理をされています。

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すでに熟成に向かないような部位はビーフシチューや独自のショート熟成でメニューに載っています!と言っても人気ですでにドライエイジンング以外は完売との事です。

私達も初めて食べる長寿の交雑のお母さん牛でしたので、どきどきしながら食べてみました。印象はすごくさっぱりしているんだけど後味がほのかに甘く、さっぱりしてる分だけ熟成の香りがスッと入ってきます。もちろん柔らかいんですが、ちゃんとした肉食ってるという歯触りもあり満足感を味わえるお肉でした!これはドライエイジングしたものはさらに香ばしいナッツの香りが本領発揮してくるだろうなーと感じにっこりしました。んまかった~♪

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そのドライエイジングですが、今月末あたりからウチモモが解禁で、順次仕上がりを判断しメニューに載っていくとの事でした。和牛を1頭まるまる買ったからこその部位を楽しむチャンスですので、まずはツイテルさんに行っていつお目当の部位が登場するのか探って見てください!

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(2016.2.23)


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